活動報告 各国の労働事情報告

2023年度 ネパールの労働事情(カンボジア・ネパールチーム)

2023年10月20日 報告
本労働事情については、ナショナルセンター・参加者から提出された資料に基づき「労働事情を聴く会」、参加者との意見交換を基にまとめたものである。

 

参加者情報

ネパール労働組合会議(NTUC)

  • ネパール公共サービス組合UOSIN
  • ネパール美容組合(NBU)
  • 財務研究所従業員組合
  • ネパール刺繍・手芸・縫製組合

 

1.はじめに

 

本レポートは、加盟組合員数42万5000人(うち女性10万人)を擁するネパールのナショナルセンター「ネパール労働組合会議(NTUC)」からの報告要旨をまとめたものである。

ネパールの憲法では、労働に関する権利(雇用権、団体交渉権、社会保障、組織化の権利など)が規定されている。2018年には、労使が掛け金を拠出し合って老齢年金や健康保険などを行う社会保障制度が導入されている

 

2.ネパールの労働事情

(1)労働法制について

 労働法の改正作業に際しては、労働組合の代表が政策検討に入って検討を進めている。そうした努力の結果として、賃金の男女差禁止、労働者の団体交渉権の保障、定年の58歳から60歳までの延長などが実現された。
最低賃金について、労働調整委員は2年毎に最低賃金を決めるべきとしているが、実現出来ていない。また、雇用者による解雇があるためコロナや倒産で簡単に労働者が解雇されてしまう問題がある。こうした課題に対して、他のナショナルセンターと共に労働組合協議会で解決に取り組んでいる。

(2)社会保障制度について

ネパールの社会保障は、1991年に当初は公務員に対しての保障として始まり、2018年に拠出制の社会保障制度となった。使用者団体20%、労働者団体11%を拠出する、正規労働者に対しての社会保障制度である。将来はインフォーマル労働者も入ってくることを予測して、制度設計している。インフォーマルで働いている人に対し、11%の掛け金を支払うようにお願いしつつ、導入検討を進めていく。
拠出制社会保障基金に入っている会社は、現在は1万4000社、労働者は60万5000人。

(3)最近発生した労働争議の経過について

 700人が働く工場で、長期間働いている労働者との労働契約締結と正社員化、同一労働同一賃金、未払い労働の撲滅などの要求書を提出し、30日の期限を設けて交渉を求めた。会社側はコロナ禍で経営状態も良くない事情もあったものの、交渉には応じず、労働者側はストに突入した。経営側も工場をロックアウトし、積極的に要求をした労働者150名を解雇した。使用者団体がNTUCを招いて話し合い、150人は復帰したが、他の要求は応じておらず、話し合いが継続中である