2018年 タンザニアの労働事情
タンザニア労働組合会議(TUCTA)
ステラ オベド マモット(Ms. Stellar Obed Mamotto)
タンザニア教職員組合 女性代表
オバディア ジョージ ムワカシツ(Mr. Obadia George Mwakasitu)
タンザニア地方公務員労働組合 副事務局長
ムワナディ ショマリ ムゴワ(Ms. Mwanaidi Shomari Mgowa)
タンザニア政府医療従事者労働組合 地域事務局長
1.労働情勢
実質GDP(対前年増減率)は、2017年が7.1%であった。
インフレ率は、2017年が5.32%であった。
2017年の最低賃金は134.84米ドルである。
失業率は、2017年が2.7%であった。
2016年 | 2017年 | 2018年(見通し) | |
---|---|---|---|
実質GDP(%) (出典元) |
7.0 (NBS) |
7.0 (NBS) |
7.1 (NBS) |
物価上昇率(%) (出典元) |
5.59 (NBS) |
5.18 (NBS) |
5.32 (NBS) |
最低賃金 (時間額・日額・月額) (出典元) |
116.22ドル | 136.30ドル | 134.84ドル |
労使紛争件数 (出典元) |
データなし |
データなし |
データなし |
失業率 (出典元) |
2.12 | 2.17 | 2.70 |
2.タンザニアの労働法制と社会保障制度
(1)労働法制
公務員と民間セクターに適用される「雇用労使関係法第6号」(2004年制定)と公務員だけに適用される「公務員法第8号」(2002年制定)の2つの枠組みがあり、この2つの労働法制に定められている基本事項として、まず、労働者の基本的権利とその保護、団結の自由、結社の自由、団結権、次に、効果的で公正な労使関係、そして、最低賃金と労働条件、などが定められている。
(2)社会保障制度
社会保障制度は次の3つに区分できる。
- 年金制度
公的年金制度は公務員と民間企業労働者の2つのスキームに分かれ、その枠組みは公務員が公務員社会保障基金(PSSSF)、民間企業労働者が全国社会保障基金(NSSF)である。 - 健康保険
健康保険は国民が保険料を支払うことになり、その適用は労働者だけでなくタンザニア国民全てがカバーされる。 - 労働者補償基金
労災などの際に労働者に補償金が支給される仕組みである。
3.労働組合の直面する課題と取組み
(1)非正規雇用、インフォーマルセクターの労働者をめぐる課題
この分野の労働者の労働組合組織化を困難にしている。それは、賃金が日当でかつ現金で支払われていること、使用者との間で雇用契約が文書で交わされていない状況にあること、などに起因している。
(2)組合員数の減少
組合員数減少の主な要因は、政府が登録している公務員の中から、幽霊労働者(ゴーストワーカーズ)や必要な資格を持っていない労働者を削除することになったからである。前者(ゴーストワーカーズ)とは、全く存在していないのに公務員として登録され賃金をもらっていた人のことである。後者(無資格者)とは、例えば、兄弟姉妹の資格を使って仕事に就く、あるいは資格証を偽造し、それを用いて労働していた労働者である。政府は、こうした労働者をデータベースから削除することとした。ちなみに幽霊労働者(ゴーストワーカーズ)は1万2千人、資格のない労働者は何千という単位で削除されることになる。
労働組合としては、未組織の労働者の組織化に一層力を入れていきたいと考えている。また、無資格労働者の削除分を早く穴埋めし、新たに人材を雇用するよう政府に働きかけている。
(3)若者の組合離れ
組合に入りたくないという若者が増えている。その理由は、組合の重要性に対する理解が低いこと、若者の賃金が低いため、安い賃金から組合費を引かれたくないというものである。労働組合としては、労働組合が果たしている雇用と権利を守る役割の重要性を伝えるなどの取り組みを一層強めていきたい。