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No.576(2020/1/17)
韓国の労働損失日数、日本の173倍。一方サムソン電子取締役会議長は労組活動妨害で実刑判決

 韓国・中央日報(日本語電子版12月17日付)は近年の韓国国内での労働争議・労働損失日数を次のように伝えている。

(要旨)
 韓国経済研究院は16日、2007-2017年の韓国・日本・米国・英国の労使関係指標を発表した。過去10年間の韓国の賃金労働者1,000人あたりの平均労働損失日数は4万2,327日、英国は2万2,360日、米国は6,036日、日本は245日だった。韓国の労働損失日数は英国の1.8倍、米国の7.0倍、日本の172.8倍にのぼった。

 過去10年間で労働争議が最も多く発生した国は英国で、年平均120.1件の労働争議が発生した。韓国は100.8件、米国は13.6件、日本は38.5件だった。

 韓国は、4カ国のうち労働組合員数が最も少ない。過去10年間の平均労働組合員数は、韓国180万7千人、米国1,492万8千人、日本996万8千人、英国656万2千人となっている。反面、労働組合員1万人あたりの労働争議の件数は韓国が0.56件と最多であり、英国は0.18件、日本は0.04件、米国は0.01件だった。韓国は英国の3倍、日本の14倍、米国の56倍だ。(以上)

 こうした韓国における労働争議、労働損失日数の多さは依然として健全な労使関係構築が進んでいないことを物語っている。世界経済フォーラム(WEF)の調査における過去10年間の労使協力評価では、韓国が世界123位となっている。なお米国は30位、英国24位、日本7位である。

 一方、2019年11月、かつて50年間本格的労働組合は存在しなかった巨大企業サムソン電子に韓国労働組合総連盟(韓国労総)・全国金属労働組合連盟(金属労連)傘下のサムソン電子労働組合(第四組合)が結成された。

 この労組結成についてハンギョレ新聞の社説は次のように述べている。
(要旨)
 「今年創立50周年を迎えたサムソン電子は、50年経ってようやくまともな労働組合が設立されたことを恥ずかしいことと受け入れなければならない。グローバル企業の中で労働者の正当な権利を否定するのはおそらくサムソンが唯一無二であろう」としている。そして「サムソンは時代錯誤的な無労組経営を放棄するときになった。労働組合を対話と協力のパートナーとして認め組合活動を保証しなければならない」(以上)

 こうしたなか、サムソン電子取締役会議長に労組活動妨害の罪で実刑判決が出されたことは衝撃的である。この間の事情を聯合ニュースが次のように報じている。

(要旨)
 韓国のソウル中央地裁は12月17日、子会社の労働組合の活動を妨害したとして、労働組合および労働関係調整法違反などの罪で在宅起訴されたサムスン電子の李相勲(イ・サンフン)取締役会議長に対し、懲役1年6ヶ月の判決を言い渡した。李被告はサムスンの「ナンバー2」とされる。実刑判決により、法廷で身柄を拘束された。
 この件では、地裁は他にサムソン電子および子会社の幹部26名に有罪判決を言い渡している。

 李被告らサムスン電子の幹部は、2013年にサムスン電子サービスに労働組合が結成されるとグループレベルで「労組つぶし」の戦略を立て、実行した罪に問われた。
 検察の捜査により、サムスン電子とサムスン電子サービスなどの子会社は対応のためのチームや状況室を設置し、戦略を実践していたことが判明した。具体的には、強硬な労組が設立された下請け会社を廃業させて組合員を経済的に困窮させたり、組合員をターゲットにした監査を実施したりしていたという。労使交渉を意図的に遅らせていた疑いもある。(以上)

 サムソン電子に韓国労総系の健全な労使関係の構築を目指す労働組合が結成され、一方過去に組合つぶしに奔走した経営幹部には実刑判決が下された。こうした動きを良として労働争議の減少に繋げていって欲しい。

 そのカギを握るのは韓国における労使協議制度ではないか。
 韓国の労使協議制度は実は法律で、30人以上の企業でその設置が義務づけられている。「勤労者参与および協力増進に関する法律」(勤参法)は1997年の改正で、「労使協議会は労働者と使用者の参加と協力を通じて労使共同の利益を増進し、産業平和を維持しながら企業の健全な発展を図ることを目的としている」としている。
 また、この労使協議会は3か月ごとに開催が義務付けられており、その具体的な協議事項は①生産性向上と成果の配分②労働者の採用・配置および教育訓練③労働安全衛生その他の作業の改善と労働者の健康増進④人事・労務管理の制度改善⑤配置転換・再訓練・解雇などの雇用調整に関する一般原則、以下合計16項目にも亘っている。
(安熙卓 韓国の団体交渉と労使協議制度 2018より)
 法律に基づくこうした労使協議制度が着実に機能していけば、労使関係は改善され、労働争議は減少していくはずである。この労使協議会の労働側委員は直接無記名投票により選出されるが、過半数で組織される労働組合がある場合は、労働組合の代表者とその労働組合が委嘱する者が委員となるとされている。
 労働組合がより一層、労使協議会を有効活用することを期待したい。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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