平成30年度国際労働関係事業(労働組合関係)
本事業参加者による日系企業における労使関係改善および紛争未然防止事例

1.現地セミナー参加者の事例:フィリピン

~労使協議に応じない企業に対して、協議を通した建設的な労使関係の構築の重要性を訴えた結果、労使協議の開催と労組改善要望の一部が実現~

 セミナー参加者より、「日本の労使協議制度についてのレクチャーを聴き大変参考になったが、自分の会社では労働組合を立ち上げたばかりで、まだ経営側が話し合いに応じてくれない。どうすれば良いでしょうか。」との相談がJILAF宛にありました。
 JILAFからは、セミナーにおいて、日本の労使関係・労使協議制度について学んだこと、つまり、労使が対立するのではなく、労使でよく話し合うことが労使双方にとってメリットになることを経営側に伝え、粘り強く「話し合いの場の設置」を求め続けるようアドバイスしました。
 半年後、状況を確認したところ「労働組合として粘り強く協議の必要性を訴え続けた結果、労使協議を2度開催することが出来、労働組合の要望事項についても通勤手当の増額等、改善につなげることが出来ました。引き続き頑張ります。」との報告がありました。

2.現地セミナー参加者(使用者側)からの報告:タイ

~一方的にストライキ決行を宣言する労組に対し、労使協議に基づく解決を説得し、争議なしで合意に至る~

 『今回、労働組合からの紹介があり、JILAFの現地セミナーに労使で出席しました。セミナーにおいて、あくまでも「話し合い」によって問題を解決する「建設的労使関係」について学ぶことで、セミナー参加直後は、良好な労使関係を築くことができていました。
 しかしながら、労働組合執行部の交代を機に労使関係が急激に悪化し、労働組合より賃上げの要求があった際に、「すぐに解決しなければ翌朝からストライキに入る」との今までにない一方的な申し入れが同時になされました。その背景として、アメリカ系の労働団体が新執行部に対し、「団体行動権」を誇張して行使するようアドバイスしたことがあります。
 労働組合の申し入れに対して、当社の顧問弁護士に相談したところ、「正当な手続きを無視したストをやるなら解雇も可能であり、強気に対応すべきである。」とアドバイスされました。経営者として対応に苦慮していた折、JILAFセミナーの「建設的な労使関係の構築こそが労使双方のメリットを最大化する」との内容を思い出し、日本の労使関係に詳しい人に相談しました。その結果、セミナーでも学んだ通り、労働組合がストライキを決行し、それに対し会社側が解雇する等の事態になれば、労使双方が傷つき、労使関係の修復は容易ではないと判断し、夜を徹して労働組合執行部全員と話し合いました。
 こちらが真摯に向き合ったところ、労働組合執行部のスタンスも次第に軟化し、朝方には「一部の要求については妥結することで合意し、残りについては継続協議とする。」ことでストライキを回避し、労使合意に至ることが出来ました。』

3.現地セミナー参加者(労働組合側)からの報告:インド

~労組の要求にゼロ回答を続ける企業に対し、アンケート結果等に基づく協議を継続し、争議なしで妥結に至る~

 『労働組合は企業側に対して、各種手当の要求を行いましたが、最初の回答では全ての要求に対しゼロ回答でした。そこで労働組合はセミナーで学んだ「労使の建設的な協議に基づく課題の解決」に則り、労働者の生活の状況や購買力について調査やアンケートを行い、それを会社側に示すなど粘り強く交渉しました。しかしながら、それでも会社側は、関連会社・近隣の会社に及ぼす影響を根拠にゼロ回答を繰り返しました。
 
 第3回目の交渉で、ようやく会社は一部の項目に対して有額回答を行いましたが、組合側の求める水準とは乖離が大きく、組合側はスト権投票を実施し権利行使を匂わせつつも、あくまで協議を重ねました。
 その後、何回かの労使協議を重ねた後、双方が歩み寄ることで無事、労働争議に至らずに妥結することが出来ました。』

