2018年 カザフスタンの労働事情
カザフスタン労働組合連合(FPRK)
バカザン アブディライン(Mr. Bakytzhan Abdiraiym)
1.カザフスタンの労働情勢
2016年 | 2017年 | 2018年(見通し) | |
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実質GDP(%) (出典元) |
101.2% (10,509.9USD) |
101.1% (7,714.8USD) |
104% (8,837.5USD) |
物価上昇率(%) (出典元) |
8,5% |
7,1% |
2,2% |
最低賃金 (時間額・日額・月額) (出典元) |
月額 (22,859テンゲ) |
月額 (24,459テンゲ) |
月額 (28,284テンゲ) |
労使紛争件数 (出典元) |
8 |
3 |
データなし |
失業率 (出典元) |
5.1% |
5.0% |
4.9% |
法定労働時間 (出典元) |
時間/日 (8時間/日) |
時間/週 (40時間/週) |
時間外/割増率 (1.5) |
休日/割増率 (1.5) |
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2.カザフスタンの労働法制・社会保障の特徴
2016年1月1日、カザフスタン共和国の新労働法が施行された。労働法規の主要問題は、賃金制度の調整である。賃金とは、労働者の職能、遂行される仕事の難易度や量・質や条件に依存する労働に対する報酬である。
労働者への賃金は、雇用者が適用する賃金制度に従い、労働契約により決定する。賃金ファンド創設の際、月平均賃金の75%以上を占める主賃金には、以下が含まれる。
(1)定額、賃金率及び出来高払いによる賃金
(2)賃金規定及び労働条件に関する支払い(夜間や休祝日勤務、有害及び過酷な労働条件下での労働、規定時間内の坑内移動、労働協約や雇用者命令で定められている、当直方式の業務に対する追加支払い、カザフスタン共和国法「セミパラチンスク核実験場における核実験の被害を受けた市民の社会的保護について」「アラル海沿岸における環境災害の被害を受けた市民の社会的保護について」で定められた追加支払い)
(3)奨励目的での支払い(職業スキルや経歴などに対する割増)
市場経済が発展した国々では、賃金額の決定や推移、物価スライド、支払い方法を含む賃金問題の大半は通常、様々なレベル(組織、産業、地域)で合意書を交わすことで調整されている。カザフスタン共和国においては、労働者の代表の力不足や現行の社会的パートナーシップ制度の形骸化のため、賃金を調整する市場メカニズムが未発達であるため、この分野に国が介入し、一定の保障をすることが客観的に必要だと考えられる。
国の賃金調整の最重要分野の一つが、カザフスタン共和国憲法(第28条)に従い国が保障する、最低賃金額の決定である。カザフスタン共和国における最低賃金額は、毎年「共和国予算」法によって決定される。法律は、最低賃金額には、補償及び奨励目的の追加支払いや、ボーナスその他の賞与は含まれないと定めている。それに関連して特筆すべきは、当該項目に、月給の最低額は必要最低限生活費を下回ってはならないと明記されていることだ。
労働法は、重労働、有害及び(あるいは)危険な労働条件下で働く労働者の賃金も定めている(カザフスタン共和国労働法第105条)。重労働、有害及び(あるいは)危険な労働条件下で働く労働者の賃金は、標準的な労働条件で働く労働者の賃金と比べて高く設定されている。割増賃金あるいは追加支払いの額は、産別合意書で定められている有害度や危険度に従い、労働条件を分類する産業別係数を考慮して、労働協約あるいは雇用者命令で決められる。
(第108条 時間外労働手当)
時間給の場合、時間外労働は、労働契約あるいは労働協約及び(あるいは)雇用者命令の条件に従って増額されるが、労働者の日給(時給)の1.5倍以上とする。出来高払いの際は、時間外労働に対する割増は、定められた労働者の日給(時給)の50%以上を支払う。
この条項は、時間外労働手当について規定している。時間外労働は、労働法第77、78条で定められているように、雇用者が労働者に時間外労働させた際の条件をどの程度実行したかに関わらず、増額されなければならない。
(第109条 祝日及び休日労働手当)
祝日及び休日労働手当は、労働契約あるいは労働協約及び(あるいは)雇用者命令の条件で設定された割増金額以上で、労働者の日給(時給)の1.5倍以上でなければならない。
(第110条 夜間労働手当)
夜間労働は、労働契約あるいは労働協約及び(あるいは)雇用者命令に従い、毎時増額されるが、労働者の日給(時給)の1.5倍以上でなければならない。
(差別禁止の原則)
カザフスタン共和国の労働法規は、同等の(つまり時間、強度、難易度が等しい)労働に対する同等の支払いを保証している。また、性別、年齢、人種、民族、言語、財産及び職務状況、居住地、信仰、信条、国籍、社会団体への参加、その他労働者の職務上の能力や労働の結果と関係のない事情による、あらゆる差別を禁じている。
3.労働組合の役割と直面している課題
ソ連成立前の130年前ウスペンスキー銅山で初めて組合が結成された。ソ連時代は、ソ連の制度の中にあって、良い面はあった。組織率はほぼ100%であり、社会経済問題の解決に大きな力を持ち、労働者福祉も組合がチェックしていた。労働組合の幹部の影響力も大きかった。NPOなどは無かったし、ナショナルセンターも一つだけだった。
ソ連成立以降は、新しい組合ができるなど、時代は大きく変わった。ソ連時代の組合のあらゆる要素が基礎となっているが、現在の状況は、3つのナショナルセンターが存在し、労働者の50%が組合に入っている。どこに入るのも自由と言うことは自分の組合員と密接な関係を作っていかねばならない。カザフスタンでは、来週ILOの会議が開催されるが、新労働法にアプローチすることになろう。我々は、中央アジアの連合体を作ろうとしており、協同を進めている。労使紛争の未然防止という意味では、昨年ストの前兆が有り、ナショナルセンターが支援にまわり、23項目の要求後に13の項目が認められた。日本の連合はカザフスタンのナショナルセンターと似た立場をとっていると考えている。