2013年 ガーナの労働事情
ガーナ労働組合会議(GTUC)
ヒルダ・アピニー・アツィア(Ms. Hilda Apini Atia)
女性委員会議長
1.ガーナの労働情勢(全般)
ガーナは人口約2500万人、15歳以上の人口の68.8%、約915万人が就労し、労働力人口の大半を就労者が占める。就労者のうち55%は自営業で、約20%は家族経営企業に従事し、残り22.1%が被雇用者(17.6%) または使用者(4.5%)として労働市場に参加している。自営業は都市部(47.2%) に比べて農村地域(59.4%)でより顕著である。就労者のうち3分の2(66.7%) は民間部門(農村地域の農業部門および都市部のインフォーマル経済における就労者を含む)で雇用されている。公務部門での雇用はほとんどが都市部に集中し、全労働力人口の3分の1未満に留まる。全就労者の半数以上 (55.8%) は主要産業である農業部門に従事し、貿易部門が15.2%、製造部門は11%、合わせて労働力人口の82%近くを雇用している。注目すべきは、これらの部門はインフォーマルであるという点である。ガーナの就労者の82%がインフォーマル部門で働いている。
『労働法』第651号(2003年)では、1日8時間、週40時間労働制を定めている。労働力人口の5分の1 (18%) は、本業での労働時間を週20時間未満と報告している。労働時間を詳しくみると、高技能職に従事する人々は、その他の職業に従事する人に比べ、労働時間が週40時間未満の割合が高い。例えば、労働時間が週40時間未満は、国会議員や経営者が14%、一般事務員の場合10.8 %となっている。
ガーナの労働市場の重要な特徴の一つに賃金や所得の低さがある。1日当たり最低賃金は2ドル未満で、しかも相当数の労働者、特にインフォーマル部門の労働者は全国最低賃金以下である。
15歳以上の失業率は5.8 %と推定される。また、成人人口の約4分の1が経済活動に従事していない。注目すべきは、経済活動に従事していないグループが生産年齢人口に含まれていることである。つまり、就労の資格がありながら、病気やけがで労働不能、学生または主婦、あるいは単に労働市場への参加を望まないなどの理由で仕事に就いていない。経済活動への不参加は、農村地域 (41.1%).に比べ、都市部で顕著である(52.7%)。失業は、特に若年層に大きな影響を及ぼしている。
2.労働組合が現在直面する課題
ガーナ労働組合会議 (GTUC) は、ガーナの労働組合活動の中心的な統括組織である。政府や使用者団体への対応において、組織労働者の正式な代弁者としての役目を果たす。1992年綱領では、公選されたすべての役職者に対し、いかなる政党との提携も禁じている。首都アクラに本部を置き、組合員は約50万人、あらゆる労働者グループが含まれる。職場で5人集まれば労働組合を設立することができる。GTUCは18の産別の中核的調整組織としての役割を果たしている。
今日のグローバリゼーションの流れの中で、労働組合は時代遅れの組織とみなされ、ガーナの労働組合は壊滅的な影響を受けている。産業界における組織改革や技術進歩、新たな人事管理形態の出現、現在の国際競争の影響、労働市場の変化、公共財産の私有化、小企業の増加、新しい個人主義イデオロギーの普及などの変化が起きている。大工場で働く伝統的な労働者階級が次第に姿を消す一方、有期契約やパートタイム契約の労働者は増えていて、従業員はもはや一つの職場に永久的に縛られることはない。これらの状況を受け、組合員は減少し、労働組合は影響力を失いつつある。
新しい労働組合が次々に出現している状況も、労働者を混乱させ、組合間に問題を引き起こしている。所属組合の指導体制に満足できずに労働組合を変わりたいと考える人もおり、その過程でナショナルセンターからの介入を嫌い、即座に労働組合を脱退する人もいる。労働組合指導者は、組合員数を増やすため、他の労働組合の組合員に対し、自身の労働組合に加入するよう説得している。これが全国の労働組合の間に反目を生じ、組合の発展や成功に必要とされる結束に悪影響が及んでいる。
使用者の中には従業員の労働組合結成や加入を阻止しようとする者もいる。解雇の脅しをかけることもあれば、組合に加入しなかったことの見返りとしての昇進や昇給を約束することもある。この慣行は結社の自由や団結権といった従業員の権利を否定しようとするものであるが、彼らは失職を恐れ、労働組合に加入しないことを選択する。このような状況で、組織率は低迷している。
女性の組合活動への参加は非常に少ない。女性は労働力人口の過半数を占めてはいるが、組合プログラムに参加することは滅多にない。このため、とりわけ女性に関する問題について、政策の策定や実施が滞りがちである
労働組合指導者は、労働組合指導者であるがために解雇されてきた。このような状況の中、組織労働者が解雇された同僚のために結束を固めるなどして、国内の労働者と使用者との間には時に軋轢が生じている。また、労働組合未加入の労働者はこれらの出来事をメディアで見聞きし、組合加入を躊躇している。
3.課題解決に向けた取り組み
2003年、紛争解決を支援するため、三者構成の全国労働委員会が設立された。この組織は、労働協約締結をめざす労働組合のために団体交渉証明書を発行する責任も負うことになった。労働組合間の紛争は、労働委員会によって平和的に解決される。GTUC は、共通の方向をめざして闘うための団結の必要性を組合指導者に教示するため、彼らを対象とした訓練プログラムを提供している。また、労働組合間の紛争を防ぐため、組合結成、および特定の組合に加入できる労働者の区分に関する規則を定めている。さらに、労働組合指導者は、組合員を増やすため、国内の組合未加入労働者を組織化する方法について訓練を受けている。GTUCは、労働組合活動への女性の参加を推進する一助として、全労働組合に女性委員会の設置を義務付けた。
4.ナショナルセンターと政府との関係
ガーナの労働事情はここ数年で大幅に改善された。そのことに関し、歴代政権も労働組合や労働者に高い評価を与えてはいるが、労働者の労働組合主義への関与の強化、女性の参加拡大を目的とした組合問題へのジェンダー配慮型アプローチの確保に向けてはさらなる努力が必要である。