2025年 ウクライナの労働事情(ユーラシアチーム)
以下の情報は招へいプログラム「ユーラシアチーム」参加者から提出された資料をもとに作成したものである。
参加者情報
- ウクライナ自由労働組合総連盟
基本情報(外務省データ2025年10月29日更新分より)
人口:4,159万人(クリミアを除く)
宗教:ウクライナ正教及び東方カトリック教。その他、ローマ・カトリック教、イスラム教、ユダヤ教等。
政体:共和制
主要産業:卸売・小売業、自動車・二輪車修理業(14.0%)
GDP:1,555億ドル(2020年:世銀)
物価上昇率:2.7%(2020年:世銀)
1.ウクライナの労働法
労働法制の現状と課題
ウクライナの労働法は主に労働法典に基づいているが、近年の戦時下での改正により、事業継続や緊急対応を目的として、単なる休業とは異なる、労務提供義務や賃金支払義務を含む契約上の主要義務が停止される労働契約の一時停止、労働時間や勤務形態の変更、団体協約の適用制限などに関する雇用主の裁量が拡大された。一方で、最低賃金や労働安全などの基本的保障は形式的に維持されている。しかし、戦争や経済状況の悪化、労働監督機関の機能低下により、実際の執行にはばらつきがある。
現行労働法とナショナルセンターにおける問題点
法制度の断片化や団体交渉の弱体化、不当解雇保護の縮小、戦時特例により労働法の適用関係や団体交渉の位置づけが曖昧になり権利行使の予測可能性は低下している法的不確実性が指摘されている。政府による労働法改正は、国際基準やウクライナ憲法に反し、労働者・労働組合の権利を制限する内容となっている。労働者の団体代表権よりも個別の労使関係が優先され、社会対話が損なわれている。
労働法改正の動向
EU加盟を見据えた包括的な労働法改正が進められており、EU指令との整合性が図られている。一方で、一時的措置として導入された上述の労働契約の一時停止や団体協約適用の制限、使用者裁量の拡大などの戦時下の緊急対応策の恒久化するリスクもあり、労働組合はディーセント・ワークや社会保障、社会対話のバランスを求めている。
2. ウクライナの社会保障制度
社会保障制度の現状
年金、医療、失業手当、社会扶助などを含む社会保障制度は、戦争による財政難やインフラ破壊で厳しい状況にある。年金や基本的な社会保障は国際支援で維持されているが、医療サービスへのアクセスには地域差がある。
社会保障制度の問題点とナショナルセンターの取り組み
給付水準の低さ、年金の物価スライドの不十分さ、医療・福祉サービスの資金不足、国内避難民への支援不足が課題だ。労働組合は、年金・社会保険基金への適切な拠出、加入者の権利保護、家族・子どもへの支援拡充、必須医療サービスの無料化を訴えている。また、社会的リスクの個人転嫁にも反対している。
社会保障制度見直しの動向
改革は財政の持続可能性やサービスのデジタル化、EU社会政策との連携強化に重点が置かれている。年金改革や社会扶助の対象絞り込みも議論されており、労働組合では連帯強化と社会的排除防止、戦後復興が緊縮財政ではなく高い社会水準につながることを強調している。
