2022年 コロンビアの労働事情

2022年8月5日 報告

 国際労働財団(JILAF)ではコロンビア労働組合役員を招へいし、労働を取り巻く最新情報の共有や日本の労働組合の特徴、労使関係と生産性運動、労使紛争未然防止の取り組み労働委員会の活動について学ぶためのプログラムを準備作成した。しかし、新型コロナウィルスの影響により来日交流が困難となり、「オンラインプログラム」による取り組みとなった。従来の「海外の労働事情を聴く会」も開催が不可能となったことから、今回はナショナルセンター・参加者から提出された資料に基づき、参加者との意見交換や外務省、JETRO、JILAFの資料を参考にまとめたものである。

ナショナルセンター コロンビア労働組合連盟(CTC)

1.基本情報

 コロンビア共和国は、南アメリカの北西部に位置しブラジル、ベネズエラ、エクアドルと国境を接し太平洋、大西洋に面し国土は114万平方㎞で日本の約3倍、人口5160万人を有する共和制国家である。首都はボゴタ、言語はスペイン語、宗教はそのほとんどがカトリック教徒である。混血75%と白人20%アフリカ系や先住民など多様な民族と文化、環境にある。
 立憲共和制をひき元首は大統領の二院制となっている。左翼武装勢力や麻薬密売組織との長年の戦いが国力を衰退させたが、その後の和平交渉やアメリカとの協力による麻薬組織の一掃作戦は徐々に実を結びつつある。労働組合に対する締め付けは厳しく、多くの労働組合員と役員が国軍によって暗殺されている。近年はアジア太平洋地域との政治経済関係強化を目指してアジア諸国との関係を強化している。
 経済指標は、実質経済成長率△6,85%、名目GDP総額2715億ドル、一人当たりのGDP5366ドル、失業率15.18%、物価上昇率2.52%となっている。貧富の差は大きく国民の3割以上が貧困層となっている。
 主要産業は農業でコーヒー・バナナ・切り花・じゃがいもなどがあり、鉱業では石油・石炭・金・エメラルドが採掘されている。日本との貿易関係は、日本から自動車・鉄鋼・ゴム製品・農業機械等を輸出し、コーヒー・切り花・石炭・石油を輸入している。
 ナショナルセンターは最大組織の労働者統一連合(CTU)とコロンビア労働組合連盟(CTC)で、ITUCに加盟している。

2.労働事情

 失業率は高くその背景として、組合組織率が低く労働者を守るための労働運動が展開出来ない、労働省が企業の要請に基づく大量解雇を認めている、職業訓練のプログラムがない、人権侵害や労働者を侵害する労働改革が存在する。加えて、パンデミックによって失業者が急激に増大している。また、政府や使用者側は労働組合を敵視しており、非組合員を様々な制度によって優遇して組合員との格差を拡大させている。
 経済の回復が遅れ雇用の回復も進まない状況が続き、労働者を取り巻く環境は悪化し続けている。パンデミックによる外出制限は仕事や生産方法に変化をもたらし、使用者側はテレワークの有効性やコストの削減に注目して労働者の権利や生活を脅かしている。最低賃金、社会保険料、特別負担金、年金などが多くの企業では定められた労働規定の水準を満たしていない。今後、パンデミックなどいくつかの危機が去った後、フォーマルセクターの雇用を増やし、労働者に質の高い雇用を提供することが新しい政府に求められている。

3.最近の労使紛争の状況

(1)労働争議の概要

 国家開発計画第194条、政令1174号、労働省通達049号の施行や新型コロナウィルスに対する政令により労働契約が一方的に変更され、労働者の権利が大きく侵害されたことにより多くの労働裁判所への提訴がなされている。
 具体的には

  • 労働基本権の侵害、労働協約違反、ハラスメント、組合員と組合役員への迫害
  • 正規雇用から請負、委託契約への変更
  • 労働協約の内容の改悪
  • 職業病や労災が原因の解雇

 などである。

(2)労働争議の内容

 コロンビア政府は多くの場合、憲法制度、裁判の判決、国際的裁定を守らない。新たな政令や通達は、労働者の権利を侵害するためのものであり、テレワークに対する時間給の取り扱いを認め、給料の15%を社会保障かクーポンの配布に変更出来、従業員の傷病に対して使用者は労働省への申請で解雇が可能になるという内容である。
これらに対して、2020年ナショナルセンターは社会セクターの支持を得て全国ストライキを実施、政府の一方的な行為や労働者への権利の侵害に対して抗議行動を起こした。
 全国ストライキ委員会は、政令1174号や通達049号の廃止を要求、非合法な武装勢力による人権侵害や治安部隊の暴力反対を訴えた。違法な解雇についてILOに提訴している。アメリカ人権委員会はコロンビアへ調査団を派遣、この実態をコロンビア大統領に報告して人権保障について勧告を行った。
政府はこれらに対して国土の安全を確保せず、社会的指導者・人権指導者・労働組合役員・先住民・社会活動リーダー・若者に対して強い弾圧を加えている。

(3)労働争議の結果

 現在コロンビアでは、政府に対して労働者階級の闘いに尽力した労働組合リーダーの死亡に対する訴えの結果を待つとともに、全国民の状況を改善させるための話し合いの場の設置を求め全国レベルでのデモ活動を展開している。加えて、政令1174号及び通達049号の廃止要求と、新たな労働協約の統一に関する通達の発令を待っている。
新政権誕生後、国民生活の質の改善のため政府との良好な関係の構築と、懸案事項である労働法令の制定を実現し労働者の権利全般を保障する事を目指している。

4.労働組合としての新型コロナウィルスの対策

 経営側はパンデミック以降、手洗い場の設置やデジタルカードによる出退勤管理、感染隔離措置とソーシャルディスタンス、公共交通機関での人数制限などを実施。
 労働組合としての特別な対策は行っていないが、コロンビア銀行従業員組合(ACEB)では、会社に対してリモートワークを行っている従業員を事業所での勤務と同様の取り扱いにすることを要求しこれを勝ち取った。