2018年 ミャンマーの労働事情

2018年11月15日 講演録

ミャンマー労働組合総連盟(CTUM)
MTS

CTUM総務担当

 

1.労働情勢全般

2016年 2017年 2018年(見通し)
実質GDP (%)
(出典元)
5.87%
(statista)
6.72% 6.9%
物価上昇率(%)
(出典元)
  138.29%
(tradingeconomics)
144,17%
民間最低賃金(月額)
(出典元)
45,000 45,000 45,000
労使紛争件数
(出典元)
612
(労働省)
523
(労働省)
316
(労働省)
失業率(%)
(出典元)
7.78% 8% 8%
法定労働時間
(出典元)
8時間/日 44時間/週 時間外/割増率
2倍
休日/割増率
2倍
通貨名:ミャンマー・チャット 1,594.59チャット=約1ドル(2018年11月12日現在)

2.労働法制・社会保障の特徴

 ミャンマーの生産年齢人口は3,500万人、労働力人口は2,200万人である。2011年に労働組合法が初めて制定され、労働者、農民、国家公務員が労働組合を結成した。法律により労働組合結成の権利を獲得したが、ミャンマー労働組合総連盟(CTUM)の組合員数は65,000人であり、組織率は0.01%にしかならない。法律はあるが、経営者と政府が労働組合を認めることを重視していないとわかる。労働組合をつくる際に、政府から法律に含まれない条件を要求されることもある。このような行動はILO第87号条約違反である。
 社会保障に関しては、2012年の社会保障法により6種類の制度ができたが、その内実現しているのは3種類のみである。労使双方に保険料の負担義務があるが、使用者が保険料を支払わない事態が発生している。また、社会保障病院が医師・職員不足で、労働者は別の私立病院に行き、多額の費用を支払って治療せざるを得ない状況がある。

3.労働組合の直面する課題

1 ミャンマー労働組合総連盟(CTUM)の強化

 組織率の数字を見れば、組織の拡大が必要なことは明らかである。知識啓発事業を効果的に実施するには訓練を受けた講師が必要であるが、現在、講師育成の最中で、組合員の内、講習に参加できるのは10%にすぎない。組合費は月額50チャットと少額だが、これさえ支払っている組合員は30%にすぎない。組合財政を長期的な視点で考えられない状況にある。

2 労働法が守られない職場

 労働者を守る労働法が実施されていないため、賃金、休暇、安全・衛生など労働者の権利が失われている。これまですべて国営で行われていた事業が民営化される中で、解雇問題も起きている。使用者は労働組合を解散させるために、労働組合のある工場に資材を回さないなど、さまざまな理由をつけて人員削減や配置転換、さらには工場閉鎖をする。
 公務員には国家公務員法が存在するが、法律に基づくのではなく、上部の命令で業務がおこなわれるために、労働者の権利が守られていない状況である。
 外資系企業の参入が増えている。特に、中国系、韓国系の企業はミャンマーの労働法を全く守っていない。労働組合幹部を狙い打ちにして解雇している。ある韓国系のかつら製造工場では、組合リーダーと執行委員62名を解雇した。この内の1名は前回のJILAF招聘プログラムの参加者である。これに関する審議は行われたが、7ヵ月経ってもまだ復職できず解決の道筋がついていない。また、ミャンマーで工場を開設するには労働省の管轄下にある支署から工場許可証を受ける必要があるが、ある中国系企業はこのようなプロセスを一切守らずに勝手に工場を開設している。
 オルガナイザーは現地の地方労働組織と協力して、労働契約書の締結と監視を行っている。本来、労働人口庁に監督責任があるのであるが、監督業務はほとんど行われていない。実際に問題が起きた時に監査が入るが、労働者のせいにされることが多い。

4.CTUMの対応

 政府、使用者、労働者からなる労働条件の向上に向けた三者構成会議に参加している。三者構成会議では、最低賃金、社会保障、福利厚生、安全・衛生、移民労働者などのテーマで協議をしている。CTUM以外の組合は連合体ではなく、産業、企業レベルの組合なので、CTUMが組合代表となっている。三者会議参加に際しては、労働組合どうしで意見の調整をしている。労働者どうしで互いにめざしているものが同じなので、衝突はない。