2013年 ジンバブエの労働事情

2013年12月13日 講演録

ジンバブエ労働組合会議(ZCTU)
シトコジーリ・スィウェエラ(Ms. Sithokozile Siwela)

副会長

 

グレース・ジコンボレロ・ムファンデ(Ms. Grace Zvikomborero Mupfunde)
女性委員会委員

 

1.ジンバブエの労働情勢(全般)

 今日のジンバブエ経済は脆弱で、主に暴利をむさぼる政治や不平等な富の分配が原因となる共同戦線の崩壊の危険に直面している。工業化の停滞や資金力の乏しい市場といった状況の下、国のリスク要因は依然として高い。これといった雇用創出も見られない中、推定失業率は80%以上と非常に高い状態が続いている。実際、公式統計によれば毎週300人が解雇されているが、経費節減を実施する企業の多くは政府への報告を行なっておらず、実際の数字はもっと大きいと考えられる。
 ジンバブエ労働組合会議(ZCTU)の組合員数は2012年当初18万2058人であったが、同年12月31日の公表時には16万5539人に減少している。経費節減のため、一部部門の事業所での完全操業停止が報告される中、組合員数はさらなる減少が予想される。このような状況は、インフォーマル部門が労働者の大半を雇用していることを意味する。実際、今日では現役労働人口の80%以上がインフォーマル部門に属していると推測される。

2.労働組合が直面する課題

 ジンバブエの労働組合を取り巻く環境は、一部使用者は、組合費を労働組合へ送金することを制限する経済状況の下で、依然として不安定である。公務を除く多くの部門で経費節減、解雇の動きが継続し、労働組合基盤のさらなる縮小につながっている。賃金支払の遅延や未払いも起きている。例えば、ジンバブエ国有鉄道や都市地方自治体では給与支払が数ヵ月遅れとなり、労働組合同様、労働者の権利にも被害が及んでいる。
 2012年から2013年にかけての賃金交渉は暗礁に乗り上げ、仲裁手続きが賃金妥結の中心となっている。仲裁者の裁定した賃上げに一部使用者が継続的に反対しているため、2年以上にわたって賃金審査に関する決定を行なっていない部門もある。賃金は月額150ドルから250ドルまで幅があるものの、現行の月額約600ドルに設定された貧困ラインを下回る。現在の交渉状況には多くの問題が横たわる。透明性や信頼の欠如、経済活動の不振と労働者の高い期待とのギャップ、データ不足、全国雇用評議会の活動範囲や役割の制約、労働組合の乱立などである。
 国内統一政府 (GNU) の時代に労働組合指導者への迫害は軽減されたように見えるが、デモを厳しく制限するなどZCTUの活動を抑圧する『治安維持法(Public Order and Security Act =POSA)』など、非常に厳格で弾圧的な法律の使用が続き、労働組合の行事には警察から規制がかけられている。POSAは労働組合には適用されないとの判例があるにも関わらず、警察は今も命令を無視している。

3.課題解決に向けた取り組み

 ZCTUの研究機関であるジンバブエ労働・経済開発研究所(LEDRIZ)は、「Beyond The Enclave(エンクレーブを越えて)」という本を出版した。これは政府の政策に対する代替案である経済・社会政策を提示するものであるが、受け入れるかどうかは政府次第である。政府がZCTUの提案に着手したならば、ジンバブエは経済的衰退を押しとどめ、必要な雇用を生み出すことができるであろうと期待している。社会対話や社会契約の締結を通じてのみ、必要不可欠な財政規律や優先順位の再検討、支出の質の改善、および政策の対立の調整が国益にかなう方向で実現できると確信している。
 労働者の多くがインフォーマル部門に流れていく状況を認識し、ZCTUはインフォーマル経済の労働者を代表する組織であるジンバブエ・インフォーマル経済会議所協会 (ZCIEA)の設立を支援した。さらに、両組織の連携方法についての覚書も交わした。
 組合費未送金の問題について、労働組合は使用者組織と裁判所の双方に改善を申し入れている。しかし、裁判所命令の発令には時間がかかり、成果は芳しいものではない。一方、関係者への遵守強制に関して、使用者組織は無力に見える。そこで、ZCTUは労働省にもこの状況打開の支援を働きかけている。

4.ナショナルセンターと政府との関係

 国内統一政府(GNU)の時には、消費主導型の成長ではあるものの幾分安定した経済をもたらした。このいわゆる成長は、単に長年の経済崩壊からの回復プロセスに過ぎなかった。しかし、選挙後の経済の動向については誰もが確信を持てない。インフレ率は1.25%、南部アフリカ地域で最も低い数字の一つとなっているが、経済まひの兆候であるマイナスに向かう兆しが見られる。通貨不足のために銀行で行列ができ始めている現在、経済は良い状況とは思われない。インフレ率のマイナス転化の可能性という危険が存在するが、これは成長のストップを意味する。ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線(ZANU-PF)政府は、投資家の持ち分を半分未満とする現地企業優先方針を基盤とするキャンペーンを実施したが、それによって投資の流入に深刻な影響が生じ、さらなる解雇をもたらす可能性がある。労働組合の課題は、組合員の期待に応えるのみならず、難局にうまく対処することを可能にすべく、業務を再構築することである。「新しい」政府は、前政権と合意したあらゆる事柄に関し、新規まき直しを図る考えである。例を挙げれば、合意された『労働法』改革の問題が再び動き始めているが、これは私たちが出発点に戻ったことを意味している。