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カンボジアのトゥクトゥク労働者のストライキ

2026.02.17掲載

1月26日カンボジアの英字紙クメール・タイムスに、「運転手達は、低収入に関しライドシェア・アプリをボイコットする」という記事が出た。

運転手の代表であるイン・ラディは次のように述べた。「4000人以上の運転手が今回のボイコットに参加している。手数料が余りに高く、運賃が低すぎ、さらにガソリンが高騰している中、運転手は家族を養えず、苦しんでいる。。。過去にはこの仕事で十分な稼ぎがあったが、今ではガソリンや維持費が上昇し、さらに高い手数料を払う中で、我々にはほとんど稼ぎが残らない。。。ボイコットは使用者が公正な解決策を提出するまで続く。」

同じくトゥクトゥク運転手であるサロムはこの仕事を始めて6年だが、次のように語る。「私はもうこの仕事を続けられない。毎日の稼ぎで私はガソリン価格を何とかカバーしている。もしトゥクトゥクが壊れたら、これを修理する資金はないか、銀行から借りるしかない。私はもう少し手取りが増えるよう会社に手数料を下げてほしい。」

インフォーマル経済独立協議会ヴォーン・ポヴ会長は、次のように語る。「ボイコットは企業に手数料を下げさせる圧力、即ち交渉手段として正当化できる。手数料が余りに高く、経済がスローダウンする中で、運転手たちは最低生活費を稼ぐことも出来ないのでは公正ではない。企業側は手数料を運転手の安全や社会的保護に全く目もくれずに引き上げ続けている。これはインフォーマル労働者にとって不公正である。。。。企業側は手数料を10%程度に抑え、運転手をフェアに扱い、不公正なアカウントの差し止めを避け、全国社会保障制度(NSSF)への加入を通して社会保障へのアクセスを確保すべきである。そして政府は、アプリをベースとするプラットフォームへの規制を強化し、ドライバーを守り、カンボジアのディジタル経済のビジネスをフェアに行うことを確保すべきである。政府は、運転手が生活費も稼げなくなるほど困ることが無いよう過剰な手数料を防ぐため企業を緊密にモニターすべきである。」

実際カンボジアのトゥクトゥク労働者の生活は厳しいようだ。私もプノンペンの新国際空港でトゥクトゥク労働者に声をかけられたが、彼は空港からプノンペン市内まで10ドルから始め、最終的には6ドルまで下げた。カンボジア在住者の話では「そのような額で市内まで来るのはまれ」とのことだったが、もっと安い例もあると言う。さすがにプラットフォーム労働者の場合はもう少し高いが、競争の激しさを物語っていよう。

クメール・タイムスの記事は、誰がこのアプリのボイコットという活動を組織したのか、明確にしていないが、恐らくインフォーマル経済独立協議会が何らかの役割を果たしているのだろう。組織的背景無しにこのような活動を取り組むことは不可能と思われるからだ。又結果がどうだったのかの記事もない。プノンペン在住者に聞いても「ボイコットがあることに誰も気づかない」そうなので、いつしか消え去ったのであろう。しかし問題が消え去ったわけではない。

インフォーマル経済独立協議会は、2005年に設立された(略称はIDEA)。トゥクトゥクやバイクタクシー運転手、露天商など、カンボジアのインフォーマル労働者を組織する団体である。ウェブを見ると、「2006年に内務省に登録」とあり、ヴォーン・ポヴがこの団体の会長で、インフォーマル労働者の権利の拡大や社会保障の拡大を訴えている。彼は2014年に逮捕され、国際的な釈放運動がおこり、長期収監の後釈放され、会長職に復帰している。

OXFAMから支援を受け、2021年にSP4ALLという団体から出たパワーポイントに、IDEAの家事労働者ネットワークの指導者フォン・サムフォロス女史の体験談がある。彼女は2014年にヴォーン・ポヴ会長が逮捕された時、一緒におり、その後警察から保護観察下におかれた人物である。「私は、NSSFを獲得する仕事にモチベーションを見出している。現在IDEAは活動戦略を街頭でのキャンペインから、政府にインフォーマル労働者の社会的保護をより提供するよう促す技術的な仕事へと活動方針を提供している。」

このようにカンボジアのインフォーマル労働者の労働条件改善の場合、現段階ではNSSFの活用に焦点が絞られてきていると言えるのではないだろうか。

NSSF(全国社会保障制度)とは、健康保険、労災保険、年金をカバーしており、以前はフォーマルセクターの制度だったが、今ではインフォーマルセクターの労働者も利用できるようになってきている。これも2015年採択のILO勧告204号(インフォーマルからフォーマルへの移行)が影響していると言える。しかし実際にはインフォーマル労働者の収入は低く、NSSFの掛け金が払えない例が目立つと言う。

カンボジアのインフォーマル労働者は労働人口の80%を超える。こうした中で多くのNGOや労働組織がインフォーマル労働者の生活改善をめざして活動しているが、未だ大海の一滴と言える。JILAFのSGRA(グラスルーツ活動支援)活動もカンボジアで活動を続けている。その強みは、JILAF、カンボジア使用者協会、労働職業訓練省、ITUCカンボジア連絡協議会、ILOが共同して活動を進めていることである。特にトゥクトゥク労働者、露天商、農業労働者をターゲットにしており、すでに100名以上が職業訓練を受講している。昨年5月JILAFと労働職業訓練省はMOUを結んで活動の強化をめざしている。

今後数多くのNGO、労働団体が緩く連携し、カンボジアのインフォーマル労働者の条件改善を進めていくことが望まれよう。(I)

以上