2012年 ルーマニアの労働事情
ルーマニア自由労働組合同盟(CNSLR-FRATIA)
Mr. ニコライ・バイカン(Mr. Nicolae Baican)
青年委員会主席副委員長
Ms. シモナ・フロンチナ・タツレスク (Ms. Simona Florentina Tatulescu)
イアロミツア郡PECO独立自由労働組合(石油)執行委員
1. 全般的な労働情勢
ルーマニアの労働情勢は、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、欧州委員会との金融協定締結後に政府が課した厳しい緊縮措置の影響を強く受けている。経済改革と不明確な法制により労働市場には不安定な状態・雰囲気が作り出されている。最低賃金は約170ユーロ(約1万7500円)で平均賃金は約450ユーロ(約4万6550円)である。就業率は55%を下回り、実労働人口は人口のわずか22%を占めるに過ぎない。人口1900万人であるのに対し、労働者は420万人、年金生活者は600万人である。労働力の海外移民により(200万人以上のルーマニア人が外国で合法的に働いている)、失業率は比較的低い(7.5%)。こうした雇用情勢の影響を最も受けているのは若者で、その失業率は19.5%に達している。
2.労働組合が現在直面している課題
- 労働法制の改悪
- 結社の自由と団体交渉に関わる労働組合権の縮小
- 組合組織率の低下
- 使用者の代表性と責任の欠如
- 実質的な経済戦略と効率的な資源配分の欠如
- 雇用創出につながる可能性がある投資の必要性
3.課題解決に向けての労働組合の取り組み
- 抗議行動の組織
- 労働法制改正に関する政府との交渉プロセスの強化
- 組合員とのコミュニケーションの強化
- ルーマニア国内の他のナショナルセンターとの共闘関係の強化
- 労働者に無料で訓練や資格取得を支援するEU資金を使ったプロジェクトの実施
- 国際組織(欧州労連(ETUC)、国際労働組合総連合(ITUC)、国際労働機関(ILO))への支援要請
4.労働組合と政府との関係
CNSLR-FRATIAは、労働組合にかなり敵対的な政府との関係の中で、組合員の利益擁護に努めている。CNSLR-FRATIAは政府と全国三者構成評議会の枠内で制度化された関係を持っている。評議会では(1)労働法制(2) 賃金政策(3) 社会政策を中心に協議が行なわれている。
5.多国籍企業の進出状況と労使紛争
年を追うごとにルーマニア国内における多国籍企業の存在は高まってきている。多国籍企業の方針は安価な経費で最大限の利潤を得ることであり、これは労働者に影響を与えている。多国籍企業が活動している主な分野は、自動車、金属加工、エネルギー、対顧客サービス、被服である。
これらの企業での労働争議は通常、賃金交渉が引き金となる利害衝突または経済危機を理由とした企業の人員削減計画などによって生じている。