2013年 ウクライナの労働事情
ウクライナ自由労働組合総連盟(KVPU)
ナタリア クーハル(Ms. Natarya Kukhar)
独立ウクライナ鉱山労働組合 社会労働関係部長
1. ウクライナの労働情勢全般
ウクライナの人口は4490万人で、公式発表された失業者数は42万2100人(2013年9月現在)、失業率は1~1.5%である。政府は、新規雇用創出奨励の仕組みの作成を計画しているが、実質失業率ははるかに高い。国際労働機関(ILO)の算出方法によれば、失業者数は176万人で、失業率は8%。また、国外で労働しているウクライナ人は約600~700万人となっている。政府は、新しい雇用創出を促進する方策を考えており、国立職業安定センターにおいて新たな雇用に関する統計を発表した。それによると、必要とされる雇用比率は、加工部門労働者22%、金融専門家1.5%、国家公務員13%となっている。部門によって使用者は、商業、輸送サービス、公共交通機関などで非正規雇用を広く行なっている。
ウクライナの平均賃金は、月額400ドル、首都では月額650ドル、西部では月額250ドル、最低賃金は月額130ドルである。最低年金額は月額120ドルである。労働時間は公式的には1日8時間だが、非正規雇用部門では時には12時間を超えることもある(公共交通機関の運転手など)。
2. 労働組合が現在直面している課題
現在労働組合が直面している大きな課題は、[1]労働者の権利の侵害と使用者の責任の軽減が含まれる新『労働法』を国会で採択させないこと[2]労働組合を受け入れない民間企業に労働組合を設立する活動を行なうこと[3]石炭および採掘部門における鉱山労働者の安全を確保し、職場での負傷や死亡事故を減らすための技術の導入とそのための費用支出について企業側と交渉すること――である。
ウクライナの『労働法』は、ILOのイニシアチブによって建設的な改正案が示されたが、その後、政治情勢の変化の中で、この改正案に手が加えられた。その結果、われわれには受け入れがたい劣悪な法案となった。そのひとつが、ストライキに参加した者は解雇され、ストライキによる損失を労働者が弁済しなければならないというものである。そこで、ウクライナ自由労働組合総連盟(KVPU)は、積極的に撤回闘争を進めた結果、修正が行なわれたが、それでもKVPU にとっては受け入れがたいものである。
現在、鉱山では、出来高払い制で働く労働者もいる。これらの労働者は、より多く稼ごうとするために、安全を無視し、ガス探知機の警報が鳴らないようにする者もいて、それが事故につながっており、多くの犠牲者を出している。これは根本的に重要な問題である。
3. 課題解決に向けた取り組み
新『労働法』の問題については、労働法案の脅威についての解説を行なっている。KVPUの指導者たちが、記者会見や、労働組合の利益のロビー活動をする国会議員、企業雇用者との面談を行なうなど、世論形成に努めている。
労働組合に否定的な企業に対する取り組みとしては、当該企業で、将来の労働組合指導者や活動家になりうる人物に対し、労働協約の利点を解説している。
石炭および採掘部門の労働者の問題については、KVPUおよび独立ウクライナ鉱山労働組合のリーダーに対して研修を実施している。以前は最新の安全知識を得ることができていなかったが、今リーダーたちは得た情報を各企業の労働者に伝えている。
4. その他労働状況に関する問題
ウクライナでは失業手当があまりに低いため、正式に失業者の登録を受け、失業手当を受給しながら正規の就職口を探すことをしない。こうした社会的保護を受けずに、インフォーマルな労働をして少しでも高い賃金を受け取ることを選ぶ労働者が多い。その結果、国としては、巨額の所得税収入を失うことになっている。現在ウクライナでは、新規雇用創出を奨励するための仕組み作りが推し進められている。