活動報告 各国の労働事情報告

2025年 スリランカの労働事情(インド・スリランカチーム)

以下の情報は招へいプログラム「インド・スリランカチーム」参加者から提出された資料をもとに作成したものである。

1.取り組みを進めている最近の課題について

ジェンダー平等と職場におけるハラスメントについて
  • ジェンダー平等と職場におけるハラスメントについて

CWCの取り組み

CWCは女性組合員の平等な権利を保護する取り組みを進めており、以下のような活動を実施している。

  • 組合の福利厚生、研修、支援サービスに女性が優先的にアクセスできるように配慮
  • 労働組合役員への女性の登用の促進
  • 各級レベル意志決定機関への女性参画の推進
  • 若者、特に若い女性のリーダーシップ育成に向けた特別プログラムの実施
  • 職場におけるセクハラや暴力に対しての強力な措置
  • 全ての労働者が尊重され安全に働けるための行動規範の策定、苦情処理メカニズムの設置、意識啓発キャンペーンの実施
労働安全衛生についての取り組み

CWCの取り組み

プランテーション労働者を組織しているCWCは、労働安全衛生に関わる取り組みを強化している。具体的な取り組みは以下のとおり。

ア)職場改善のための経営側への要求

  • 清潔な女性用トイレの設置
  • 個人用保護具(手袋、ブーツ、マスク、エプロンなど)の提供
  • 野生動物(蛇、豹、スズメバチなど)による襲撃から身を守るための諸措置:警報システムとフェンスの設置、現場での応急手当のための訓練、野生動物がいるエリアの清掃の励行

イ)政策面での取り組み

  • 労働安全衛生に関するILO条約(155号、187号)とハラスメントに関するILO条約(190号)の批准促進のためのキャンペーン:スリランカ全国の農園労働者1万名以上

ウ)教育プログラムの実施

  • 労働者が自らの権利と安全基準に関する知識を身につけられるように、地域各地で啓発・教育プログラムを実施

SLNSSの取り組み

電力庁で働く発電・送電等の危険な業務に従事する労働者の労働安全衛生確保に向けて、SLNSSは長年にわたり取り組みを進めてきている。最近の大きな進展は以下のとおり。

  • 労使協議の結果、電力庁に労働安全衛生部門が設立され、全従業員への安全研修、応急処置訓練、負傷者の即時病院搬送、労働省への報告、死亡・障害者への補償、緊急休暇の付与、被災者家族への支援がなされるようになった。
  • 労使協議での組合側の働きかけにより、臨時雇いの労働者に対しても安全装備や設備の確保など、正規雇用労働者と同様の権利が適用されることとなった。

2.直近に発生した労働争議について

CWCの事例

2025年初頭に発生した、CWC組合員とスリランカ中央高地の大規模茶園経営者との間での労働争議について

  • 紛争の原因:不十分な労働安全衛生対策(農薬や肥料など、危険な化学物質を扱う際に使用する適切な保護具の不足/機械の整備や農園インフラ整備が不十分なことによる事故や怪我のリスクの高まり/健康管理や応急処置設備の未整備)
  • 組合の要求:安全プロトコールの施行や必要な機器の提供を含む、スリランカ国内の労働安全衛生関連法規と、ILOなどが定める国際的な労働基準の遵守/職場の安全衛生対策の即時改善
  • 紛争の経過と結果:交渉において経営側が組合の要求に応じなかったため、組合はストライキを断行した。政府の労働監督官、更にはILOスリランカ事務所からの支援も得て、数回にわたり交渉が続けられた結果、経営側は組合側の要求に同意し、ストライキは終結した。

SLNSSの事例

2024年から2025年にかけて発生した水道局とその職員による労働争議について

  • 紛争の原因:経済危機の下で人員削減が断行された結果、現場は人手不足に陥ったため、職員は休暇を返上して働き、水の供給を止めないように尽力してきた。しかしながら、年末になっても、返上した休暇分の手当が職員に支払われず、労働者側は大きな不満を抱えることとなった。
  • 組合の要求:正当な手当の支払い
  • 紛争の経過と結果:2ヶ月間にわたり労使協議が行われたが、手当の支払いには繋がらなかった。そのため、組合側は昼休みの時間帯に短時間ストライキを実施したが、使用者側からの回答を得ることは出来無かった。そのため、2時間スト、4時間ストへと行動を強めたが、使用者側は無回答を続けた。更に行動を強め、全日ストを決行したところで使用者側から手当の支払いに応じるとの回答を得ることができ、争議は解決に至るった。