2020年 南アフリカの労働事情

2020年10月30日 報告

 国際労働財団(JILAF)では、アフリカ英語圏チームとして南アフリカ労働組合役員を招へいし、労働を取り巻く最新情報の共有や日本の労働組合の特徴、生産性運動や雇用安定の取り組みなどについて学ぶためのプログラムを用意した。しかし、新型コロナウイルス禍の影響により来日交流が困難となり、「オンラインプログラム」による取り組みとなった。
 以下は、各ナショナルセンターの報告資料等の概要を参考にまとめたものである。

南アフリカ全国労働組合協議会(NACTU)

モドゥピ メイル
南アフリカ全国労働組合協議会(NACTU) 国際局局員

南アフリカ組合連盟(FEDUSA)

シサンダ ムボトー
南アフリカ活版印刷労働組合 副事務局長

グラント アボット
全国高等教育連合(NTEU) 事務局長

 

1.労働情勢(全般)

  2017年 2018年 2019年
実質GDP(%)
(出典元)
1.42
( IMF )
0.79
( IMF )
0.2
( IMF )
物価上昇率(%)
(出典元)
5.27
( IMF )
4.62
( IMF )
4.1
( IMF )
最低賃金
(時間額・
日額・月額)
(出典元)
□時間(     )
□日額(     )
□月額(     )
(設定なし)
□時間(     )
□日額(     )
□月額(     )
(設定なし)
□時間(     )
□日額(     )
□月額(     )
(労働省)
労使紛争件数
(出典元)
(    ) (    ) (    )
失業率(%)
(出典元)
27.7
(    )
27.2
(    )
28.7
(    )
法定労働時間
(出典元)
8時間/日

(2019年雇用法)
40時間/週

(2019年雇用法)
時間外/割増率
時給1.5倍
(2019年雇用法)
休日/割増率
時給1.5倍
(2019年雇用法)

通貨名:ランド(ZAR) 1ランド=約6.7円(2020年10月現在)

2.基本情報

 南アフリカはアフリカ大陸最南端に位置し、国土は122万平方キロメートルで日本の約3.2倍、人口は5870万人で首都はプレトリアである。公用語は英語とアフリカン言語で宗教はキリスト教を中心にヒンズー教とイスラム教信者が多い。かつては、アパルトヘイト政策が行われ1994年の撤廃まで人種差別が長く続いた。ポルトガルからオランダ、19世紀初頭にはイギリスの植民地となり、1830年代には奴隷制度廃止論争から先住民族との戦争が勃発したが、最終的にはイギリスの統治下に置かれた。1910年に独立、1990年代アパルトヘイトが廃止され、1994年には総選挙においてマンデラ大統領が誕生した。現在は、アフリカ唯一のG20参加国であり、中国やロシアとともにBRICSを形成するアフリカ最大の経済大国となった。
 主要産業は、かつては金やダイヤモンドの世界的産地となっている鉱工業が中心であったが、金融や保険産業がGDPに占める割合が高まっている。名目GDPは5兆ランド(約3800憶米ドルを超え、一人当たりの名目GDPは6300米ドルである。アフリカ全体のGDPの約20%を占めており、最大の貿易国は中国であるが、近年EU・アメリカ・日本とも活発な経済活動を展開している。1990年初頭から鉱物資源の高騰により経済成長率が急伸したが、その後世界的な金融危機により一時落ち込んだものの再び上昇に転じ、その後、中国経済の減速や鉱物資源の下落により1パーセント前後の低成長率が続いている。失業率は2010年ころから上昇傾向になり、雇用創出が人口増加に追い付かないことから至近年は27パーセント台と大きな社会問題となっている。

ナショナルセンターは、
南アフリカ労働組合会議(COSATU)組織人員約200万人、20産別組織(鉱山,金属
教職員、公務員が中心)ITUC加盟
南アフリカ組合連盟(FEDUSA)組織人員約48万人、公務員、鉱業、医療、保健、
教育、運輸が中心 ITUC加盟
南アフリカ全国労働組合協議会(NACTU)組織人員約2万人、化学、建設、機械金属、運輸
が中心 ITUC加盟

