2018年 南アフリカの労働事情
アフリカ組合連盟(FEDUSA)
リフダ アジャム(Ms. Riefdah Ajam)
南アフリカ組合連盟 副事務局長
ボイトゥメロ ジョイス クマロ(Ms. Boitumelo Joyce Kumalo)
南アフリカ健康関連事業労働組合 副会長(教育訓練担当)
1.南アフリカ組合連盟(FEDUSA)について
南アフリカには、主要なナショナルセンターが3つあるが、南アフリカ組合連盟(FEDUSA)は2番目の組合員規模である。その他にも、小さな労働組合が雨後のタケノコのように次々と誕生している状況だ。
なお、南アフリカには「国家経済開発労働審議会」という審議機関があり、ここには労働組合の代表、企業経済団体の代表、そして政府の代表が入っており、三者で経済や労働に関する問題について議論している。
2.労働情勢
インフレ率は2017年が5.3%である。
失業率はかなり高く、2017年が27.5%となっている。2010年ごろから起こったグローバルな経済危機は南アフリカ経済にも大きな影響を及ぼし、このことから高失業状態が続いているといえる。特に若い人の失業率が非常に高い状態だ。
最低賃金については、まだ全国統一の最低賃金はないが(家内、農業、小売りなどセクター別の多様な最低賃金を採用している)、幸運なことに今年11月1日から新しい最低賃金制度が施行されるはこびとなった。
2015年 | 2016年 | 2017年 | |
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実質GDP(%) (出典元) |
1.3 (南アフリカ統計局) |
0.6 (南アフリカ統計局) |
1.3 (南アフリカ統計局) |
物価上昇率(%) (出典元) |
4.6 (南アフリカ統計局) |
6.3 (南アフリカ統計局) |
5.3 (南アフリカ統計局) |
最低賃金 (時間額・日額・月額) (出典元) |
データなし | データなし | データなし |
労使紛争件数 (出典元) |
110 (南アフリカ労働省) |
122 (南アフリカ労働省) |
132 (南アフリカ労働省) |
失業率 (出典元) |
25.4 (南アフリカ統計局) |
26.7 (南アフリカ統計局) |
27.5 (南アフリカ統計局) |
法定労働時間 (出典元) |
8時間/日 (南アフリカ 労働省) |
40時間/週 (南アフリカ 労働省) |
時間外/割増率 時給の1.5倍 (南アフリカ 労働省) |
休日/割増率 時給の1.5倍 (南アフリカ 労働省) |
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3.南アフリカの労働法制と社会保障制度
南アフリカの労働法制と社会保障制度の基礎となっているのが人権文化である。民主化される前のアパルトヘイト時代に社会的な不平等が非常に問題だったことから、人権文化というものを基礎に据えて制度設計が行われている。民主化後24年経つが、この間、労使関係や社会保障をめぐる課題については一定の進捗がみられた。例えば、雇用に関する基本的条件を定めた労働関係法などがつくられた。また、雇用平等法がつくられ、ここでは雇用における女性や若者の平等の確保、障害を持った人たちの雇用の平等もうたわれている。これ以外でも職場でけがや病気になった場合の保障、能力開発について定めた法律もそれぞれ制定されている。
社会保障制度の整備も進んでおり、この中で国民皆保険制度のような国民健康保険制度についての議論も進んでいる。これは、サミット対話ということで共和国大統領の呼びかけのもと、労働組合を含む様々な社会的パートナーが招かれる形で対話、議論が行われている。
4.労働者が直面している課題とその解決に向けた取り組み
(1)労働組合が直面している課題
現在直面している大きな課題の一つとして、グローバル経済の危機から引き起こされている組合員数の減少という問題がある。特に、鉱物資源の採掘などの鉱業分野、製造業などで顕著になっており、現在、多くの従業員が解雇されるなどの人員整理が常態化している。その背景には、金・鉄鋼などの価格が非常に低迷し、それとともに輸入が増えていることが挙げられる。加えて、技術の進展が多くのセクターで雇用に影響を及ぼしている。第4次産業革命は南アフリカが世界的な競争力の観点からみた時に脅威になり得る問題だと認識している。アパルトヘイト時代に国の中で不平等というものが制度化されており、現在でも教育が十分に受けられない人達が多く、能力開発の面でも大きな問題を抱えていることが指摘される。こうした分野としては、衣料品製造・履物製造、鉱業、農業などが挙げられる。
(2)課題解決に向けた労働組合の取り組み
アフリカの労働市場をめぐり、最大の課題になっているのが雇用の確保という問題である。もう一つは、技術革新からの影響が挙げられ、この中には第4次産業革命の影響も含まれる。つい先日、南アフリカの財務大臣から国の中期的予算(見通し)が発表されたが、公共セクターにおいては雇用の確保が厳しくなりそうで、おそらく3万人の雇用危機にさらされることが想定される。引き続きこの問題に全力を挙げて取り組んでいこうと考えている。