2015年 ウガンダの労働事情

2015年10月23日 講演録

ウガンダ全国労働組合組織(NOTU)
ウガンダ電力関連従業員組合
トム・アミティ

事務局長

 

1.ウガンダの労働情勢(全般)

 ウガンンダは大統領共和制の国で、議会には労働者の代表である労働組合の議席が5議席ある。
 経済はおおむね安定した状況が続いており、2005年から2014年までの平均年間経済成長率は6.8%、インフレ率は7.6%となっている。しかし、為替相場の不安定な状況(1ドル=3650ウガンダシリング)や、汚職の蔓延が経済に悪影響をもたらしている。極貧率は1992年の56%から2012年には22%と着実に減少しているが、人間開発分野の指標では、教育、保健衛生、HIV/AIDSの分野で悪化するケースも見受けられている。
 法定最低賃金は、1984年に2.4ドル(約290円)に設定されて以来改定されてこなかった。しかし、ようやく2013年8月に最低賃金委員会が設置され、現在見直しが行われている。
 アフリカで最も人口増加が大きい国であるウガンダでは、毎年多くの若者が労働市場に参入している。しかし、フォーマルセクターでは雇用が限られており、多くの労働者はインフォーマル雇用に陥るか、不完全就業状態になっている。既存の政策は雇用を創出するのではなく、逆に失業者を増やすことになっている。
 労働組合は労働人口の3%、フォーマルセクター労働者の13%に相当する約44万人を組織化し、40の加盟組合が存在する。労働協約を支援する多くの法律があり、数多くの労働協約が存在する。政府は、経営者団体や労働組合全国組織とともに、労使関係に関する国家三者憲章に調印した。

2.労働組合の直面する課題

 ウガンダは東アフリカ近隣諸国に比べ、社会保障面で遅れをとっている。医療関係支出は増加傾向にあり、2007年から2011年にかけて13%増加したが、健康保険の対象となっているのは人口の2.3%と依然として低い。社会保障基金の理事会は、政府2人、使用者2人,労働組合が5人を占めるが、その内1人はインフォーマルセクター代表が占めている。
 また、経済や社会分野における男女格差が解消されていない。女性が一家の稼ぎ手である家庭の収入は男性に比べて28%低い。しかし、ウガンダ全国労働組合組織(NOTU)の選挙で選ばれる役員は、女性が17人(53%)で、男性が15人(47%)と、女性が多くなっている。
 さらに、現在ようやく労働審判所が機能し始めた。この労働審判所は民間部門のみを扱い、公務部門については別の機関である労働裁判所で取り扱う。
 一方、2013年10月には『治安管理法』が成立した。この法律は、表現の自由および平和的結社の自由を制限するもので、重大な問題があるとして、マスコミの批判を受けている。労働組合もこの法律の影響を受けており、さらにウガンダの市民社会への侵害を深刻化している。
 ウガンダとケニアは、2013年、二国間での労働者の自由な移動を認めるために、労働許可手数料を免除する二国間協定を締結した。
 この数年さまざまな労使紛争やストライキが発生しており、特に輸出加工区での労働者の権利の侵害が目立っている。労働関連法の遵守率は低く、労働組合は取り締りの労働調査員の増加を要求している。

3.課題解決への取り組み

 ウガンダの労働組合は、旧来の職業別労働組合から、誰でも加入できる労働組合への変化・移行する中で、着実に成長している。これにより、インフォーマルセクター労働者の加入を促進する状況になってきている。

*1ドル=120.69円(2015年10月23日現在)