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連邦公務員の大量解雇を巡る2つの裁判

2025.06.03掲載

5月16日と23日のワシントン・ポストは「最近の2つの裁判で、国家安全保障を理由とする大量解雇については議会の承認、試用期間中の公務員解雇についても最終的には議会の承認が必要との判断が示された」と報じた。

16日の報道は「ワシントンDCの連邦巡回控訴裁判所は3月に出された国家安全保障に関する政府省庁公務員との団体交渉権と団結権を破棄する大統領行政命令を停止するとした4月の連邦地裁判決を無効とすると判決」と報じ、無効判決の理由として「政権は訴訟結果が出るまで実施を待つとしており、地裁停止判決が国家安全保障に関する大統領特権を侵害することで修復不能な被害を及ぼす。この点は議会だけが関与するものであり、司法が国家安全保障に過度に介入することには問題があると言及した」と伝えた。

DC控訴裁判所は3名構成、判決賛成の2名が共和党、反対が民主党任命の1名だが、訴訟は財務省や国防省、退役軍人省、司法省など37省庁に組合員を持つ国家財務従業員組合(NTEU)から提訴された。連邦公務員労働法では国家安全保障に関する一次機密、対敵情報、捜査活動に携わる省庁は適用から除外できるとされている。

トランプ行政命令には食品・薬品局や土地管理局、連邦情報委員会、疾病予防センターなども含まれているが、NTEUは「これら省庁には直接的な国家安全保障との関係はない」と述べている。トランプ政権は政府効率化省を主導するイーロン・マスク氏の下、激しい公務員削減を進めている。

他方23日の報道では、2-3年の試用公務員解雇に関する北カリフォルニア地区地裁の判決が紹介されたが、同地裁は5月9日にトランプ命令への2週間停止判決を出しており、今回判決は訴訟問題が解決するまでは当初判決を延長すると述べつつ「大統領がこのような大規模変更を行う際には議会の承認が必要となろう」との見解を示し「大統領は各省庁の重要方針に決定権を持つが、議会が法律を定めて省庁を創設、資金を供給、任務を付与する。議会の指示なしに大統領が大幅な組織改編を行うことはできない」とした。これにより行政命令の対象となる22省庁での解雇停止が延長されるが、政権は最高裁に上訴の方針にある。なお同地裁はイルストン判事一人だが、任命党派は明らかでない。

この訴訟は4月28日、アメリカ最大の連邦公務員労組、アメリカ政府従業員連合会(AFGE)と11のNPO、カリフォルニア、テキサス、イリノイなど6州の政府組合から出されたが、24,000名の試用公務員が解雇されたが、別の裁判では16,000名が不法解雇とされた。
解雇についてトランプ政権は「議会承認は必要なく、司法が過度に介入した。訴訟に対抗するには機密文書の開示が必要となる。この判決は政府省庁内で大規模な人事異動を行う進め方について、トランプ大統領にその権威が欠けているとする異常な見解に立っている」と反論している。

以上