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インドネシア郵便労組の統合に向けて

2025.12.09掲載

経過
インドネシア郵便(ポス・インドネシア)は、約2万人からなるインドネシアでは大きな組織の一つである。そこには3つの組合があり、SPPI約7,700名、SPPIKB約2,800名、SPPI統一約1,100名となっている。この企業の組合の歴史は古く、戦後のスカルノ時代すでにSSPTTという組合があった。この組合は1970年代後半まで生き残ったが、公務員はKopriという共済団体に入ることになり、Kopri以外の団体は禁止するというスハルトの指令が出て、禁止されてしまう。組合運動が再出発するのは、90年代後半民主化運動の高まりの中、スハルト体制が崩れ、1998年ハビビ元大統領がILO第87号条約を受け入れ、国内法化した以降である。1999年SPPI(インドネシア郵便労組)が結成される。コスワラ元委員長の指導の下、SPPIはUNIに加盟し、日本の郵便労組の支援も受けて順調に組織を伸ばし、協約締結も行う。しかし2011年11月ジャヤが新しい委員長に就任されると、SPPIの様相は大きく変わる。ジャヤはインドネシアのUNI加盟母体であるAspekの議長となったが、Aspekの実権は書記長のサプダが握っていた。ジャヤはまず政治路線を巡ってAspekと対立。次に、「郵政長官になろうと考えたジャヤがAspekの名をかたる手紙を偽造した」という嫌疑がかかり、Aspekはジャヤを非難、抜き差しならない関係になり、2012年ジャヤはSPPIを引き連れてAspekから脱退する。
このようなジャヤのAspekに対する関係に見られるような無鉄砲ぶりは随所に現われ、SPPI内部でも問題が発生する。彼の指導に反発する組合員は2018年SPPIKBを結成し、ジャヤと袂を分かつ。当時SPPIKBだけがAspekのメンバーとしてUNIに加盟できた。ところがSPPIKB内部でも問題が発生し、SPPIKBからSPPI統一が分裂する。こうして独立した労組としてどのナショナルセンターにも加盟しないSPPI、Aspekに加盟するSPPIKB、そしてナショナルセンターKSPIに加盟するSPPI統一という3つの組織にインドネシア郵便の労働運動は3分割される。

SPPIのUNI加盟
SPPIは2021年の大会でジャヤが退き、バンドン出身のイワンが委員長となる。これによってSPPIは再び様相を変える。過去のジャヤの無鉄砲な組合指導者ぶりとは大きく変わり、秩序を重んじ、一歩一歩運動を積み上げていく運動に変化していく。UNIに再加盟を希望するのもその一つの表れであった。2024年UNI-Apro郵便ロジスティクス部会とAPPU(アジア太平洋郵便連合:経営側組織)主催のセミナーにSPPIが参加したことをきっかけに、SPPIとUNI-Aproの関係は密接になる。2025年11月に開催されたUNI世界執行委員会でSPPIのUNI加盟は認められることになる。
その直前SPPIは、新しい労働組織で急速に伸びているAspirasiに加盟している。このことはこれまでの原則「Aspek加盟しなければUNIには加盟できない」は実質的に無効化したこと意味する。これによって今後UNIはインドネシアにおいてさらに組織拡大が可能となるであろう。

SPPIKBのAspirasi加盟
さらに驚くべきことが起こった。これまでAspekの忠実な加盟組合だったSPPIKBがAspekを脱退し、Aspirasiに加わったのである。理由は、Aspekが組織を再編し、リンフォックスなどロジスティクス部門と郵便を合わせて一つの組織にしようとし、これに反発したSPPIKBがAspek脱退を決めたことと言われている。これによってSPPIとSPPIKBは一つのサービス産別Aspirasiに属することになった。Aspirasiは早速両組合を対象にしたセミナーを開催した。11月21-22日{未来を切り開く:ディジタル時代に適応したリーダーシップを形作る}をテーマに開催されたこのセミナーは、SPPIとSPPIKB両組織から15名づつ30名を集めた。インドネシア郵便でもディジタル化が大きな課題である。今後の労働を考える上でもディジタル化が特に重要になっており、この中で組合運動もこれに応え、より適応型のリーダーシップ、苦情処理の強化が求められていることを分かりやすく説明した資料が配布され、討論は活発に進んだという。重要なことはこうした共同行動の積み上げによって、両組合がより親密になり、相互理解を深め、統合へと向かっていくことであろう。このセミナーは、統合に向けて第一歩を築いたと言う意味で意義深い。

困難はこれから
しかしインドネシア郵便の最大の問題はその方向性だ。インドネシア郵便は、郵便からロジスティクス中心の企業へと舵を切り、国有企業群を有望顧客とし、それらの荷物を一括で取り扱う企業となろうとしているが、この戦略が成功しているとは言えない。そもそも郵便とロジスティクスでは業務が異なる。インドネシア郵政のファイザル社長は、変革プロセスを実現するために「適応性、コストとリーダーシップ、顧客満足度、競争力、従業員、生産性」という要素からビジネスを点検することを提唱するが、どれも大変困難な課題である。インドネシア郵便は、ロジスティクス企業と郵便企業の間を漂流しているように見える。しかしディジタル化に習熟した職員がコストを引き下げ、インドネシア郵便の業務改善を行うことは大きな意味がある。今回のセミナーの焦点もここにあった。労働組合の分裂を克服し、労使が共に協力し、各々の役割を果たし、戦略を明確化・実現することが問われている。(I)

以上