2017年 ザンビアの労働事情

2017年11月10日 講演録

ザンビア労働組合会議(ZCTU)
アンジェラ・チサンガ

基礎教育教員組合 女性ナショナルコーディネイター

エマニュエル・カサンガ・ズル
中等教育教員組合 副書記長

ミリモ・カポンベ
ZCTU女性委員

 

1.ザンビアの労働情勢(全般)

  2015年 2016年 2017年(見通し)
実質GDP(%)
*(出典元)
2.9%
(中央統計局)
3.6% 4.3%
(財務省)
物価上昇率(%)
(出典元)
    6.3%(8月現在)
(財務省)

*2010年~2014年のGDP成長率は6%を上回っていた。

 為替が非常に不安定な状況が続いている。2013年にはUS$1=6クワチャであったのが、2017年にはUS$1=9~10クワチャと通貨安になっている。市中銀行の貸し出し金利は27%~29%と高い。
2015年の生活状況監視調査報告書によると、ザンビアの人口の60.5%が貧困レベルにある。ジニ係数でも0.65と不平等のレベルが高いことが示されている。
 労働統計を見ると、人口は約1,500万人で、労働力人口は630万人、総就業者数は580万人となっている。全体の失業率は7.4%、若者の失業率は10.5%である。雇用の89.3%がインフォーマルで、フォーマルセクターの被雇用者はわずか10.5%にすぎない。

2.労働法制、社会保障の特徴

 労働関係の法律として、雇用法、最低賃金・雇用条件法、若年者・児童雇用法、工場法、職業安全衛生法、労使関係法がある。
 社会保障に関する制度としては、国民年金制度法がある。この法律は2000年に施行され、公務部門(2000年以降の採用者)と民間部門の両方の労働者に適用される。2000年以前に公務員になったものは別の公務員年金基金法が適用されている。労災補償法はフォーマルセクターの労働者全員に適用される。
 個々の雇用法制について指摘されている欠陥としては、非正規労働に対応する規定の緩さ、雇用関連法の細分化、最低賃金を設定するための協議構造がないことなどが挙げられる。
 社会保障法が抱える課題としては、社会保障法の細分化、インフォーマル経済の労働者の排除、そして、複数の社会保障制度の存在が挙げられる。
 このような問題が指摘され、現在、労働法の改革が進められている。現行法の欠陥に対処するための改革として、非正規化の非合法化、全ての雇用関連法令の調和、最低賃金の設定メカニズムの強化をめざしている。
 社会保障関係では、全ての社会保障を1つの参加に統合すること、インフォーマル経済に対する社会的保護の対象拡大も目ざしている。医療保険に関しては、独自の制度を持っている民間企業もあり、労働協約で追加の補償提供が決められている所も多い。

3.インフォーマルセクター労働者の現状

 全就業者586万人の内、22.3%が有給雇用者、28.1%が自営業者、48.6%が寄与的家内従業者、残りの 1%がインターン、使用者、研修生、ボランティアなどとなっている。寄与的家内従業者とは家業を手伝っている家族の一員である。
 この数字から、ザンビアでは、労働市場の相当部分が家内経済活動、インフォーマル経済、自給農業といった準生産的活動に関わっていることがわかる。
 全有給雇用者の平均収入は2,344クワチャで、ある民間調査機関の試算によるベーシック・インカム・バスケット(4,500クワチャ)を下回っていたという結果が出ている。
 最低賃金は職種により異なり、月額53米ドル~120米ドルとなっている。

4.労働組合の直面する課題と取組み

 ザンビアにはZCTUの他に2つのナショナルセンター、自由労働組合連合(Federation for Free Trade Unions)とザンビア労働組合総連合(Confederation of Trade Unions of Zambia)がある。
 ナショナルセンターだけでなく、産別組織、全国レベルの組合でも細分化が進んでいる。例えば、教職員の組合は5つある。フォーマルセクター労働者の中で組織化されている人が少なく、組合費収入が少ない。組合役員の入れ替えが激しく、団体交渉能力が弱くなっている。
 このような状況に労働組合も危機意識を持ち、統合を進める話し合いが行われている。協力パートナーとの連携により技術的・経済的支援を得て、教育・訓練プログラムを実施している。