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No.574(2019/12/20)
大規模化したフィンランド郵便スト

 11月11日フィンランドの郵便事業者ポスティ社の郵便ロジスティクス労組(PAU)が長期ストに入り、同情ストが港湾、航空、鉄道に広がるなか、大規模な労働争議となった。

北欧諸国の労使関係
 フィンランドの労働組合は、「労働者」、「ホワイトカラー」、「アカデミクス(高学歴の専門的労働者)」の3階層にナショナルセンターが別れ、労使関係は産業別使用者団体と産業別労働組合によって構成され、双方の合意により協約を締結するという形を取っている。これは北欧諸国に一般的に見られる形態である。
 PAUは企業別労働組合ではあるが、ポスティ社内部には11の産業別労働組合との労働協約が存在し、職種毎に、それに対応した労使関係が構築されている。(JP労組フィンランド調査による)そういった状況にあって、組織統合を進めることが、フィンランドの労働運動の基本的な方向あり、PAUも現在運輸系労組と統合する方向で調整中である。ポスティ社の職員数は、全世界で2万人、フィンランド国内では1万6,000人が働いている。

今回のストの発端
 PAUは、ポスティ社内で約1万名の労働者を組織している。今回の争議の発端は、今年8月700名の小包区分労働者をポスティ・パルヴェルートという子会社に転籍させると会社が発表したことにある。異動は11月から始まる。その子会社ではPAUが所属する産別ではないメディア系の産別と協約を結んでおり、賃金は30〜50%下がると言う。ポスティ社は、代わりに生産性ボーナスなどで減額を補うとしているが、小包関係業務のフレキシビリティーを高め、2021年までの3年間に1億5,000万ユーロから2億ユーロを浮かせようという計画である。発表とともに8月末にストが自然発生的に始まるなど、労使関係は混乱をきたし始めた。ポスティ社は、郵便物数の減少と小包の増加の中、ポスティ社の生きる道は小包にあるとし、小包部門の強化に力を入れてきた。そうした中で出てきたのが、今回の案である。PAUの1割近いメンバーの異動であり、結果的にPAUの組織範囲とは異なる組合に所属するとなれば、労使関係は混乱するのは火を見るより明らかだ。ポスティ社は8月末のストを無届けストだとPAUを攻撃し、PAUはストを9月3日に収めた。政府の「話し合いの中で解決せよ」と言う言葉を受け、これまでのPAUとポスティ社を含む産業団体協約の期限が10月31日までであり、改訂が迫っていることを踏まえ、新しい協約の締結を求め、正規の手続きに従って、9月中旬に交渉を開始した。

大規模化した郵便スト
 700名の小包労働者の問題も仕切り直しとなった。ポスティ社のウェブサイトによると、「700名の小包区分労働者の異動と今回の新協約交渉は関係がない」、PAUがポスティ社の労働者の最大組合であるとはいえ、「ポスティには11の産業別協約がある」と反論した。政府も全国調停人を任命するなど、平和的解決に乗り出したが、調停は不調に終わり、PAUは11月11日から全面ストに入った。このストに多くの組合が同情ストで連帯した。フィンランドでは同情ストは合法であり、労働者の基本的権利として認められている。航空、鉄道、バスなどが時間単位で同情ストを実行し、混乱した。さらに12月までに解決しなければ、さらに大規模な同情ストを実施すると警告し、全国調停人の調停に注目が集まった。結局、700名の労働者の労働条件の変更はしないことで11月27日全国調停人が示した妥協案を全当事者が受け入れ、ストは解除された。

合意の核心
 今回の合意の核心は700名の小包区分労働者の運命であった。ヘルシンキタイムス11月28日号によると、「700名の小包区分労働者はポスティの子会社ポスティ・パルべルートに異動するが、メディアの産別との協約ではなく、PAUと産業別使用者団体パルタの労働協約によって管轄される」と整理されたそうだ。「これは本当に大きな合意だ」とパルタのトーマス・アールト議長は述べる。彼は「使用者側が特に賃金を下げようと思っていたわけではなく、小包関係の業務でフレキシビリティーを向上させようと考えただけなのだ。」ハイジ・ニーミネンPAU委員長は、「我々のメンバーの収入が確保されるという点では評価できる」と述べた。競争激化のなか、今回の合意は北欧の労使関係モデルがどう対応するかを示したものと言えるであろう。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
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