活動報告 各国の労働事情報告

2025年 カンボジアの労働事情(再招へいチーム)

以下の情報は招へいプログラム「再招へいチーム」参加者から提出された資料をもとに作成したものである。

参加者情報

  • ITUCカンボジア協議会(ITUC-CC)

カンボジア労働組合連合(CCU)
カンボジア労働組合連盟(CCTU)
カンボジア労働総連合(CLC)

基本情報(外務省データ2025年5月13日更新分より)

人口:17.1百万人(2024年国連人口基金)

宗教:仏教(一部少数民族はイスラム教)

政体:立憲君主制

主要産業:工業、サービス業、農業

GDP:約471億米ドル(2024年、IMF推定値)

物価上昇率:2.1%(2023年、IMF推定値)

 

1.カンボジアの雇用状況

労働法の変遷

1990年及び1997年の労働法・憲法は、労働者との権利と義務を明確に定めている。特に、今まで繊維業界と船員業界の労働者の権利が保護されていなかったため、これを保護する内容が追加された。この法律は、労働時間、時間外労働、休暇、雇用契約の終了などに関して具体的に規定されている。

2016年の労働組合法は、労働組合および雇用主団体の設立と運営に関する権利と義務が明確に規定されている。

団結・労働組合活動の実現上の課題
  • 労働組合およびその役員に対する差別的取り扱い
  • 手続きが複雑で労働組合を結成することが困難
  • 労働組合指導部に対する圧力や妨害行為の多発
  • 多くの労働組合が職場の労働者の声を反映しきれていない
  • 労働裁判所がないため労使紛争が長期化
ナショナルセンターカンボジア協議会(ITUC-CC)による状況改善のための取り組み
  • ITUC-CCは、労働省と定期的な協議会を開催して課題を提起
  • 政府と労働省に対して、労働法の改正を求める請願書を提出
  • 傘下の労働組合や市民団体と定期的な協議会開催
  • 縫製業における労働安全衛生に関する調査を実施し、報告書を提出
  • 政府及び雇用主との対応窓口として、職場に安全衛生委員会を設置
  • 政労使による三者委員会への参加を通じた連携
  • 国家最低賃金委員会への参加及び同委員会での交渉に必要な労働者の生活実態調査の実施
  • 労働者の権利や労使紛争のテクニックなど、実践的な組合リーダーの要請研修を実施
労働に関する様々な法律改正の動向と労働環境改善への取り組み
  • 多発する通勤災害に対する労災適用について、政労使三者委員会にて可否を協議
  • 労働省による工場・企業に対する巡回監査・監督の実施
  • 労働省による未解決の労使紛争の再調停
  • 通勤災害防止のための「道路安全作業グループ」を創設
  • 多発する労働災害(職場での各種事故、墜落、過重労働による精神疾患や脳心臓疾患など)防止のための作業グループ設置
  • 国家最低賃金決定委員会への労働組合の参加

2.社会保障制度(S.S.S)

カンボジアの社会保障制度は発展途上にあり、制度改革を通じてその信頼性と透明性の向上、さらに手続きの簡素化を目指している。

制度の内容は

(1) (2008年制定)

(2)健康保険管理 (2016年制定)

(3)年金制度 (2022年制定)

(4)失業保険制度 (現在審議中)

女性と家族のための支援

(1)産前・産後休暇:90日間(労働組合は98日間への延長を要求)

(2)産前産後の休業期間に対する給付金

   出産前に80,000リエル(約2,800円)を4回、出産後に80,000リエルを10回支給

(3)出産手当:第一子に800,000エル(約30,000円)、第二子に1,200,000リエル(約45,000円)、第三子に1,800,000リエル(約60,000円)を支給

(4)男性の育児休暇  7日間

社会保障制度の問題点

(1)元請企業が下請け(サブコントラクト)や孫請けの労働者には社会保障制度の加入させない。

(2)国家社会保障基金(NSSF)のサービスが限定的で、健康保険ですべての病気をカバーしていない。

(3)NSSF制度そのものの認知度が低い。

(4)雇用主が数をNSSFに労働者数を過小登録している。

(5)NSSFに対する違反を労働者が報告すると雇用主に制裁される。

(6)NSSFのホットラインサービスが複雑で利用しにくい。

(7)労働監査(インスペクション)の実施が限定的である。