パキスタンの基本情報

面積 79.6万平方キロ(日本の2.11倍) (2017年、The World Fact Book(WFB))
人口 2億780万人 ( 2017年、パキスタン政府統計局)
首都 イスラマバード(200万人、パキスタン政府統計局)
主要都市 カラチ1,661.7万人、ラホール874.1万人、ファイサラバード356.6万人、ラワルビンディ250.5万人(2015年推定)(世界年鑑)
主要言語 ウルドゥー語(国語)、英語(公用語)、パンジャブ語、シンド語、ほか
民族 パンジャブ系48%、パシュトゥーン系15%、シンド系14%など(WFB)
宗教 イスラム教96.4%、ほか(2010年、WFB)
GDP 3,040億米ドル(2017年、ジェトロ) ※産業分野別比率は本文第5項参照
一人当りGDP 1,541米ドル(2017年)(ジェトロ)
労働力人口 5,732万人(2015年、ILOデータベース) ※産業分野別比率は本文第5項参照
産業別分布(%) 農林水産業 19.8% 、鉱業 3.0 % 、製造業13.6%(2015年、(公財)国際金融情報センター各国情報より)
IL0中核8条約要 批准総数:36、中核8条約:批准8(すべて批准) (2018年6月、ILO)
通貨 1パキスタン・ルピー(PKR)=0.95円 1米ドル=114.0PKR(2018年前半、IMF)
政治体制 共和制
国家元首 アリフ・アルビ大統領(2018年9月就任)
議会 2院制:上院104議席・任期6年、下院(国民議会)342議席・任期5年
行政府 首相、閣僚会議のもと内閣府と35省。シャヒド・アバシ首相(2017年8月就任)
主な産業 農業,繊維産業
対日貿易 対日輸出484.4億円、 対日輸入2,606億円(2017年、財務省統計)
日本の投資 169億円(2017年、財務省統計)
日系企業数 83社(2017年、ジェトロ・カラチ事務所)
在留邦人数 1,078人(2018年、外務省統計)
気候 亜熱帯の乾燥気候、7,8月のみ降雨期(カラチ)
日本との時差 -4時間
社会労働情勢概要 ・2017年の経済成長率はここ10年で最も高い5.3%だが、外資導入に向けたインフラ整備が遅れており、電力供給、交通インフラ、職業訓練の改善などが課題。
・2017年に人口が2億人を超えたが、1日2ドル未満で暮らす貧困層が国民の半数以上。労働力の4分の3は就業環境が劣悪なインフォーマルセクターで働いている。
・労働法制の履行が不十分であり、輸出加工区では労働者と労働組合の権利が制限されている。農林水産業の就労者が全体の4割を超えるが労働法の適用対象外である。
・労働法は2012年の憲法改正により基本的には州行政の管轄。輸出加工区では労働者の権利が制限され、農林水産業には労働法は非適用。労働裁判に係争中の事件増加。
・労働組合は2005年にナショナルセンターがパキスタン労働者連盟(PWF)に統一されて以降、労働者の組織化、労働条件の引上げ、政府との対話などに取組んでいる。
主な中央労働団体 パキスタン労働者連盟(PWF:Pakistan Workers Federation)
労働行政 パキスタン労働省(MOL: Ministry of Labour of Pakistan)
中央使用者団体 パキスタン使用者連盟(EFP:Employers’ Federation of Pakistan)
最終更新日 2018年 9月 30日
主要統計
(GDP)
201220132014201520162017
GDP成長率 4.43.74.04.14.55.3
一人当りGDP(ドル) 1,2461,2551,2961,4131,4291,465
物価上昇率 (%) 11.07.48.64.52.94.2
失業率 (%) 6.06.26.05.9

1.政治と社会の動向(1945年以降)

事項
1947年 英国から独立し共和国。カシミール帰属をめぐり第一次印パ戦争。
1958年 軍部クーデター、アユブ・ハーン(陸軍大将)、大統領就任。
1967年 パキスタン人民党(PPP)創設、パキスタン・ムスリム連盟(PML)と二大政党に。
1970年 初の総選挙。西部ではPPP多数、東部ではバングラ独立派のアワミ連盟多数。
1971年 ブット大統領。内戦ののちバングラデシュ独立。第三次印パ戦争。
1973年 議院内閣制に移行、アリ・ブット首相(PPP)
1978年 クーデターで戒厳令、軍幹部のハックが大統領主任。1979年、アリ・ブット処刑。
1988年 民政復帰総選挙でPPP勝利、ベジナル・ブット(アリ・ブットの娘)首相。
1990年 総選挙でイスラム保守派勝利。パキスタン・ムスリム連盟(PML)のシャリフ首相。
1998年 シャリフ政権、核実験実施。
1999年 軍部クーデター 軍幹部のペルベズ・ムシャラフが大統領就任。
2002年 総選挙、パキスタン・ムスリム連盟(PML)勝利
2007年 大統領選、ムシャラフ当選。野党はボイコット。ベジナル・ブット元首相暗殺。
2008年 総選挙でPPP勝利、ギラニ首相。大統領選挙でザルダリ(PPP)当選
2013年 文民政権初の任期満了総選挙でPPP惨敗、PML-N圧勝。ナワズ・シャリフ首相。
2018年 総選挙でパキスタン正義党(PTI)勝利、党首イムラン・カーンが首相就任。人口2億人超。