4.招へい事業参加者(労働組合側)からの報告:フィリピン

~労使協議の積み重ねにより、外部圧力を抑えて労働協約の締結
および、日本モデルが労使のコミュニケーション充実に役立つことを実感~

 『企業側とCBA(労働協約)を締結するにあたり、企業側に対して外部の政治グループから労働協約の締結を妨害する動きがありましたが、招へいプログラムの講義で学んだ「労使の話し合いに基づく信頼関係の構築」を実践し、企業側と協議を続けることで、労働組合側の主張の正当性が認識され、労働協約締結に至りました。
 また、労働組合役員としてプログラムに参加しましたが、その後、経営側の労使関係を統括する要職につき、労使のコミュニケーションを担当していますが、その際に、プログラムの内容がとても役に立っています。』

5.招へい事業参加者(労働組合側)からの報告:インドネシア

~企業の課題解決のため労使協議の重要性を訴え、企業情報の開示を確認
あわせて労使共同の企画チームを立ち上げ信頼関係の構築~

 『会社は財務データや経営課題について、労働組合に対して開示することを望まなかったのですが、プログラムで学んだ「企業の経営課題を労使協議で議論し、課題解決に向け労使で取り組む重要性」を背景に、粘り強く交渉した結果、会社が直面する問題を議論するために毎月労使協議を行うことに同意し、会社の情報を労働組合へ開示するようになりました。協議の議題としては生産性、安全管理、業績および従業員の福祉などです。
 また、企業と労働組合は、毎年開催されるファミリーデーを企画・運営するチームを共同で立ち上げました。このイベントは、従業員と会社の一体感を醸成し、従業員のリフレッシュにもなります。
 労使間の風通しを良くすることにより、相互の信頼関係が築かれ始めています。コミュニケーションは労使関係の成功への鍵です。』

6.招へい事業参加者(労働組合側)からの報告:マレーシア①

~企業の労働協約違反に対して、粘り強い労使協議で労働協約順守を確認~

 『私達の会社では、昨年末時点で以下のケースが発生していました。

  1. 夜勤従業員が1週間勤務した後の休日の廃止。
  2. イスラム教徒であるバングラデシュ従業員に対する金曜礼拝の権利の否認。

 どちらのケースも労働協約に違反していました。
 セミナーで学んだ「労使間の課題は協議で解決する」姿勢を貫き、粘り強く交渉した結果、会社は労働協約に基づき撤回することに同意しました。その時、JILAFのプログラムで学んだ話し合いによる問題解決の大切さを実感できました。』

7.招へい事業参加者(労働組合側)からの報告:マレーシア②

~労使共催の各種委員会の設置と委員会内の協議を通じて、企業内の労働組合の価値向上と労使ウィン・ウィンの関係構築~

 『私たちはJILAFのセミナーで学んだ「労使間の課題は協議で解決する」との考え方に基づき、政府に調停を求めるのではなく、経営者側との協議で解決を図っています。
 
ここに至るまでのステップとして、以下の点が挙げられます。

  1. 労働組合の代表者を紹介するための場を設ける。
  2. 労働組合と経営者側との関係を調和させる。
  3. LMC(労使委員会)、女性委員会、食堂委員会、スポーツおよびレクリエーション委員会、環境安全衛生委員会および福祉委員会などの各種委員会を設置する。
  4. 上記のような各種委員会は、労働組合、使用者、労働者間の関係を構築し維持するために非常に重要である。
  5. 会社側からの呼びかけで月に1,2回の割合で各種委員会が開催され、労使で協議し、情報の共有化を図る。その後、労働組合は組合員に会議の内容を伝える。

 現在、労働組合は組合員にとっても経営陣にとっても役立つ存在となっており、労働者の福利厚生、利益、そして生産性と企業の利益を改善するための調和と良好な関係を維持することで、ウィン・ウィンの状況が構築されています。』