活動報告 各国の労働事情報告

2025年 モンゴルの労働事情(モンゴル・バングラディシュチーム)

以下の情報は招へいプログラム「モンゴル・バングラディシュチーム」参加者から提出された資料をもとに作成したものである。

参加者情報

  • モンゴル労働組合連盟(CMTU)

基本情報(外務省データ2025年11月11日更新分より)

人口:約354.4万人(2024年、モンゴル国家統計局)

宗教:モンゴル仏教等

政体:共和制(大統領制と議院内閣制の併用)

主要産業:鉱業、牧畜業、流通業、軽工業

名目GDP:約235.8億米ドル(2024年、モンゴル国家統計局)

経済成長率:4.9%(2024年、モンゴル国家統計局)

 

1.参加国におけるホットトピックスと、具体的な内容について

労働安全衛生(OSH)と安全な職場環境の確保

事故の概要

事故内容:ウランバートル市の第3熱電発電所の高圧タービンで火災・爆発事故が発生した。運転を停止して設備を点検・修理中の高圧タービンにおいて火災が発生し、爆発的に損傷した

  • 事故発生日時:2025年6月1日夜〜2日未明(現地時間)。
  • 発生場所:高圧タービン作業場。
  • 被害:47歳の男性技術者が死亡し、39歳の監督者が煙を吸い入れて負傷。
  • 機器損壊:運転中の新設 50 MW タービン発電機(第9号機)が爆発的に損傷し、使用不能。
  • 影響:供給能力の喪失:当発電所の出力約198 MWのうち、50 MW分が失われる。
  • 暖房、電気の不足リスク:2025–2026年の厳冬期において市民生活に重大な影響の可能性あり。

政府の対応

  • 政府は国家非常事態体制を宣言し、担当特任代表を任命。発電所の統制下に置き、事故調査と対応を進めている。
  • 現場責任者である発電所の総支配人と主任技術者が解任されたものの、エネルギー省や大臣に対する直接的責任追及は不十分との指摘あり。

改善戦略

  • 事故原因の究明と再発防止策の徹底。
  • 労使による安全衛生委員会の設置。
ジェンダー平等と女性の権利

現状と背景

  • モンゴルでは、労働関係におけるジェンダー平等の推進に向けて、2011年に「ジェンダー平等促進法」を制定し、2022年には新たに「ジェンダーに配慮した職場政策(2022-2031)」を承認した。
  • 首相が率いる国家委員会が全国的なジェンダー平等の政策を推進しており、民間部門への制度導入が重要とされている。また、労働法など関連法にも改正を加えることで実効性を高め、国連のSDGs(特に不平等の是正)とも連動した取り組みが進められている。
  • ケア労働などの無償労働の多くを女性が担っている。こうした労働の価値を正当に評価し、有償労働化することで、女性の経済参加が促進され、国家の経済発展にも寄与していく。
  • 同一労働同一賃金の実現と、すべての人に平等な労働機会を保障することが、持続可能な社会づくりに不可欠であるとされている。

議会・政治参加

  • 2024年6月の選挙で、国会の女性議員比率が大幅に上昇。
  • 世界経済フォーラム発表の「Global Gender Gap Index」では、モンゴルは2025年版で148カ国中65位と、前年の85位から大幅改善。

雇用の現状

  • 労働力人口に占める女性の比率は約51.5%(2021年)。
  • 一方、女性の雇用率は男性より低く、平均賃金も低い(職種による)という格差が残っている。
  • モンゴルでは女性の就労を禁じられた職種があったが、現在では自由に就業できる。
  • 構成組織の役員の30%が女性。

法制度・政策体制

  • 2011年に「ジェンダー平等促進法」が制定され、政策・法制度の整備が進む。
  • 2004年に「庭内暴力防止法」が制定され、2016年の改正により家庭内暴力を犯罪として明記された。

今後の展望・重点施策

  • 政治・意思決定層における女性参画の制度的拡大。
  • 家庭内暴力や性的暴力への対応強化。法整備後の啓発と支援体制の普及がより重要であるため、司法・医療・警察の連携強化が必要。
  • 育児支援ネットワークの整備を通じて、女性の就業機会とワーク・ライフ・バランスの向上を図る。
  • 地方に住んでいる女性や高齢の女性などに対する支援(年金、医療アクセス、教育・ITリテラシー機会の拡大)
若年・非正規労働者へのアプローチと組織化

