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ラスベガスの主要カジノ全てに労働組合結成

2025.08.18掲載

8月4日のワシントン・ポストは標題記事の中で「ラスベガス調理師労働組合が90年の歴史の中で初めて、ストリップ通りの大手カジノ全ての労働組合結成に成功した」と報じた。

過去25年間にわたり最後まで労働組合に反対したのはベネシャン・カジノであったが、昨年末に所有者が交代、それに加えて新規店のフォンテンブローも労働組合を受け入れることでストリップ通りの主要カジノ全てに調理師労働組合が誕生、組合員もネバダ州最大の6万名を数えるに至った。

全国的には労組組織率が1983年の20%から昨年には10%に衰退する中で、ラスベガスでの労働運動には力強いものがあり、労働協約改定で賃金労働条件が改善。ある女性従業員は「時間に追われてホテルの部屋を走り回ることがなくなった。子供と過ごす時間も持てるようになった。労働組合ができて私達の声が聞いて貰える」と話す。他方、ラスベガス訪問者は昨年6月比11%減少、店舗占拠率も88%から82%に低下する景況の中で、ベネシャンの新オーナーは「労使協力が将来を切り開くと確信する」と語った。

共和党による反労組政策やネバダ州など25有余州における労組加入や組合費納入を従業員の自由意志とする”労働の権利法”にもかかわらず、調理師労組が力強い運動を展開できる理由についてネバダ大学のガルシア教授は「ラスベガスにおけるカジノ産業の成長力と長い歴史を経たカジノ所有者と経営者のパワー・ダイナミックスにある」と語る。

教授は「ストリップ通りのカジノはデトロイトのBIG3のようにMGMリゾート・インターナショナル、シーザーズ・エンターテインメント、それにWynnリゾートの3社に統合され、ある面では労働組合に不利に働いたが、他面では労働組合に大きな目標を与えた。
2023年の35,000人労働者のストライキでは、シーザーズが辛うじてストライキを回避したが、労働組合はすかさず同様の協約をMGMとWynnに要求して5年協約で32%賃上げ、最終年度には平均時給35ドルを勝ち取った。こうして労働組合の交渉力は特に民主党内で高く評価される事になった」と言う。

他方、同じネバダ大学のグリーン教授は労働組合反対の人の存在にも注目して、「今年始めに食品労働者2人が組合費支払いを拒否したにも拘らず徴収されたとして全国労働関係委員会に提訴した」と述べるが、調理師組合によると、95%–98%の労働者は労組を受け入れているという。

組合員歴40年の労働者は「労働組合のお陰で仕事を続けてこられた。家族への無料医療保険、定期的賃上げ、年金と雇用の保障など、コロナ災害や現在のツーリスト減少時にも組合員を守ってくれる。勤続年数に応じた雇用保障やレイオフ時の優先的復職もある。ストリップ通りには現在、30年、40年の仕事がある」と語る。
調理師労働組合のパッパジョージ事務局長は「これがラスベガス・ドリームだ。この街をユニオン・タウンにすることが目標だ」と話す。

以上