2021年インドの労働事情

2021年6月11日 講演録

インド労働組合(BMS)

  • BMSアッサム州会長・オイルインディア労働組合副事務局長
  • BMS中央執行委員

インド全国労働組合会議(INTUC)

  • 光生ミンダ・アルミニューム労働組合書記長
  • 光生ミンダ・アルミニューム労働組合財政担当
  • ITC, ILTD&GLT工場従業員組合事務局長

インド労働者連盟(HMS)

  • 全国インド・ヤマハモーター労働組合職場委員
 

<労使紛争事例の紹介>

 紹介する事例は、2017年に某企業の工場で発生し、ストライキに至ったというもの。
 紛争の原因は管理職による契約社員への嫌がらせと暴力であった。この問題への対応について労使協議が持たれたが、使用者側がとった行動は契約社員の解雇であった。
 労働組合は契約社員の復職と暴力をふるった管理職の処分を求め、使用者側との協議を行ったが解決が見通せず、ストライキに突入した。ストライキ5日目になって、労働組合は使用者側との話し合いの上、ストの解除を宣言した。
 この紛争の結果、労使は、地区労働委員同席の下で、規範(norm)を作成し署名した。規範の内容は、この種のハラスメントが再発した場合は、使用者側は責任者に対して直ちにアクションを取るというものであった。これは紛争の成果と言える。しかし、他方でストを指導したことの責任を問われ、5名の組合員が解雇されるとともに、20名が停職処分を受けた。さらに、全組合員が、ストに参加したことによる賃金控除(12日分)の対象となった。
 今回の紛争の直接の背景とまでは言い難いが、労使関係にとっての重要な側面としてあるのは労働組合の弱体化である。紛争が起きた企業では従業員が約5000人いるが、組合員は約1000人しかいない。組合員よりずっと多い約2500人が非正規労働者である。5000人の社員全員が正規雇用で労働組合員という時代もあったが、今では、正規雇用以外に、6か月契約、1年契約、3年契約という3つの契約形態が存在し、労働組合が弱体化してしまった。さらに、契約労働者は賃金が低く、雇用も安定しないため、紛争の火種を生じさせることにつながっている。