アルゼンチン・ミレイ大統領の労働法改定に労働組合から強い反対
2026年2月15日現在
2月11日のワシントン・ポストと12日のロイターズは「自由経済を標榜するミレイ大統領がショック療法として硬直化したと言われる労働法の改定を提案し、上院審議が進められている現在、労働組合が動員する労働者数千名が議会周辺を包囲して警官隊と衝突した。労働者は石油爆弾や投石、水ボトルなどで抵抗したが、警官隊は放水砲やゴム弾を使用、少なくとも15名の逮捕者を出した」と報じた。
アルゼンチンは1940年のペロン政権誕生当時からポピュリスト政策による労働権が重要視され、右翼や左翼へのイデオロギーの変化を経験しながらも労働権重視は変わらなかった。これに異を唱えているのが現在のミレイ政権による労働法改革だが、20年に及ぶ民間雇用の停滞、極めて高い給与所得税、撤廃不可能な退職金制度、企業レベルでの交渉が出来ない国レベルの賃金制度の改定を目指して、外国投資の奨励を図りつつ、全労働者の半数に正式な雇用契約がない現状の打破を訴えている。
ミレイ政権の与党、自由前進党は「労働法の近代化で多くの人が正式かつ合法的な雇用を獲得できる。雇用を基盤としてアルゼンチンを基礎から作り上げたい」と語るが、これに強く反対する近代ペロニズムの労働組合は「改定は度重なる制度改定に苦しむ労働者への保護を剥奪するものだ」と糾弾する。
事実、改定労働法はスト権の制限、新入社員の試用期間延長による解雇の容易化、全国労働組合の団体交渉権の制限、退職金の削減など労働規制の柔軟化を目指しており、左派系のペロニストでブエノスアイレス州のキシロフ知事は「退職金や残業代、休暇などの労働者保護は時代を重ねて獲得してきたものだ。それが標的にされているが、誰のためにもならない」と語るが、与党の上院議員は「今回の改定案は今までどの政権も成し得なかった過去50年間で最も重要な改定だ」と述べる。
幾度かの改定の動きは1984年の上院での1票差の否決、2000年のペロン政権では改定案成立後の買収工作発覚で廃案、2017年には労働組合の強い反対で投票にも持ち込めなかった。2023年にはミレイ大統領が行政命令を使ったが、労働組合による裁判所の差止命令で挫折した。そのミレイ大統領が2025年の中間選挙の勝利の後、トランプ大統領の支援を得て今回の改定に取り組んでいる。
12日のロイターズは改定案が42対30で上院を通過したと報じたが、専門家は今後の下院議会で修正が加えられたとしても、これはアルゼンチン史上、重大な出来事として記録されるという。
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