2021年 カザフスタンの労働事情

2021年6月25日 報告

 本報告は2021年6月21日~25日にJILAFが実施した招へいオンラインプログラム(ウクライナ、カザフスタン、ベラルーシ)における、カザフスタンの参加者から報告された「カザフスタンの労働事情」および、同提出関連資料に基づいて作成した。なお、本プログラムにはカザフスタン労働組合連合(FPRK)から3名が参加した。

政治状況

 カザフスタンは、これまでのロシア人住民との共存政策からカザフ人ファースト政策にかじを切っている。これは、海外在住のカザフ人の呼び戻し、カザフ語の重要性の強調、ロシア語の外国語としての位置づけ(つまりロシア語の位置の低下)、キリール文字からローマ字へ移行、ロシア語学校の相次ぐ閉鎖などに現れている。ソ連崩壊前は半分程度を占めていたロシア人は徐々に帰国し、今では人口に占める比率も25%程度に変わっている。同時にイスラム化が進んでいるのも、最近のカザフスタンの変化を表している。
 しかしこれらのナショナリズム的な変化は、政権側の腐敗体質を隠すものに過ぎず、カザフスタンは「政権と癒着したオリガルヒ(新興財閥)支配の国だ」という主張が多くみられる。その証拠に、石油ガス採取業では、民営化を進め、多国籍企業と組んで、豊富な天然資源を海外に販売し、巨額の富が動いていると言う。新首都のアスタナに降り立つと、都市計画に沿って良く整備された都市が広がっている様に驚くが、裏から見ると「必要のない都市建設」に資金を浪費し、人々の生活は貧しいまま取り残されているということだ。
 最近のカザフスタンの特徴は、ストライキの数が増大していることだ。しかもコントロールが効かず、あちこちでストが頻発している。これらのストは、石油ガス採取業を中心に、今運輸や製造業にも拡大している。体制側は、この動きを抑え込もうと様々手を打っているが、成功しているようには見えない。これらのストでは、必ず大幅賃上げと独立した労組の結成と言う主張が行われることが多い。

カザフスタンの労働組合

 現在労働力人口は880万人、その内雇用労働者は670万人、その中でFPRKの組合員は163万8000人を占めている。その組織力は圧倒的だが、他方で独立した労組を作ろうとすると、体制側が弾圧に入るケースが多いと聞く。例えば、2011年5月から12月石油ガス採掘産業の国有化と労働組合活動の自由を求めるストが採掘産業で頻発し、これは2011年12月16日ジャナオゼナの虐殺事件に至る。多くの労働者の虐殺は国際非難を高めるが、体制側は2014年新しい労働法「労働組合について」採択、これによって新しい労組組織を作るのは事実上不可能になった。同時に、体制側はFPRKを含む600以上のローカル組織を閉鎖、2015年には労働コーデックスを採択する。そして2017年には独立労組連合を禁止、これに対し独立労組連合はハンストで抗議するが、逮捕者を多く出しただけだった。例えば、労働者組合ジャナルトは2009年から登録を拒否されている。2018年カザフスタンに対する国際キャンペーンが取り組まれ、ILOもカザフ政府にメモランダムを送る。ILO総会でもカザフスタンの問題は常に議論され、カザフスタンが独立労組を認めない姿勢が糾弾されており、FPRKはITUCからも脱退をせざるを得なくなった。今回、FPRK代表団は、ストが頻発している事実は認めつつ、以下のように述べた。「実際石油ガス採取業で、ストは非常に多い。最近も中国資本が入っている企業でストが起こった。スト多発の理由として、外国人との賃金格差が大きいことが挙げられる。外国の会社は、自国から労働者を連れてきて、彼らには自国の法規に従って、手当が払われているので給料は高くなる。我々FPRKが関与して、70%の紛争は解決している。1600人くらいに対し10~15%の賃金を引き上げ、14の企業で、紛争を解決した。」

紛争解決のシステム

 今回FPRKのプレゼンの中で、紛争の解決システムについて言及があった。社会的パートナーシップを推進するために、国、産別、地域、企業ごとに三者委員会が構成され(企業は2者)、紛争が起こらないことを目指している。この三者構成システムの組成は、職場の労働協約締結数も拡大している。
 このように、労使紛争を止める動きが存在しているが、国際労働運動とは矛盾をはらんだ展開の中にあり、苦闘が活かされていない状況にもある。