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日本製鐵によるUSスティールの買収が完了、労働組合に不信感

2025.07.01掲載

6月18日のニューヨーク・タイムズとCNNニュースはそれぞれに「日本製鐵によるUSスティールの取得(acquisition)が18日に完了したことを両社が発表」、「日本製鐵はUSSの100%買収を完了」と報じた。

日本製鐵によるUSスティール買収が発表されたのは2023年12月、大統領選挙のスイング州、ペンシルバニアを舞台に政争の道具とされ、強力労働組合の全米鉄鋼労組(USW)と国家安全保障を懸念するバイデン大統領は反対を唱えてきた。

他方、大統領選挙では共に反対であったトランプ現大統領だが、先月に至り取引交渉の承認を言明、新会社において国家安全保障に関する特別な権利、「黄金株」を連邦政府に付与することを条件とした。
トランプ大統領がパートナーシップと呼ぶこの交渉については提携なのか、投資なのかなど様々な疑問が提示されてきたが、両社は声明で「合併(merger )協定に基づく交渉が完了した」として、取引が日本製鐵への売却であることを確認した。取引はUSS株主の承認も得ており1株55ドルで譲渡される。

これに対しUSWマッコール会長は交渉への懸念を表明、「現行協定は2026年に期限切れとなるが、雇用や年金、退職健康保険などの減額には全力で反対する」との声明を発表した。

連邦政府との合意で、政府は新USS役員会に役員1人を選任し、役員の過半数は米国人が占める。その他、会社名称や本部所在地の変更、雇用の海外移転、他社併合などに政府は拒否権を持つ。その他、日本製鐵は2028年までに新たに110億ドルを投資する。

専門家によると、この協定は会社取得について民間企業が政府と結ぶ中でも最も強力な部類に入るものとされ、特に黄金株は米国経済に特別に重要とされる企業だけに適用されるものだけに、外国からの投資に新たな基準を設けることになる。

両社は声明の中で「交渉により関連産業を含めて10万人の雇用が産まれる」としているが、USSは現在、北米に14,000人、世界に22,000人を雇用する。

以上はNYTだが、以下にCNN記事を紹介すると:

大統領選挙でトランプ氏はバイデン大統領と共にUSS取得交渉に反対してきたが、大統領当選後の先月には「直截な買収ではなく投資に留まるなら許可する。日鉄は投資内容を改善させ、投資を追加した」と述べて取引の承認を表明、「これは日鉄による投資であり、部分取得だ。会社は米国が支配する。そうでなければ取引は成立しない」と述べた。

その1週間後、ピッツバーグの鉄鋼工場の組合集会に出席した彼は「取引は労働者にとって良いものだ。会社からは何回も依頼があったが私は拒否し続けた。その後内容はますます労働者に有利なものとなった。今後も監視を続ける。今後もより偉大なものになる。そして少なくとも今後10年間、溶鉱炉は全力運転、レイオフはなく、外注もない」と言明した。

しかし全米鉄鋼労組(USW)は交渉に反対、声明の中で「政府が拒否権などを持つとしても、交渉内容に言われる約束や保障に疑念がある。歴史的なUSSの会社標章は残るかもしれないが、民間日本企業全額保有の下請け会社がアメリカンと呼ばれる煙幕に過ぎないものになる。1901年創立のUSSは世界最大企業としてアメリカの優位性のシンボルでもあった。自動車、家電、橋梁、そして第2次大戦の武器製造に至るまで、必要な鉄鋼を供給し続けた。しかし現在に至る衰退期までに従業員は14,000人、組合員は11,000人にまで減少した」と表明した。

以上