2012年 ニジェールの労働事情

2012年9月28日 講演録

ニジェール労働組合連合(USTN)
ラマトゥ・ママン・アリ(Ms.Ramatou MAMAN ALI)

ニジェール労働組合連合(USTN)総務財政副部長

 

1. 当該国の労働情勢(全般)

 ニジェールの人口は約1627万人、その内50%は女性(約814万5000人)、49.2%は男性と推計されている。人口の約8割(1210万人)は農村部に、2割は都市部に住んでいる。中でも、首都ニアメへの人口集中がみられ、都市人口の約40%が居住している(2010年INS:Institut National de la Statistique国立統計研究所調べ)。ニジェール人の71%(女性の82.9%)は読み書きができない。
 全国には、15万人以上の給与所得者がいる。そのうち、約4万人が公務職員、6万人が契約教師であり、最大の雇用主は、国である。2011年、準公共部門と民間部門では、約5万3000人を雇用した。労働人口の大半は、インフォーマル労働者であり、15歳から64歳の労働人口のうち550万人以上がこのセクターで働いている。
 ニジェール労働組合連合(USTN)は、アフリカ・フランス語圏諸国の独立闘争の指導者によって1957年にコトヌーで設立されたブラック・アフリカ労働組合総連合(UGTAN)を引き継いだ組織である。諸国の独立後、すべての組合連合組織は与党と結びついたひとつの組織に再構成された。
 1960年9月25日にニジェール全国労働者組合(UNTN)が結成された。UNTNの指導者たちは、同時に与党政治局のメンバーでもあったため、労働組合活動は「統合された労働組合活動」と呼ばれた。
 1974年、軍事クーデターがあり一党支配体制が崩壊した結果、UNTNの指導者も後ろ盾を失った。新世代の指導者は、政権に就いた軍の圧力を受け、政治路線を変更して、「責任ある参加の組合活動」という路線を採用した。
 1976年、ナショナルセンターは組織的な理由により、その名称をニジェール労働組合連合(USTN)に変更した。この労働組合活動は、1987年に軍人出身の評議会議長(元首)が死亡するまで続いた。またその後を継いだのは、融和政策を打ち出した軍人議長であった。
 ラ・ボール宣言(注)は、労働組合の指導の下で市民社会全体を支援する一方、複数政党による民主主義を確立するための闘争に関わることとなった。このことは、1991年に全国最高会議を開いたことや第三共和国を成立させることとなった最初の複数政党による選挙の実施に決定的な役割を果たした。
 新しい民主主義の動きは、労働組合活動の均質性を壊すこととなった。最初の分裂は1996年に起こり、以降、その振れ幅は拡大していった。現在、ニジェールの労働運動には、12のナショナルセンターがある。

(注)仏のミッテラン大統領は1990年、仏・アフリカ首脳会議において、経済支援の条件として民主化を義務付けるラ・ボール宣言を発表した。

2. 労働組合が現在直面している課題

労働組合の主な課題は以下の通り。

  1. 労働のインフォーマル化
  2. 非組織化
  3. 労働組合の細分化
  4. 労働者の動員能力の少なさ
  5. 組合費の未収
  6. 労働組合の不十分な研修制度

3. その課題解決に向け、どのように取り組もうとしているのか

  1. インフォーマル労働者の監督と把握
  2. インフォーマル労働者の組織化
  3. 労働組合同士の活発な団結と強化
  4. ディーセントワーク文化の定着
  5. 労働組合内の民主主義文化の定着
  6. 信頼できる選挙を実施して労働組合の代表を選出
  7. ナショナルセンター12組織の団結

4. あなたのナショナルセンターと政府との関係について説明してください。

 USTNは労働者の権利に関して政府が避けて通ることのできない重要なパートナーである。しかし、与党およびすべての政治潮流からは独立している。
 多くの困難を抱えつつも、信頼される労働組合として存在しており、各種評議会などへ代表を出している。また、労働組合間組織(ITN)の枠組みで交渉し、USTNは政府から以下を勝ち取った。

  1. 10%の賃上げ
  2. 電力および水料金単価の引き下げ
  3. 社会保障の保険料上限撤廃と所得税額の引き下げ また、USTNは政府およびILOと、ディーセントワークを国家が奨励するプログラムを実施するための合意文書に署名したばかりである。

5. あなたの国の多国籍企業の進出状況について、また多国籍企業における労使紛争があればその内容についてお知らせください

 ニジェールにおいて、主な多国籍企業としては北部のウラン鉱業部門にアレバ(Areva)、東部の石油にコジェマ(COGEMA)や、CNPCのような中国企業、そして首都にユニリーバ、携帯電話会社(オレンジ、ムーブ、Airtel)などが進出している。
 労働争議はこれらの多国籍企業において、ユニリーバ・ニジェールを除いて繰り返されている。