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AFL-CIOなどが労働者保護に向けてAI規制の法制化へ

2025.08.18掲載

8月12日のワシントン・ポストは「IT企業や経営者がAI技術の導入を加速させる中で、労働組合が各州議会と協力して労働者保護の法制化に乗り出した」と報じた。

マサチューセッツ州議会でははチームスター労組が自動運転車への人間の搭乗義務付け法案を支援して完全自動化に反対、オレゴン州議会ではオレゴン看護師協会労組の支援のもと、
AIによる看護師名称の使用禁止が承認された。また63組合が加盟するAFL-CIOは先月、労働者に影響を与えるオートメーションとAIを規制するためのタスクフォースを発足させ、各州議会との連携活動を開始した。

これに対し先月、各州議会における様々なAI規制はAI開発を阻害するとして、地方での規制法を禁じるモラトリアムが上院議会に提案されたが、圧倒的多数で否決される事態も起きている。労組幹部は「AIによる大量解雇や雇用への危険から労働者を守るための規制が必要だ」と強調するが、問題は2023年のハリウッド脚本家組合のストライキでも顕在化した。

2月のギャロップ調査では労働者の3分の2がAIは雇用を奪うと答えているが、AI推進派はそれを認めながらも、他面では多くの雇用を創出すると主張している。
こうした中でAFL-CIOタスクフォースはAI問題を1990年代における北米自由貿易協定問題と同様に捉えて「雇用への影響は甚大だ。望ましい未来社会の姿がどうなのか、我々を保護する法規制はどうあるべきかを決めるのは我々にある」として、各組合の団体交渉や協定締結に当たってのAI問題の助言、各州議会における法律モデルの作成に取り組んでいる。

このタスクフォースの共同議長を務めるカリフォルニア労組連合会のゴンザレス会長は「上院議会でモラトリアムが否決された直後から各州議会でどのような備えが必要なのかと言う要請が高まった。カリフォルニア議会では解雇や懲罰についての判断をAIソフトウエアに頼ることなく、人的判断によるとの法案が審議されているが、法案はまた労働者の行動予測や精神状態、個性を推定する道具の使用を禁じている」と語る。

これに対しマイクロソフトやアルファベットなどの支援を受けるシンクタンク、情報技術革新財団のアトキンソン会長は「AFL-CIOが言うAIに対する生産性規制は賃金上昇と経済成長を遅らせるだけだ。労働組合は余剰労働者の活用を図るプログラムを議会に働きかけるべきだ」と述べた。

先述のマサチューセッツ州における動きについては、チームスター労組25ローカルのマリ委員長が「アルファベトを利用したWaymo社のロボタクシーが労働者や住民の安全を無視して町中を走り回り、運転手を使わないことで数兆ドルの巨額の利益を上げている」と指摘して、自動運転車への安全担当者の搭乗を要求している。
法案提出のフィーニー上院議員(民主党)も「テック企業は法規制無しに我々の道路を実験場として利用している。法案は人々の安全と雇用を守る常識的な法律だ」と語る。

以上