3.労働法制の法的枠組みと社会保障制度

(1)労働法制

 南アフリカには、新たに設置された雇用労働省(旧労働省)が管理する労働災害・疾病保障・技能訓練・雇用の平等・雇用の基本条件・最低賃金など数多くの労働法令がある。こうした労働法制の中で労使の様々な側面に適用されるのが労使関係法(LRA)である。この法律は、労働者の定義、雇用契約、休暇、懲戒手続き、団体交渉などについて具体的に定めている。なお、同法の主要な規定の一つに厳しい経済環境下や経営上の理由によって労働組合と協議したのちに労働者を削減することを使用者に認める「第189条」がある。

(2)社会保障制度

 政府は高齢者に対して基礎的な年金を毎月支給している。また、幼児の親や保護者が失業している場合は、幼児の親や保護者に対して未成年者補助金が毎月支給される。
 公共セクターでは、プライマリー・ヘルスケア及び特定カテゴリー(例えば女性の不妊治療など)の保険ニーズに関する医療は無償で提供されている。また、最貧困層及び非常に困っている人には無料で治療が受けられるようになっている。

4.労働組合が直面している課題と取り組み

(1)不安定雇用やインフォーマルセクター労働者の現状

 国の統計によると、450万人がインフォーマルセクター雇用の状態にある。このうち280万人はインフォーマルセクターで働いており、その大部分が自営業者(露店およびインフォーマル店舗の商人、タクシー運転手、建設労働者、仕立て職人、靴職人など)である。雇用基本条件法(BCEA)などの重要法令では、フォーマル経済とインフォーマル経済を問わずすべての雇用者を対象としているが、政府にはインフォーマルセクターにおける法の順守を監視する能力はほとんどない状態である。
 なお、南アフリカの労働センターは全国経済開発労働評議会(NEDLAC)において、企業、政府、地域社会の後援者といった社会的パートナーとともに、上記勧告204号に定めるディーセントワーク・カントリー・プログラムに基づき、インフォーマルセクターのフォーマル化に取り組んでいる。

(2)ナショナルセンターの課題と取り組み

1)南アフリカ労働組合会議(COSATU)
 南アフリカの組合は総じて、雇用の非正規化に関する課題に加え、労働協約を未組織労働者に拡げる能力を無力化しようとする攻撃を受けている。労働組合は賃金や失業に関しても課題を抱えている。賃金は生活水準に比べて非常に低く、特に民間セクターは深刻である。そして極めて高い失業率も生活に重圧をかけている。
 南アフリカ衣料・繊維労働組合は、衣料、繊維、履物,皮革製造業で働く労働者を組織しているが、最大の課題は組合員の雇用の維持と海外からの安価な輸入皮革によって、この20年間で16万人もの雇用が失われた。私たちは、皮革産業が直面している課題に対処するための広範なキャンペーンを展開し、行動プログラムを策定している。
2)南アフリカ労働組合連盟(FEDUSA)
 南アフリカの労働組合は、厳しい経済環境下で失業が広がる中、組合員数の減少による労働組合財政が大きく減少するという問題を抱えている。製造業では新技術の導入によってロボットが人に置き換わる状況も生じている。また、金融部門では銀行の窓口業務を担う事務職員や警備員が大量に人工知能ソフトウエアに置き換わり、支店の閉鎖が生じている。また、経費削減が民間セクターを荒廃させ、政府は公務員に対して早期退職パッケージや10パーセントもの給付削減計画を一方的に提示している中、最大の課題は既存の雇用を守ることである。そのため、「労使関係法第189条」の改正要求を検討している。

5.その他

  • 新型コロナウイルスの影響がGDPを直撃して、第2四半期の前年同期比はマイナス51パーセントとなり第3四半期はさらに拡大することが予想されている。
  • 南アフリカにおける失業率は、人種別に大きな差が出ている。アパルトヘイト政策が廃止されてから20年以上たっても黒人の職業差別は続いている。さらに全体経済の低迷、就業経験のない若年人口の増加、労働集約型から知識集約型の経済の変化などが失業率の悪化の原因となっている。
  • 鉱業産業における労働者への劣悪な就業環境下での人権問題、水質汚染・大気汚染などの環境汚染も大きな問題である。