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香港の最低賃金、5月1日から43.1香港ドル(約858円)に引上げ

2026.03.10掲載

賃金額は毎年改定とし、独自の計算式による方式に

香港(香港特別行政区)の李家超行政長官(首相に相当)は、2月10日、最低賃金について、5月1日から43.1香港ドルへの引上げを求めた最低賃金委員会の勧告を受入れると発表した。労働分野の行政機関(労工処:Labour Department)によれば、今回の改定額は、1香港ドル(約19.9円/3月1日時点)で、引上げ幅は2.38%である。また、見直しの間隔は、従来は2年であったが、今回から1年に短縮された。賃金の額は香港独自の計算式(「フォーミュラ」)により労使の折衝等を経ないで決定される。この計算式はインフレ率と経済成長率を反映したものという。

香港での最低賃金引上げは、現行制度では、行政長官が決定し、香港立法会(国会に相当)では確認を求めるかたちである。そこで否決されることがなければ、行政の決定とおりとなる。立法会への上程は2月25日に行われており、3月後半か4月の会合で確認される見込みである。なお、最低賃金改定の間隔を短縮することは労働者側の従来からの要請であった。一方、改定額が独自の計算式で扱われることは、労使の対立を避けようとする政府や経営側のねらいもあるといわれる。

香港の最低賃金審議会は公益(学者)、労働者、使用者の三者構成である。このうち、労働者側は、親中系といわれる香港最大の労働団体である香港工会連合会(FTU)はじめ産業別労組などから委員が選出されている。かつては委員を選出した民主派系の香港労働総同盟(HKCTU)は2021年に解散している。使用者側は、最大団体の香港総商会(HKGCC)、工業系の香港工業総会(FHKI)、中小企業が参加する香港中華総商会(CGCC)などが参加した。

今回の最低賃金引き上げについて、JETROのビジネス短信が伝える現地報道によれば、労働者委員からは、「毎年改定が実現したことで、労働者は賃金凍結を回避できるだろう。しかし、交通費の高騰に直面する労働者には不十分なことが懸念される」としている。一方、使用者側の代表は「新制度で明確な計算式が設けられたことによって、事業主の予算策定を容易にし、労使間の紛争も減ることになるだろう」と評価した。なお、香港の企業の98%は中小企業であり、最低賃金は外国人労働者にも適用されることから、5月1日までに企業が対応するよう、行政が働きかけを強めている。

香港は労働者保護や福祉政策には必ずしも注力しない自由主義経済で知られているが、2011年に、はじめて最低賃金制度が創設された。その後、2019年には民主派の運動が高揚したが、2020年には本土主導の国家安全維持法の制定による改革派の抑圧が強まり、香港の一国二制度は大きく変質した。その影響もあり、最低賃金の見直しは2019年から2023年まで見送られた。その後、2024年に制度の見直しが行われ、今日を迎えている。新しい最低賃金制度が今後の香港の社会でどのような機能を果たすのかが注目される。<K.K>

以上