2016年スリランカの労働事情
スリランカ・ニダハス・セワカ・サンガマヤ(SLNSS)
マリー・ニローシャ・ムトゥワディジ
スリランカ保険組合副書記長
1.当該国の労働情勢(全般)
2014年 | 2015年 | 2016年(見通し) | ||||
実質GDP(%) (出典元) |
7.4 (中央銀行年次報告書) |
4.8 (中央銀行年次報告書) |
2.6(2016年第2四半期まで) (センサス統計庁) |
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物価上昇率(%) (出典元) |
3.3 (中央銀行年次報告書) |
0.9 (中央銀行年次報告書) |
3.6(2016年第1四半期まで) (センサス統計庁) |
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最低賃金 (時間額・日額・月額) (出典元) |
□時間( ) □日額( ) □月額(9500.00ルピー) (賃金委員会) |
□時間( ) □日額( ) □月額(9500.00ルピー) (賃金委員会) |
□時間( ) □日額( ) □月額(10000.00ルピー) (賃金委員会) |
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労使紛争件数 (出典元) |
2,602件 (労働省年次報告書) |
1,561件 (労働省年次報告書) |
955件(2016年7月31日まで) (労働省) |
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失業率 (出典元) |
4.2 (中央銀行年次報告書) |
4.7 (中央銀行年次報告書) |
4.2(2016年第1四半期まで) (センサス統計庁) |
法定労働時間 (出典元) |
8時間/日 (労働省労働基準局) |
45時間/週 (労働省労働基準局) |
時間外/割増率 通常賃金率*1.5 (労働省労働基準局) |
休日/割増率 通常賃金率*2 (労働省労働基準局) |
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- 最低賃金
各労働組合はスリランカ政府に対し、2016年に全国最低賃金(ナショナル・ミニマム)を導入する政策決定を行うよう要求している。
以前の最低賃金は、業界ごとに賃金委員会が個別に決定していた。 - 不安定雇用
変化する労働情勢にあって、不安定雇用の雇用機会が増加している。
私たちは労働組合として、不安定な非正規雇用に関連する次のような問題に対し、解決策を見出さなければならない。
- 不公正な労働条件
- 雇用保障の欠如
- 低賃金
- 社会保障給付の欠如
- 労働法の不適用
- 3D(Dirty 汚い、Dangerous 危険、Difficult 困難)の仕事
- 組合化の未達
- スリランカのインフォーマルセクターの状況
雇用構造 セクター 雇用 % フォーマル経済 320万人 37.5 インフォーマル経済 530万人 62.5 総計 850万人 100
スリランカの外貨の大部分を稼いでいる210万人の移民労働者も、インフォーマルセクターに分類される。
スリランカの法令集に載っている労働法は極めてしっかりしたものだが、インフォーマルセクターは全く対象になっていない。
現在、自主参加型の社会保護制度はいくつか実施されているが、加入が強制ではないことが大きく響き、加入レベルは依然として低い。 - インフォーマル経済に関するSLNSS政策
私たちは労働組合として、インフォーマル経済全体をフォーマル経済に全て移行できるとは考えていない。
とはいえ、インフォーマル経済のできるだけ多くをフォーマル経済に吸収しようと懸命に努力している。
しかし当面の目標は、労働者の組織化を進めて、インフォーマルセクターを強化することである。
2.労働組合が現在直面している課題
- 国内一律の最低賃金(ナショナル・ミニマム)の導入
- 民間セクターの雇用者を対象とした年金制度の導入
- 産休給付の格差是正
- 基本給への生活費手当の追加
- 常勤職相当の仕事への契約労働者の雇用の非合法化
- すべての労働者に共通の定年の導入
3.その課題解決に向け、どのように取り組もうとしているのか。
抗議集会や会合、教育プログラムを通じて、政府に圧力をかけて上記の分野すべてに対応する法律を整備するよう強く訴えるキャンペーンを行っている。
