2016年 イスラエルの労働事情
2016年9月28日講演録
イスラエル労働総同盟(HISTADRUT)
Mr.モシェ・フリードマン
イスラエル国防軍労働者組合 会長
Mr. アディール フリードマン
イスラエル国防軍労働者組合 局長
非正規雇用の分野は、従来の清掃業務、保守や整備、民間警備会社に加えて、教師、ハイテク企業などの新しい分野が出てきており、低賃金や雇用の不安定さ等の現況報告があった。そのうえで、公共サービス部門の非正規労働者に関する協定締結、契約労働者・派遣労働者の権利に関するゼネストの表明(ストは回避、契約労働者の権利に関する全国協約の締結)等、労働組合の取り組みの事例を紹介した。
HISTADRUTの概要
イスラエル建国の28年前、1920年に創設された、イスラエルで最も歴史のある最大の労働組合で、あらゆる経済セクターから70万人の組合員が加入している。
イスラエルの労働市場
労働市場の中で、失業率は年々減少し、現在の失業率は4.8%と、ここ20年で一番低くなっている。
- ・労働力参加率も増加傾向にある。
- ・雇用率は68.6%で上昇しているが、アメリカや日本、スイスと比べるとまだ低い。
- ・パートタイム労働者の雇用率は15.9%で、他のOECD各国に比べると割合が低い
イスラエルの非正規労働者
非正規労働とは、主に派遣労働者のことを指している。厳密には、働く会社とは直接的、安定的な契約を持たない労働者のことである。
- ・民営化と、公共サービスのアウトソーシングの結果、非正規労働者が増大
- ・官民セクターにおける正規労働者の減少と、新しい形態の不安定雇用の増加
- ・非正規雇用の分野と種類の拡大
- ・権利の侵害と搾取の可能性の増大
アウトソーシングと非正規雇用の拡大
最近の非正規雇用の分野は以下の通りである。
- 〇「従来の」非正規雇用の分野:
- ・清掃および保守・点検・営繕
- ・民間警備(イスラエル特有)
- 〇「新しい」非正規雇用の分野:
- ・教師
- ・幼稚園教諭
- ・ソーシャルワーカー
- ・IT
非正規雇用増加の影響
非正規雇用が増加していることで、以下の影響が出ている。
- ・低賃金と高い不安定性
- ・団体交渉権と団体行動への侵害
- ・人的資本と職業訓練への投資不足
- ・勤労世帯間の不平等と貧困の拡大
- ・公共部門内での知識・技術の継承が困難
非正規雇用に関する統計
この問題に関する確実なデータは不足しているが、推定では以下の通りである。
- ・30~40万人の労働者が派遣労働者として雇用されている。
- ・全労働力の10%が非正規雇用であり、先進国では最も高い数字となっている。
- ・非正規労働者の3人に1人が公共セクターで働いている。
非正規雇用に対する労働組合の取り組み
労働組合の取り組みは以下の通りである。
- ・2012年 – 公共サービスの非正規労働者に関して、先鞭をつける初めての協定
- ・2015年 – イスラエル史上初となる、契約労働者の権利に関する初めてのゼネスト実施を表明
- ・2015年7月 ― 契約労働者の権利に関する初めての全国的な協定
公共サービスにおける正規雇用へのロードマップ
正規労働者と契約労働者間の権利の平等化 - ・2016年 – 医療業界の労働者数千人をインソーシングして公立病院に雇用
最低賃金に関する取り組み
最低賃金は、この8年間で25%の上昇を得た。この成長率でいけば、2018年には最低賃金が7ドルを超えるのではないかと考えられる。
- ・2013~2014年:効果的な最低賃金引き上げ運動
- ・2015年:最低賃金に関する新たな合意と立法

組織としてのさらなる活動
HISTADRUTとして、今後以下のさらなる活動を目指す。
- ・関連するデータの収集
- ・すでに締結されている協定の実施の確保
- ・非正規労働者に対する法的保護の拡大
- ・現在のアウトソーシング・プロセスに反対し、可能な限りインソーシングを推進