背景・現状

  • 経済構造の変化や都市化の進展、非正規雇用の増加により、これまでの労働運動では対応しきれない領域が広がっている。
  • モンゴルにおける若年・非正規労働者へのアプローチと組織化は、近年特に重要な課題となっている。
  • 若年人口の比率が高く、若年層の失業率は高い(特に都市部)。
  • 鉱業・建設・運輸・小売などで非正規雇用が多数。
  • スキルと雇用のミスマッチと、職業訓練機会の不足。

課題

  • 組合への参加意識の低さ:「組合=旧体制的」という印象があり、若者には敬遠されがち。非正規やアルバイト的就労者には、組織化の対象外と思われている。
  • インフォーマル経済の拡大:遊牧民、露店商、フリーランス、プラットフォームワーカーなどの正規の雇用関係にない若者が増加。
  • 法制度の執行力不足:労働法の規定が非正規に十分適用されていない。労働監督体制の人員・資源も不足。

アプローチと取り組み

  • モンゴル労働組合連盟(CMTU)による労働法教育セミナーの実施。
  • 高校・職業訓練校における若者向けワークショップで、働く上での権利と義務を周知。
  • CMTU青年部を中心とした「ユースフォーラム」、「労働者青年ネットワーク」を構築。
  • SNSやモバイルアプリを通じた、若者同士の交流や情報発信。
  • 配達・運輸系非正規労働者を対象にした、労働者登録制度の導入と組織化の模索。
  • 露天商や自営業者への小規模ユニオン結成支援。

2.労働法制について

  • 1925年に「労働評価者規定」により初めて労働関係の規定が制定され、労働関係法制度の基礎が築かれた。
  • 2021年にされた改正労働法は、移行期の労働関係を、社会経済の要請に応じて調整し、労使の合意・協議・交渉の法的基盤を整備している。

課題

  • インフォーマル労働や都市・地方格差などの課題が残されている。
  • 多くの地域では組合の交渉力が弱い。
  • 労働安全衛生(OSH)に関する制度やインフラも未整備である。

取り組み・制度整備

  • 2008年に労働安全衛生法が制定され、関連する規則や基準とともに労働環境の改善が図られてきた。
  • 2022年以降の労働法の改正に対応する形で、2025年の労働安全衛生法改正に向けた全国的な議論が進行中である。
  • 労働災害防止と健康な職場環境の実現に向けて、安全教育の実施、リスク評価の義務化、定期健康診断の強化などの取り組みが進められている。

3.社会保障制度について

年金制度(退職・障害・遺族)

モンゴルの年金制度は、強制加入の社会保険制度を基盤にしている。

対象者

  • 公務員
  • 民間企業労働者
  • 自営業者(自主加入可能)

財源

  • 被保険者と雇用主が拠出する社会保険料

主な給付

  • 老齢年金:通常、60歳(女性は55歳)以上から支給(改革により段階的に引き上げ中)
  • 障害年金:障害と東急と保険加入期間に応じて、月額給付がなされる。
  • 遺族年金:被保険者死亡時に、配偶者や子に対し生活保障として定期定に現金が支給される。
医療保険制度

モンゴルの国民皆保険制度に基づいており、誰でも最低限の医療サービスが受けられる。

制度の特徴

  • 基本医療サービスは国立病院などで提供
  • 医療保険料(約4%)を社会保険制度の中で徴収
  • 自営業者や非正規労働者も任意加入が可能

課題

  • 地方での医師・看護師の不足、医薬品の供給課題など
失業保険
  • 失業保険も社会保険制度の一部として運用されている。
  • 一定期間以上の就労歴と保険料支払い実績などの給付条件があり、自己退職では対象外の場合もある。
出産・育児関連給付
  • 出産給付金:一定期間の国家社会保険制度加入が条件。
  • 育児手当:子どもが2歳になるまで毎月育児手当が支給されるが、全世帯に一律給付される普遍給付と、低所得世帯を対象としたでターゲット給付がある。
社会福祉制度(低所得者向け)
  • 貧困家庭や障害者、高齢者を対象とした現金給付・食糧支援も存在する。