活動報告 各国の労働事情報告

2025年 ベトナムの労働事情(再招へいチーム)

以下の情報は招へいプログラム「再招へいチーム」参加者から提出された資料をもとに作成したものである。

参加者情報

  • ベトナム労働総同盟(VGCL)

基本情報(外務省データ2025年5月13日更新分より)

人口:約1億30万人

宗教:仏教、カトリック、カオダイ教ほか

政体:社会主義共和国

主要産業:農林水産業、鉱工業・建築業、サービス業

GDP:約4,300億米ドル(1京222兆ドン)

物価上昇率:3.25%

 

1.労働法及び労働政策の枠組み

現行の労働法制度

2019年に労働契約、賃金、安全衛生(ATVSLD)、労使対話及び団体交渉に関する事項を規定した法律が施行された。また、2024年に改正された労働組合法は、労働組合の組織と活動に関する法的枠組みをより一層整備する重要な一歩となった。

法改正の動向

2024年改正労働組合法の主なポイント

(1)組合加入の拡大

正式な雇用契約関係を持っていない労働者及び12か月以上の契約を有する外国人労働者も、労働組合への加入が可能になった。

  (2)組合役員の権利強化

非専従の組合役員に対して、使用者側は労働組合の同意なしに一方的な解約はできなくなった。労働組合には、組合役員を法的に保護する権限も付与された。

  (3)労働組合の役割拡大

労働組合は、国家機関や企業などと協力し、労働条件や賃金、社会保険、安全衛生などの実施状況を監視し、問題の発見や評価を行うとともに、改善を提案する責任を負っている。

また、労働者のための賃貸住宅を建設することや、文化。スポーツ及び関連施設を整備すること、政策立案への関与強化など、労働組合の責務が追加された。

2.労使関係及び労働者の生活状況

雇用と所得

  2025年上半期の経済・社会状況は引き続き力強い成長を記録している。2025年第一四半期における就業者数は約5,190万人で、前年同期比で53万2千人増加となった。生産年齢人口における失業率は約2.2%に減少し、不完全就業者数も約80万人にまで減少した。

一方で、9万6千社以上の企業が市場から撤退したことで、独占的な状態になり売り上げが伸びたため、一部の労働者の所得に変化が生じている。2025年第一四半期の平均月収は830万ドン(約5万円)で、前期比1.6%の増、前年同期比9.5%の増加となった。また、2025年の旧正月のボーナスは772万ドンで前年比13%増加となっている。

集団ストライキ及び労働争議の状況

2025年の5か月で全国では37件の集団ストライキが発生し、前年同期比で8件増加した。主な原因は、賃金・賞与の遅滞、政策違反、賃上げなどの労働条件改善要求に端を発するものあった。

各レベルの労働組合は、労働省・使用者との交渉により、多くの要求が一部または全面的に認められた結果、ストライキは終了し、労働者は職場に復帰した。

特に2025年以降、繊維・履物業や外資系企業において、賃上げ、手当、シフト勤務代、食事の質などをめぐる労働争議が多発した。これに対し、ベトナム労働総同盟は、現場の民主化や職場における労使対話の強化など、8つの重点活動を各レベルの労働組合にした。

労使対話及び団体交渉の成果

(1)労働会議

2025年5月末までに、非国営企業の67%(37,371社/55,779社)が労働会議を開催。国営企業では99.5%が開催している。

(2)定期対話

非国営企業においては60.5%が定期的な労使対話を実施。また、要請に基づく対話は7,269件、問題発生時の対話は3,871件実施された。

(3)団体労働協約(TLA)

新たに1,429件の労働協約が締結され、新たに締結される労働協約の年間目標約3,600件のうち、約40%にあたる1,429件が達成された。団体労働協約(TLA)を締結している企業は75%に上昇、3,125件の団体労働協約が改定・補足された。団体労働協約の内容はより実質的となり、法定最低基準を上回る賃金、ボーナス、勤務体系、食事の質、安全衛生条件などが明記されている。

3.労働組合の課題と展望

国の組織改編により、公的部門から民間部門への労働力の移転が進んでおり、柔軟かつ競争力のある職場環境の改善が求められている。また、技術革新やAIの導入により、一部職種は機械やソフトウェアに代替される可能性があるため、使用者・労働者の双方においてデジタルスキルの向上と迅速な対応力の強化が不可欠となっている。

こうした変化は、生産性の向上や高品質な新たな雇用創出の機会にも繋がる可能性がある。特にベトナムでは、科学技術、イノベーション、国家的なデジタルトランスフォーメーションに関する画期的な進歩が見られ、民間経済の発展を国家政策の柱とするなど、新たな政策が相次いで打ち出されている。これらは、ベトナムが直面する困難や課題を迅速に克服し、持続的な発展を実現するための好ましい基盤と機会を創出している。

今後、労働組合は労働者の権益をより効果的に保護するため、その運営方法の刷新が求められており、国家・労働組合・企業による三者協力が、今後の労働環境の発展の鍵を握っている。