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ロシア・プラットフォーム労働者のスト

2026.01.20掲載

ヤンデックスという会社がある。旧ソ連圏の市場で稼ぐコンピューター企業であり、グーグルのような役割を演じている。検索エンジンから、今ではヤンデックス・イェダー(食品の輸送)、ヤンデックス・タクシーなど多くの業態に進出している。しかも多くの業態で独占的地位を占めている。
ロシア、カザフスタン、ベラルーシの3国で働くヤンデックス・タクシーの労働者達が昨年12月15日ストを起こした。彼らの不満は、ヤンデックスの手数料が高すぎるという点、便利なのですぐ近くでも利用され低運賃という点だ。モスクワの運転手セルゲイは、テレグラムで1万2000人の参加者を持つチャットの管理者だ。彼は言う。「ヤンデックスは、乗客からの注文をオンラインで受け付け、それを運転手に連絡すると、基本28%の手数料を取る。さらに運転手が自分の地域で働きたいと言うと、彼に優先的に注文を回すことで追加9%の手数料、さらに通勤の途中で注文を受けると「ついでの注文」として9%の手数料、運転手がB地点に行きたいと考えている時、そこへ行く乗客がいると、表示料として4%の手数料となる。」こうして手数料は全て合わせて50%に及ぶ。他の会社で働けば、10%が手数料で、それは適切な額とのことだ。しかし注文が多いので労働者はヤンデックスを選ぶ。「活動家の一人は、タクシー運転手のチャットで、ロシア全土で少なくとも5万人のドライバーが出勤しなければ、ヤンデックスは深刻な打撃を被り、手数料システムの改善に取り組むであろうと述べた。」(論拠と事実2025年12月14日号ヤンデックス・タクシーの運転手たちは労働条件改善を目指し12月15日ストを計画している)
しかし12月15日予定されたストは、ほとんど影響はなかった。ドライバー側、ヤンデックス側からその後情報はないので、実際の所は分からないが、当地に住む人々誰に聞いても「当日ストの影響は感じられなかった」とのことだ。ストは失敗に終わったと見てよいだろう。

プラットフォーム労働者を守る議論
今ロシアでは一切の大衆行動は厳しく規制されている。この状況下でストを計画すること自体リスクがあるが、ドライバーの一部は「静かなスト」、「集まらず仕事をしない」という形で行動を組織した。プラットフォーム労働者のストライキ行動は全世界的にみられるが、成果を出すのは非常に困難である。ましてロシアやベラルーシでのストといえば、考えること自体勇気がいる。
さらに労働者側にとって、対抗する相手が独占的なヤンデックスだ。圧倒的に非対称的な労使関係がそこにはある。アレクセイ・イワノフBRICS コンペティションセンター長は次のように見る。「私はタクシー運転手がもっと良好な条件の下で働くべきだと思う。しかし今日彼らの利益はほとんど保護されていない。伝統的な労使モデルでは、会社の力に対しバランスを取るには労働組合が役割を演じていた。このモデルが影響力を失うと、官僚化した形が正当化された。現在重要なことは、より近代化された原則の下、労働組合の役割を考え直すことである。特に労働者の収入がどのように計算されるのか、労働者が理解しなければならない。競争の保護と発展局(ADRC)が機能するカザフスタンの例が参考になる。そこでは、2022-23年度の調査に従って、ヤンデックスに料金設定と手数料のアルゴリズムの部分を公開するように命じた。ADRCは又ヤンデックスに対し、料金の基本コストの倍を超える手数料を問題視し、運転手に対し補足的なボーナス制度を導入し、ユーザー・アプリを料金計算しやすく、より透明化するよう改善することを命じた。この反独占的なコミットメントは、ADRCの特別モニタリング・グループによってモニタリングされる。そこにはイニシャティブ・グループの代表、運輸省、労働界、社会保護、法曹、ディジタル発展とイノベイション、納税者協会の代表が入っている。これはチャレンジに対し、タイムリーに相対することを可能にする。プラットフォームをベースにするビジネスモデルは、一方に強力で莫大なリソースを持つ企業の利益と多数の自営業者が対抗する形である。この関係を規制し、順序だてることは決定的に重要だ。現在のプラットフォーム経済、そこでは労働組合のような機構がまだ存在しない経済では、反独占庁のような機構が仲裁者として活動することが最も適合している。そうでなければ、抗議のような非建設的な形態がこの空白部分を埋めることになろう。今回のストはその最初の表れだ。」(BIICS Competition12月16日号「ロシアのタクシー運転手はヤンデックスの手数料システムに抗議」)
ロシアでは、近年自営業者が増大している。「連邦税務庁の統計によれば2025年自営業者の数は25%伸び、1527万人に達した。」(Тアドバイサー2026年1月13日自営業)2019年以降プラットフォーム労働者に対し、専門職所得税法が導入され、自営業者という取り扱いが明確になった。企業側は社会保険料を納める必要が無く、労働者側は税率が低いということで、見かけ収入が大きい点を魅力と感じる人々が多いことが背景にあろう。しかし年金は保険料を払わない限り貰えないし、医療保険も最低限のみで、勿論病気休暇手当や産休手当は無い。これは良く知られているが、ロシアの年金は安く(平均3万円前後)、平均寿命は短い(73歳)ことから、年金より現在の収入をいかに上げるかが労働者の興味の中心となる傾向が強いようだ。まさに将来展望がない状況だが、これをいかに変えるかが問われている。戦争などしている暇はないのだ。(I)

以上