2.国家機構

元首

  • 大統領。象徴的存在。
  • 任期5年、上下両院による間接選挙。

議会

  • 二院制。上院および下院(国民議会)。 
    上院:104議席(任期6年、3年毎に半数改選、州による間接選挙で選出)
    下院(国民議会):342議席、国民による直接選挙。(任期5年)
     (議席:2018年7月総選挙)
     パキスタン正義運動(PTI)115、パキスタン・イスラム連盟シャリフ派(PML-N)62、パキスタン人民党(PPP)43

司法

  • 最高裁、連邦イスラム法廷、高裁(4州とイスラマバード)

地方行政

  • 4州と2直轄地、カシミール地方。州知事、州議会、州首相、州政府あり。
  • 4州:パンジャブ、シンド、バルチスタン、北西部・ペシャワル
  • 2直轄地:イスラマバード首都圏、連邦直轄部族地域(FATA)
  • カシミール地方(実効支配地域)アザト・カシミール、キルギット・バルティスタン州

3.政治体制

政体

  • 連邦共和制
  • 大統領は共和国の統一を象徴する存在
  • 首相が政治の実務的な最高権者

主な政党

パキスタン正義運動
(PTI)
カーン政権の与党。1996年にクリケット選手として国民的人気のあるイムラン・カーンにより創設された。政治思想は中道的であり、共同体主義、反腐敗、イスラム的かつ現代的な福祉国家の継続を掲げる。長らく少数政党であったが、2013年の総選挙では30議席超、2018年には第一党となった。
ムスリム連盟
ナワズ・シャリフ派
(PML-N)
1906年創設の全インドムスリム連盟を前身に持つこれまでの二大政党の一つ。これまでに党内対立が絶えず、1990年代にシャリフPML総裁(首相)のグループとアーザム派に分裂、アーザム派はPPPと連携したが衰退した。PML-Nは2013年の総選挙で圧勝、今年の総選挙まで政権を担った。
パキスタン人民党
(PPP)
1970年代に大統領、首相を務めたアリ・ブットが1967年に創設。中道左派といわれ社会主義インターに加盟。民主政治、世俗主義を強調するとともに、産業の国有化などの社会主義(イスラーム社会主義)、労働者や農民の生活向上、国民の国防参加を掲げる。外交面ではインドとの対抗上から親中・親米政策。
統一行動評議会 パキスタンのイスラム主義政党の連合。ファズルル・ラーマン師率いるイスラム急進グループが中核だが、他の原理主義的な集団も参加。2002年の総選挙では約60議席を獲得し注目されたが現在は少数政党。

4.人口動態

  • 2017年の人口は2億870万人で、はじめて2億人を超えた(19年ぶりの国勢調査による) 。国連の推計では、2030年に約2億4,400万人、2050年に3億700万人、2100年には3億5,200万人になると見込まれている。

5.産業構造と就業構造

主要産業

  • 代表的な産業は農業と繊維産業。DGPの産業別構成比はサービス業等56.3%、農業等24.7%、製造業等19.1%(2017年、WFB)

労働力人口

  • 2015年の労働力人口は5,732万人。分野別の構成比:農業等42.37%、製造業等22.6%、サービス業等35.12%(WFB)。

6.経済状況

経済情勢

  • 2013年に発足したシャリフ政権はIMFの支援を受け財政赤字削減、投資環境整備、国営企業改革など、経済・財政の立て直しに取組んだ。
  • 経済成長率は2017年にここ10年で最も高い5.3%となる。内需の拡大や中国パキスタン経済回廊関連のインフラ開発が寄与したといわれる。
  • 一方、外資導入のための経済基盤の改善は遅れており、とくに安定的な電力供給、運輸交通インフラの整備、製造業の成長のための職業訓練の不足などが深刻。計画停電が頻繁に発生し、電力不足による損失は、GDPの4%といわれる。
  • なお、経済特区(SEZ)や輸出加工区(EPZ)では、①法人税免除、②資本財・原材料の無税輸入、③業種を問わない100%外資の参入可能措置―などの方策が講じられており、日系企業・事業所の進出も行われている。

