2016年 スイスの労働事情
2016年9月28 講演録
スイス労働総同盟(SGB)
Mr.ルカ・チリリアーノ
中央執行委員兼国際局長
Ms.フランチスカ・テレシャ・ベンダー
リサーチ・アシスタント
パートタイム労働者はかなり多く、雇用者の36%を占める。一方、無期契約の雇用が多く、フルタイム労働者との均衡処遇も法で定められており、必ずしも不安定雇用とは限らない。一方、フルタイムで働きたいという人が増えてきており、パートタイム労働を減らすと同時に、法定労働時間の35時間未満への短縮が課題になっている。有期契約については、有期の契約を何度も更新する「連鎖契約」が禁止されている。派遣労働については、強制的な団体協約が当該産業の全ての労働者に適用されている。非正規の分野で、オンデマンド・ワークは未解決の問題が多い等、スイスにおける非正規雇用に関する法的規制の現況や取り組み課題について紹介した。
経済状況
失業率

2014年の失業率は4.5%(ILO)と、他のヨーロッパ諸国に比べて低い。雇用率は80%で、ヨーロッパの平均より高くなっている。
非正規雇用の法解釈
非正規雇用は、以下に分類できる。
- 〇パートタイム雇用
- ・必ずしも非定型労働や不安定労働とは限らない
- ・最低賃金要件と非差別規定がある
- ・不完全雇用の場合がある
- ・不定型労働や不安定雇用との組み合わせの場合もある(例:パートタイムかつ有期)
- 〇有期雇用
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- ・期間限定の契約
- ・続けて何度も有期雇用を更新していく「連鎖契約」は禁止されている
- 〇派遣労働
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- ・派遣会社が顧客企業に派遣する目的で雇用する労働者のこと
- ・賃金は、強制的団体協約によって規制されている(最低月額4,300フラン)
- 〇オンデマンド・ワーク
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- ・雇用者は使用者の要求に応じて働く(通常は直前の通知による)
- ・給与は勤務時間に拠り、一定していない
- ・待機時間にも賃金が支払われなければならない(通常10%)
パートタイム雇用
スイスでは、雇用者の36.3%(EU28カ国平均19.6%)、165万3,000人がパートタイムで働いている。
- ・そのうち20%は不完全雇用
- ・不完全雇用者のうち73%は女性
- ・フルタイム雇用を探す不完全雇用者の割合は増加している。
→対策として、週労働時間を減らすべきとして、運動している。
(まずは35時間に、長期的には30時間にすることを考えている)
有期雇用
雇用総数に占める期間限定契約を結んでいる雇用者の割合は、スイスはEC平均をやや下回っている。
派遣労働
派遣労働者は最近増加傾向にあり、以下のような課題がみられる。
- 〇資格と能力のミスマッチ
- 〇本当に正規雇用への足がかりになるのか
- ・高齢の派遣労働者の割合が増加
- ・人材派遣会社で働いた1年後に16%が失業
- ・正規労働者より高い賃金ではない
- ・4年以上派遣会社で働く労働者は10%にすぎない
- 〇規制レベルが低い
- ・人材派遣会社の営業許可は無期限
- ・許可発行後はほとんど監督が行われない
短縮労働政策
金融危機の間に導入された政策であり、企業は従業員の就労時間を短縮し、その逸失所得の大半は政府の保険で補填する。使用者の総賃金費用は減少すると共に、雇用者の賃金は保険で保護される。

- ・2009年にピークに達し、対象者は6万7,000人に及んだ
- ・反循環的効果(反循環政策:不況時の財政赤字を好況時の黒字で補填する政策)がある