また、全国労働諮問会議(労働・労使関係省の下に置かれた三者機関)をプラットフォームとして利用し、各種の課題解決に取り組んでいる。
4.その他の課題
- 使用者の反組合的な態度
- 組合のナショナルセンターを確立する能力の欠如
- 組合の多さ
- 若年労働者の組合に対する魅力の低下。
セイロン労働者会議(CWC)
スガンティ・シヴァィンガム・ナダラジャー
CWC女性コーディネーター
1.当該国の労働情勢(全般)
今日、スリランカでは労働者の多くがインフォーマルセクターに従事しており、このような労働者の数は日々増加する自営業者も含まれている。とりわけ、私の所属する労働組合が深く関与しているプランテーション部門では、家内労働者としての雇用を求める労働者が多数存在している。国内のみならず、中東地域をはじめとした国外での家庭内労働者に起因する問題は、私たちが抱える懸念事項の一つである。私たち労働組合はスリランカ政府と協調し、女性労働者が大多数を占める上記部門に存在する弊害の軽減に努めている。
2.労働組合が現在直面している課題
私たちCWCは1939年からプランテーション労働者の代表を務めている。その取り組みとして、私たちは労働者の生活の質の向上に力を入れており、市民権の獲得という大きな功績も残した。
現在、地域プランテーション企業は、2015年4月から保留となっている新しい団体協約の締結に対して消極的な姿勢を見せている。紅茶の主要顧客地域である中東の情勢が紅茶市場の低迷を招いているというのが彼らの主張である。
3.その課題解決に向け、どのように取り組もうとしているのか。
私たちは、労働省を介したスリランカ政府への揺さぶりとロビー活動を通してこの問題に介入している。また、地域プランテーション企業の重役らとも対面し、労働者の待遇改善を保証する合理的な協定の締結についても圧力をかけている。
4.その他
プランテーション労働者が受給できる出産給付金に格差が存在している。出産給付金、具体的に言うと有給出産休暇の支払額は、政府部門や民間部門よりも低い額となっている。全国労働諮問委員会を通してこの問題を訴えているが、具体的な解決策には至っていない。
スリランカ全国労働組合連盟(NTUF)
リランティ・クマリ・トゥヤデニヤ・ムディヤンスレー
移民労働者戦線財務担当/法律アドバイザー
1.当該国の労働情勢(全般)
スリランカの総人口は2,000万人、労働人口は700万人であり、主要な雇用セクターは内需関連である。インフォーマルセクターの雇用に関する規則や規制はない。また、インフォーマルセクターは都市部の雇用の大部分を占める一方で、農村の職場は生産性の低い農業セクターに甘んじている。2009年以降、インフォーマルセクター雇用率は62.1%となっている。
非正規雇用は、家内労働者、移民労働者、露天商人などが定義されている。こうした労働者は組織化して自らの権利を要求すべきである。スリランカでは、労働組合がこうした労働者に知識と経験を伝えるプログラムや研修プログラムを行っている。
2.労働組合が現在直面している課題
- 登録義務化を通じた労働組合に対する制限
- 組織率の低さ
- 組合費の少なさ
- 組合費の徴収の難しさ
- 教育や研修、情報の共有、組織化および効果的な団体交渉といった活動不足
- 労働組合の統一と連帯の不足
- 経済の構造的変化と調整の圧力
- アジア経済危機
- 社会経済政策の自由化、民営化、グローバル化
- コスト削減による競争力強化
- 雇用および所得保障の低下
- 不平等、貧困および失業の増加、インフレ、為替レートの変動
3.その課題解決に向け、どのように取り組もうとしているのか。
- 抗議、ミーティング、意識啓発プログラムへの積極的な関与
- 全国労働諮問委員会への参加と貢献
- インフォーマルセクターとフォーマルセクターのギャップを埋めるための熱心な取り組み
4.その他
わが国の労働法のもとでは、65%の労働者がインフォーマルセクターの仕事――耕作者、露天商人、チェーナ(焼き畑による農耕民)、家内労働者、タクシー運転手など――に従事している。このセクターでは契約条件や労働条件の規制がなく、終身雇用もない。
特にプランテーション・セクターでは、団体協約は失効しており、今なお労働組合と政府の間で話し合いが進められている。
しかし、インフォーマルセクターとは異なり、フォーマルセクターの雇用者は強力な労働法の管理の対象となっており、終身雇用、ボーナス、休暇その他の給付を受けている。今後はインフォーマルセクターの労働条件を改善しなければならない。
1スリランカルピー=0.787円 (2016年12月2日現在)