バックナンバー

No.482(2017/11/17)
爆発的なEコマースの普及は雇用を増加させる

【合衆国
 ニュージャージー州のオンライン小売業、BOXEDがロボットの導入を決めたとき、従業員の反応はいつ失業するかという恐怖であった。同社のロボット導入は今年春であったが、今や、失業とは逆に第3シフトが実施されて、人員は30%増員され、仕事内容も荷物の運搬で数千歩あるくことから、コンべアーが運ぶ荷物を立ったまま処理することに変わった。

 BOXEDだけでない。他のオンライン小売業でも起きていることだが、失業の恐怖は誤解だという事実がみられる。オートメーションは雇用を生みだし、その傾向は続こうとしている。商品配達までの時間を短縮することでロボットとソフトウエアが従来の小売方法を画期的に改善し、売り上げを伸張させているのだ。
 Eコマースの急激な伸張はロボットだけでなく従業員の増員も含む大掛かりな倉庫ネットワーク・配達システムの確立、それも急速な確立を求めており、ロボットは人の仕事を奪っていない。ロボットの仕事は今まで存在しなかった分野に産まれているのだ。
 BOXEDの役員も「今までの仕事を半分の従業員でやろうとしているのではない。会社は伸びており、もっと多くの人が必要だ」と語る。

 しかしながら、新型ロボットが仕事を奪う可能性もある。例えばベルトコンベアーの側で荷物を処理し、配達先のラベル張りもするロボットだ。一人の従業員が細かい商品を含めて700点もの配達を処理することが出来るようになった。しかしオンライン小売業の売上伸張はさらに多くの施設拡大を迫るだろう。その結果全体としての雇用は拡大する。

 反面、従来の店舗販売の小売業は大きな影響を受け、トイザラスやラジオシャック、ペイレスシューソースなどが今年破産法を申請した。しかしこの世の終わりを暗示するという小売業“黙示録”が見逃しているのは「本来自分の仕事だったものを、金を払って他人にさせることで、Eコマースが雇用を生み出している」という現実だ。「店に足を運び商品棚から商品を選んでキャッシャーに行き、支払いを済ませる。この仕事を倉庫従業員とトラック運転手に任せる」ことで、人々はショッピング時間を短縮している。
 メリル・リンチの専門家は「仕事を持つ女性はEコマースを使うことで10年前に比べてショッピングに年間25時間を減らした。子供のケアや家の清掃を外部に委託したのと同じだ。双方とも他の雇用を生んでいる」と指摘する。破産や小売店舗の閉鎖が全てではない。もっと多くの雇用が生まれているのだ。

 ある経済研究所の試算では「Eコマースと倉庫販売による雇用の増加は過去10年で400,000人、従来店舗の閉鎖による140,000人を優に上回る」と指摘する。
 アマゾンがよい例だ。未だオートメーションの初期段階だが、2014年から25倉庫におけるロボット100,000台導入を実施しながら、45,000人の従業員を3倍の125,000人に増やし、現在は240倉庫を展開する。ドイツ銀行の報告ではその間の原価低減は20%、その節約分を新施設の開設と雇用増加に振り当てた。100年前にヘンリー・フォードがオートメーション導入で車の価格を低減して需要を拡大し、雇用を増大させたのと同じだ。但し製造業では過去20-30年間、生産を増やしながら従業員を減らしてはいるが。

 しかしEコマースと倉庫業の伸張は製造業より遥かに大きい。Eコマースの成長率は店舗販売の5倍であり、2022年には全小売業売り上げに占める現在比率13%が17%に達すると推定される。
 アマゾンだけではない。世界最大のウオールマートも6番目のEコマース倉庫を最近フロリダに開設した。オンライン食品店舗も現在の1,000か所を2,000か所に拡大する予定だが、従業員は減らすのではなく、増員する。
 同様に家電や重量商品を扱うXPOロジスティック社もEコマース販売の売り上げ伸張に対応して、従業員23,000名を26,000名に増員する。

 アマゾンのある倉庫の話に戻るが、ロボットが運ぶ商品をストックする整理棚がある。ここは従業員による判断が必要だ。ソフトウエアが商品の置き場所を指示するが、高所かつ狭い場所にある棚がバランスよく整理されているかを判断するのは従業員だ。また、“問題解決人”という従業員も必要だ。包装商品が送られるコンベアーの重量計を点検して異常が見られれば、包みを開いて中身を点検する役目だ。ここの倉庫はフットボール場の17倍の広さだが、5,000名の従業員を雇用する。アマゾンもBOXEDもオートメーション倉庫は取扱いが多量のためノン・オートメーションより多くの従業員を雇用する。

 一方、従業員も技術革新と機械化で仕事の質が良くなったという。新しいBOXED倉庫に移った従業員、メナさん(34歳)は「過去には1日15,000歩、12キロを歩いたが、今はコンベアーが運んでくれる。細かな仕事、質の良い仕事が出来るようになった。契約労働者から1年足らずで管理職に登用された。長期間ここで働けると思う」と語る。

 変化は倉庫小売業だけでなく、ロボットとソフトウエア業界にも起きている。ソフトウエアの求人広告の14%が小売業のもので2012年から倍増しており、全米各地に拡大している。ソフトウエア関連の求人動向はオートメーション進展の指標ともなっている。
 アマゾンはソフトウエアで5,000人、エータ処理など機械処理で250人を求めており、ウオールマートも475名のソフトウエアと技術職を求人している。

 各社とも、ソフトウエア革新による更なる発展を目指している。アマゾンは年次の“ピッキング・コンテスト”を開催する中で、新進企業や大学を競わせて効率良い整理棚からの商品選定を考案させており、同社が革新の先端を切ると見られている。
 しかし現在、ロボットが処理できるのは箱物や固形物に限られており、バスケットボールなどの嵩物、または衣類などの柔らかいものは処理できない。こうした分野の開発が出来れば、カスタム・メイド商品や食品の配達を含めて市場は大きく拡大する。小規模倉庫が多数建設され、より短時間の商品配達が実施されるようになる。他企業もアマゾンへの追随を余儀なくされるが、これらの小規模倉庫は建設コストも低くフル・オートメーションでなくともよい。

 ある識者は「オートメーションは労働力不足の分野で穴を埋めることになるが、労働者を失業させることはないだろう。今不足している分野の問題は深刻化する。ベイビー・ブーマー世代が退職することで、オートメーションで失職した労働者も仕事を見つけやすくなる。この分野で大量失業が街に溢れるとは考えられない」と語る。

発行:公益財団法人 国際労働財団  https://www.jilaf.or.jp/
Copyright(C) JILAF All Rights Reserved.