活動報告 各国の労働事情報告

2025年 マレーシアの労働事情(アジア・パシフィックユースチーム)

以下の情報は招へいプログラム「アジア・パシフィックユースチーム」参加者から提出された資料をもとに作成したものである。

参加者情報

  • マレーシア労働組合会議(MTUC)

基本情報(外務省データ2025年11月12日更新分より)

人口:約3,350万人(2023年マレーシア統計局)

宗教:イスラム教(連邦の宗教)64%、仏教19%、キリスト教9%、ヒンドゥー教6%、その他2%(2023年マレーシア統計局)。

政体:立憲君主制(議会制民主主義)

主要産業:製造業(電気機器)、農林業(天然ゴム、パーム油、木材)及び鉱業(錫、原油、LNG)

1人あたりGDP:13,382ドル(2024年、IMF)

物価上昇率:2.5%(2024年、マレーシア統計局)

 

1.労働法制をめぐる動向

労働法制の現状

主な労働法制は雇用法(1955年)、労働組合法(1959年)、労使関係法(1967年)、労働安全衛生法(1994年)で、随時改正されてきている。なお、雇用法は2022年に大幅に改正され、労働時間短縮(週48時間から45時間)、強制労働の禁止、差別・セクハラ規制の厳格化、妊娠中の女性従業員に対する解雇の制限、産休期間の延長(60日間から98日間)、男性の育休取得(7日間)などが規定された。

2025年労働法制改正の動向

2025年の法制度の改正では、より公正で持続可能な労働生態系(labour ecosystem)の基盤を整えるための賃金引き上げ、労働時間短縮、休暇に関わる権利の拡大、職場の公平性の推進など、労働者の保護の強化に力点が置かれている。

最低賃金については、2月から一律1,700リンギット(月額)に引き上げられた。引き上げ率は13.3%で、前回の2022年5月の見直し時の25.0%に比べると緩やかな引き上げとなった。

9月9日に、ギグワーカー法が国会を通過した。「ギグワーカー」とは、企業などの事業者と契約を締結し、プラットフォームプロバイダーを通じてサービスを提供し収入を得ている者と定義され、フードデリバリー労働者などが含まれ、ギグワーカーが正式に労働者カテゴリーとして認められた。これにより、ァ)報酬、契約解除条件、保険などを明記した書面契約の義務化、イ)不当なアカウント停止や報酬トラブルなどを公正に解決できる独立機関「ギグワーカー裁判所(Gig Workers Tribunal)」の創設、ウ)事故・障害・死亡時の保障を提供するために社会保障機構「SOCSO」への加入義務化などが規定された。

マレーシア労働組合会議(MTUC)の取り組み

MTUCとしての重点課題は以下の通りであり、課題の解決や進展に向けて、三者構成の全国労働諮問会議(NLAC)に参画するとともに、キャンペーン活動を展開している。そうした取り組みを通じて、上記のように労働法制の改善が前進してきている。

重点課題

ア)生活賃金の推進
イ)労働安全衛生の改善
ウ)ギグエコノミーを含む全ての労働者への法的保護の拡大(ギグエコノミーの分野で働く労働者に対しては、賃金格差、不安定な収入、組合活動の制限、社会保障の欠如、差別や搾取などに対する脆弱性など、多くの課題がある)
エ)団体交渉権の強化
オ)労働法とILO条約との整合性確保の推進

2.社会保障制度をめぐる動向

社会保障制度は、主に従業員積立基金(EPF)および社会保障機構(SOCSO)を通じて運営されている。

EPFについて

EPFは、被雇用者が強制加入となる公的な積立貯蓄制度で、雇用主負担が13%、従業員負担が11%となっている。従業員は55歳以降、積立貯蓄額の全額を払い戻すことができる。

なお、制度は、高齢化、非正規労働者への不十分な適用、財政的持続可能性への懸念といった課題に直面している。そのため政府は、拠出率の引き上げ、課税賃金ベースの拡大、基金の多様な投資戦略の採用などの施策を進めつつある。また、高齢者への所得保障を強化する方法を模索している。

SOCSOについて

SOCSO(社会保障機構)は、就労に伴うリスクに対応するため、

「傷病保険制度」、「就労不能保険制度」、「雇用保険制度」の3本柱で構成されている。障害保険制度は、業務上の負傷や疾病に対する医療費・補償を提供するもので、就労不能保険制度は疾病や障害により働くことが困難になった場合に所得補償を行う。さらに、雇用保険制度は2018年に導入され、解雇された労働者に対して最長3カ月間定額を給付する仕組みとなっている。

いずれの制度も、労使双方から一定率の拠出が求められている。