2015年 ジンバブエの労働事情
ジンバブエ労働組合会議(ZCTU)
ジンバブエ商業労働者組合
バーパラ タニャニワ
委員長
1.ジンバブエの労働情勢(全般)
2013年 | 2014年 | 2015年(見通し) | ||||
実質GDP(%) | 4.4% | 3.7% | 4% | |||
物価上昇率(%) | 2.8% | -0.8% | 6月 -2.81% | |||
最低賃金 | US$246 | US$246 | 経済危機による悪影響 | |||
労使紛争件数 | 504件 | 800件 | 1200件 | |||
法定労働時間 | 7.5 時間/日 | 45時間/週 | 時間外/割増率1.5倍 | 休日/割増率2倍 |
ジンバブエは内陸国で、アフリカの南部に位置している。農業中心の経済で、人口は約3000万人で13の言語が話されているが、憲法で、そのうちの3つ(ショナ、ンデベレ、英語)が公用語となっている。
ジンバブエでは、不安定な雇用となっている非正規労働者を有期契約労働者と呼ぶ。使用者が最低賃金の支払いや社会的保護の提供を免れようと、有期雇用契約が増加している。有期契約労働者は、差別や解雇への恐れから組織化が難しく、無期限契約労働者のような社会保障や退職金などの適用もない。企業の閉鎖が相次ぐ中、インフォーマルセクターも拡大しており、労働人口の85%を占めている。
唯一生き残っている産業は、鉱工業、商業である。ジンバブエには、金、ダイヤモンド、スズ、銅、石炭、白金、プラチナなどの天然資源があり、経済も伸びている。しかし、天然資源が豊かなのに国民が貧困にあえいでいるのは、鉱山や鉱物資源などが眠っている土地のほとんどが政府関係者の所有で、産出される資源が人々の手に渡らず、政府や役人の支配下にあるからである。
最低賃金は、全国雇用審議会で決定される。この審議会の対象産業における平均の最低賃金は246ドル(約2万9690円)になる。
2.労働組合の直面する課題
一番目の課題は、労働市場の柔軟性(不安定化)である。使用者は、労働者を自由に採用したり解雇したりできるよう、労働法の修正を求めて政府に圧力をかけている。また、使用者が労働者の社会保障の負担を免れようとして、多くの労働者が非正規雇用に切り替えられていることも問題になっている。さらに、若者の組織化の問題や、労働組合に加入しようとすると嫌がらせ、制約を受けることなども課題である。
3.課題解決への取り組み
労働条件を改善し、労働法をジンバブエ憲法に適合させるため、現在、労働法制の改革に取り組んでいる。政府に対しては、三者構成の審議会、あるいは対話の場に政府を引き込もうと努力している。この三者構成フォーラムに法的拘束力を持たせるような仕組みをつくろうとしている。
労働市場の柔軟性に対しては、ポスターや小冊子をつくり反対キャンペーンを展開している状況である。
今年、最高裁が通知さえすればいつでも解雇できるという判決を出したために、それ以降、2万8000人以上が解雇されるという状況になってしまった。この最高裁判決に対し、労働組合が反対デモを行った結果、大統領は、議会を解散せざるを得ない状況になり、法律が改正された。そして、解雇された人の復職と、勤続年数1年に対して2週間分の賃金を損害賠償として支払うことになった。今度は逆に、政府がこの法律修正は違憲で認められないとして、訴訟を起こす事態になっている。
4.その他
ジンバブエは、1980年の独立以来、35年間独裁者ムガベ大統領の統治下にある。従って、私たちの労働組合活動も政治的な活動が主なものになる。政治に関与することが、私たちにとっては生死をかけた問題である。政府は、政策に対して意見があるのであれば、労働組合も政党を立てて政治の場で発言すべきだと言う。そこで、ZCTUは1999年に「民主的な変化のための政党」を組織した。党首は、ZCTU元事務局長でJILAFプログラム参加者でもあるツァンギライ氏である。
*1ドル=120.69円(2015年10月23日現在)