7.労働組合の組織

ナショナルセンター

パキスタン労働者連盟(PWF)
主要課題・活動方針:
  1. 未組織労働者の組織化、児童労働・隷属労働の撲滅
  2. 女性・青年の労働組合活動への参加促進
  3. 「労働法」の改正、「労働法」の適切な適用
  4. 政府との政策対話の促進
  5. 賃上げと安全衛生活動の推進

 なお、パキスタンでは長い間、3つのナショナルセンターが競合していたが、2005年に、それらの組織が統合して今日のPWFが結成された。これについては、JILAFの現地支援活動が側面から寄与したといわれている。
(※)詳細は国際労働財団HPの「ナショナルセンター情報」参照。

8.支援組織、国際産業別労組(GUFs)の活動

現地協力・支援活動実施

  • 日本JILAF、ドイツFES、米国ACILS、豪州APHEDA、フィンランドSASK、スウェーデンLO-TCO、ベルギーACVが支援・協力事業を展開
  • GUFsは加盟組織を通じて支援。

現地事務所設置

  • 上記のうち、ドイツFES、米国ACILSが現地事務所を設置して事業展開。

9.労使関係と労使紛争

  • 労働法は2010年の憲法改正により基本的には州の行政により扱われているが、格差とその是正の問題が生じている。これに関して、2012年に「労使関係法」の改正が行われた。
  • 労働法の履行がきわめて不十分であり、輸出加工区では労働者の権利が制限されており、労働人口の4割以上を占める農業労働者には労働法が適用されない。労働裁判所に係争中の事件は増加している。
  • 労働組合は2005年にナショナルセンターがパキスタン労働者連盟(PWF)に統一されて以降、未組織労働者の組織化、最低賃金の引き上げ、労働条件の改善、政府との対話による政策の実現に向けての取組みを強めている。

10.最低賃金制度と労働・社会保障法制

最低賃金

  • パキスタン政府は2018年の最低賃金を月額15,000ルピー(約14,300円)と定めた。

最低賃金等の推移

(単位:パキスタン・ルピー)

  2014年 2015年 2016年 2018年
最低賃金
(月額)
12,000 13,000 14,000 15,000

(資料:パキスタン政府)

  • 最低賃金は、「最低賃金法」(1961年)にもとづいており、50人以上の労働者を雇用する産業や商業施設にのみ適用。ただし、監督体制が不十分であり、その強化が求められている。

労働・社会保障法制

  • おもな法制はつぎの通りである。
    「労使関係法」(2012年)(※)、「工場法」(1972年改正法)(※)、「小規模店舗法」(1969年)、「社会保障法」(各州など)、「労働者福祉基金法」(1971年)
    (※)は国際労働財団HPの「アジア労働法データベース」に日本語訳がある。
  • 2012年の「労使関係法」の改正では2010年の憲法改正との整合性が問題となり、2012年に改正が行われた。これについて、ITUCなどの国際労働団体、日本の連合、国際労働財団などが支援を行った。

11.日本のODA方針(外務省・「国別開発協力方針」(2018年2月)より)

  • 基本方針:パキスタン政府が取組む「国家SDGsフレームワーク」に留意しつつ、民間投資を呼び込む触媒としてODAを活用し、人口の3割を占める中堅層を拡大するための支援を行う。
  • 重点分野:①経済基盤の改善。とくに安定的な電力供給、運輸交通インフラの整備、自動車産業など製造業の成長のための技術教育・職業訓練、②人間の安全保障の確保と社会基盤の改善、とくに教育、保健・衛生、農業、防災など、③平和と安定の確立。社会の安定化と再生支援、交通等における対テロ能力の強化等。

12.JILAFの事業

  • 招へい事業:1989年に開始し、これまでに93人(男性81人、女性12人)の若手労組指導者を招へい(2017年度末現在)。
  • 現地支援事業:1994年より現地事業をはじめ2017年度まで毎年実施(2011年除く)。テーマは、「参加型職場環境改善」(1994~2004年)、「家族計画」(1994~2003年)、「女性」(1997、1998年)、「組織統合」(2004、2005年)、「労使関係(団体交渉、労働法含む)」(2006~2010年)、「労使関係・青年労働者」(2012、2013年)、「労使関係・労働政策」(2013、2016、2017年)。