活動報告 各国の労働事情報告

2024年 ベトナムの労働事情(バングラデシュ・ベトナムチーム)

以下の情報は招へいプログラム「バングラデシュ・ベトナムチーム」参加者から提出された資料をもとに作成したものである。

参加者情報

ベトナム労働総同盟(VGCL)

基本情報 (外務省令和6年6月11日更新データより)

  • 人口:1億30万人(2023年)
  • 宗教:仏教、カトリック、カオダイ教他
  • 政体:社会主義共和国
  • 主要産業:農林水産業(GDPに占める割合11.96%)、鉱工業・建築業(同37.12%)、サービス業(同42.54%)
  • GDP:4,300億ドル(2023年)
  • 経済成長率:5.05%(2023年)
  • 失業率:2.28%(2023年)

 

1.最近の課題や問題点

近年、ベトナム労働総同盟(VGCL)では労働者の権利と利益、雇用確保と賃金や住居などの労働条件の向上、経済的に困難な労働者を支援する政策を策定して実行してきた。また、国際労働基準を遵守する事を目的に、グローバルサプライチェーンの国内での活動を評価するための確認行動を実施、組合員並びに労働者の権利の保護に努めている。

2.労使紛争

(1)最近の労使紛争事例

ベトナムの労働争議は、団体的労働争議と個別的労働争議がある。
団体的労働争議は、近年減少傾向にある。2018年からの5年間は2013年からの5年間と比較して50%以上減少している。
個別的労働争議では、個人の自主的な解決や、労働組合の調停による支援が行われている。最終的に、解決が困難な場合は裁判所での法廷闘争となる。

(2)労使紛争の原因

    • 団体的労働争議

雇用主(使用者)の労働法違反(保険、給与、労働時間、休憩時間に関する問題)、労働者との対話不足、労働者の過度な労働条件改善要求などである。

    • 個別的労働争議

給与支払いに関する労使の認識の相違、勤務制度や規定に関する事項。

(3)労使双方の主張

    • 労働者側 使用者は労働法を遵守して、適正な賃金と手当、ボーナスなどの要求に応えるべき。
    • 経営側  労働者は企業内のルールや公的規制を守り、違法なストライキはやめて生産に積極的に協力すべき。

(4)労使紛争の結果

団体的労働争議は、件数的にも減少しておりベトナム国内の労使関係は安定していることから長い時間をかけて争う事例は少ない。
ほとんどの個別的労働争議は、地区ごとに選任される労働調停人の関与により解決される。個人は通常、社会問題局や工業団地管理委員会の労働課に苦情相談を行う。しかし、解雇や損害賠償、保険に関する問題は解決が困難で、を通じて解決される場合が多い。での手続きは短期間で終了して、労働者の要求は満たされることが多い。

3.労働法制について

(1)労働法の現状

ベトナムの労働法は労働者と雇用主の双方に利益をもたらす改正が2019年に行われた。特に、職場における各種ハラスメントの防止と撲滅を目的とした規制を強化した。また、同一労働同一賃金の確保、母性の保護、定年の引上げなど持続可能な社会を目指し、高齢化にも対応した改正となった。
労働法は労働組合の自由な結成も可能とし、ベトナムのナショナルセンターであるVGCLへの加盟が必須条件ではなくなっている。また、労働組合を対象とした差別や介入も禁止されている。
改正法では、労働争議解決の仕組みも柔軟となっており、調停で解決が困難な場合、労働者は仲裁に移行することができる。

(2)現状に対する問題意識とナショナルセンターの取り組み

VGCLは、労働者の利益を代表し権利を保護する組織として、関連する政策策定や法律の公布について積極的な活動を展開している。また、国際労働組合総連合(ITUC)を中心に国際的な労働組合組織とも連携して、行動している。

(3)労働法改正の動向

ベトナム労働法は、ILO中核的労働基準や自由貿易協定との整合性を高めるための調整を行っている。

4.社会保障制度について

(1)制度の現状

労働者を対象とする公的な保険制度として、以下がある。

    1. 社会保険  労働傷病兵社会省が所管、拠出保険料に応じて疾病、出産、労働災害、退職、死亡の際などに補償される。
    2. 健康保険  保健省が所管、加入率は高いが自己負担割合も高い。
    3. 失業保険  労働傷病兵社会省が所管、12か月以上の保険料納付と雇用契約終了が条件で支給される。

基本的には、公平性、包括性を確保し、リスク予防とその軽減を目的としている。
政府はインフォーマル労働者に対しても徐々に適用拡大を目指している。

(2)現状への問題意識とナショナルセンターの取り組み

ベトナム国会第6回で、社会保険に関する国際的な基準と慣行を参考にした社会保険法(改正法)が可決された。この改正法は、今後のベトナムの経済的、社会的、人口統計学的動向に適応させたものになっている。

(3)社会保障制度改正の動向

    1. 高齢者の年金に関する規定見直し
    2. 社会年金受給年齢までの期間の手当受給制度を確立
    3. 強制社会保険加入対象の拡大
    4. 社会保険加入者への給付拡充
    5. 保険手続きの簡素化

などがある。