2015年 ザンビアの労働事情
ザンビア労働組合会議(ZCTU)
ミシェク・ニャンボセ
副書記長兼地方公務員労働組合連盟委員長
1.ザンビアの労働情勢(全般)
ザンビアの現在の人口は1440万人で、経済活動人口は600万人、総雇用人口は約550万人、失業率は2012年で約7.8%、若年失業率は10%となっている。
ザンビアの中心産業は農業で、農業人口が全雇用人口の52%を占めている。
国民の平均月収は215ドル(約2万5948円)で、国民平均月収を男女別で見ると、男性が約247ドル(約2万9810円)、女性が約156ドル(約1万8828円)である。
GDP成長率は2014年で6.4%、インフォーマル経済における雇用率が84.6%、2010年の貧困率が60.5%となっている。
雇用創出に関連するザンビアの主な政策として、[1]ビジョン2030、[2]国家雇用・労働市場政策(NELMP)、[3]第6次国家開発計画(SNDP)、[4]零細・中小企業政策(MSME)、[5]ディーセントワーク国別計画(DWCP)、[6]雇用創出・産業戦略――などがある。
このような政策があるにもかかわらず、ザンビアでは雇用問題が悪化し続けている。特に、現在の政策には体系的、相互調整的な視点が欠けている。さらに、労働省は雇用創出、特に世代別に特化した雇用創出の推進という明確な義務がなく、財源も不足している。労働省は、労働行政、職場への介入を中心業務としており、雇用創出を重視していない。
2.労働組合の直面する課題
主な労働関連法制としては、『雇用法』、『労使関係法』、『若者雇用法』、『最低賃金・雇用条件法』、『雇用(特別条項)法』、『工場法』があり、年金関連で国民年金基金法(NAPSA)、公務員年金法(PSPF)、地方公務員年金法(LASF)などがある。NAPSAは2000年2月に導入され、すべての雇用者の加入が義務づけられた。労働関連法制は、現在、見直しが行われているが、社会保障の対象となるのは、フォーマル部門労働者であり、適用対象範囲が狭い。また、年金基金の管理がずさんで、政治的な介入も起きており、予算配分が少ないことも課題である。
政府の投資政策の中心は、ザンビア開発庁(ZDA)を通した外資誘致奨励策である。従って、ザンビアの投資環境は極めて自由であるといえる。問題は、投資の範囲に、現地調達比率、技術移転、雇用創出に関する条件が設けられていないことで、アウトソーシング規制も無い点である。このような投資政策は、人的資源を含む諸資源の搾取を助長するものである。
社会対話の中心的な枠組みは、政労使三者対話(TCLC)である。労働問題、人的資源の開発・活用に関するさまざまな問題、その他、政府の付託を受けた諸問題などについて政府に諮問する機能を有している。しかし、基本的に法的な罰則がないので、役割が労働行政問題に限定されている。
団体交渉は産業部門レベルで行われる。ストライキ権はあっても、合法ストの実施手続が煩雑なため、実際にストライキを実施するのが非常に難しくなっている。さらに、社会対話阻害の要因として、労働組合組織率の低さがある。総労働人口550万人のうち、労働組合に組織されているのは40万人にすぎない。インフォーマル経済が非常に大きく、使用者による労働組合への敵視が、労働組合組織率を下げる要因となっている。
3.課題解決への取り組み
構造的な課題や、実行機能の欠如が政策実現を阻害している。政策間の連携がなく、政策協調(産業化・雇用創出の枠組み)が欠けている。国の雇用・労働市場政策は、国家開発計画と連携させることによって、雇用創出への対応力を強化する必要があると考える。投資の管轄は商務工業省であるが、多国籍企業がザンビアに投資する場合、労働法の遵守、雇用創出、労使関係を労働省が監視・監督すべきである。
政労使三者対話(TCLC)は、諮問・協議機関で、法的強制力を持たないため、政府はその答申を受け入れても受け入れなくても良い状況にあり、労働組合としてはそれを変えていかなければならないと思っている。
*1ドル=120.69円(2015年10月23日現在)