2015年 フィジーの労働事情

2015年11月13日 講演録

フィジー労働組合会議(FTUC)
ウダイ・ナラヤン・ラジュ

通信・鉱山・一般労働者組合連合 会長

 

1.労働情勢

  2013年 2014年 2015年(見通し)
実質GDP(%) 4.6% (暫定) 5.3% (予想) 4.3% (見込み)
物価上昇率(%) 2.9% 0.5% 2.8%
最低賃金 2ドル 2ドル 2.32ドル
労使紛争件数      
法定労働時間 8時間/日 40時間/週 時間外/割増率 休日/割増率

 通信・鉱山・一般労働者組合連合は、電信会社のフィジー・テレコム、鉱山のゴールドマインド、郵便局のポストフィジーの3つの企業、職場で働いている労働者で構成しており、組合員は約2500人である。加盟しているナショナルセンターのフィジー労働組合会議(FTUC)は、27組合が加盟しており約3~4万人の組合員を擁している。もう一つ、FTICUという小規模なナショナルセンターもあるが、政府から認められていないため、労働組合として活動が抑制されている。

2.労働組合が直面している課題

 現在、労働者の約2割は、多くの労働分野において組織化されていない。政府が制定した労働者にとって不利な『雇用関係法(Employment Relations Promulgation:ERP)』に、組織率が低いため、阻止できない状況にある。
 フィジーでは、人口の6割を占める先住民のフィジー系と、英植民地時代に移住したインド系の民族対立などを背景にクーデターが頻発していた。
 2006年の軍事クーデター発生以降、2014年9月まで軍事政権が国を掌握していた。これにより、憲法が停止されてしまい、軍事政権が発布したさまざまな法律が憲法に取って代わった。2007年に発効されたERPにより、使用者は20日前に通告すれば労働者を容易に解雇できることになった。スーパーなどで働いている労働者は、労働組合に加入したら、使用者側がERPによって、安易に解雇されることを恐れて、労働組合に入りたがらない。
 しかし、政府はさらに現在のERPに加えて、2011年に政令第35号『基幹国営産業雇用令(Essential National Industries (Employment) Decree:ENI)』を打ち出した。この法律のもとで、団体交渉する場合は、上部団体もしくは所属している加盟組合の書記長などが交渉するのではなく、その企業に勤めている従業員代表が交渉の場につくことを強制している。バーゲニング・ユニット(交渉単位)は75人で構成されており、75人の定員数に満たない場合、団体交渉ができない。バーゲニング・ユニットは、実際に企業や職場で働いている人たちが構成する交渉担当グループである。労働組合は解散に追い込まれたが、バーゲニング・ユニットだけが機能しているフィジー航空労働者組合などの例もある。

3.課題解決に向けた労組の取り組み

 これらの問題を解決するために、FTUCは国内外で継続的に圧力をかけている。労働者の権利に影響を及ぼすこれらの政令を排除し、国内労働者の権利を支援する適切で公正な法律を制定するため、政府や国際労働機関(ILO)に働きかけている。
 近年のフィジーにおける労働組合の権利にかかわる問題は、ILOも問題視しており、2015年3月のILO総会でガイライダー事務局長立会いのもと、フィジーの政労使代表による合意書が署名・締結されるという大きな動きがあった。
 合意に至った内容は以下の通りである。

  1. フィジーにおける労使関係すべてを規定する法律は、2007年の『雇用関係法(ERP)』とすること。
  2. すべての法律改正に関して、ILOの中核的労働基準である第98号条約(団結権及び団体交渉権条約)と第87号条約(結社の自由及び団結権保護条約)を反映すること。
  3. 2013年に政労使三者で見直したERPを実行に移すこと。
  4. チェックオフ・システムを復活させること。
  5. これらの実行に関して、ある一定の期間内に実行すること。
    (2015年8月末までに議会で承認、法案を通過。施行は2015年10月末)
  6. 2015年6月のILO総会に、政労使三者が共同作成した報告書を提出すること。

 しかし、2015年10月末までに法案を施行できなかったため、この問題は雇用関係諮問委員会に提出された。この諮問委員会においても、政府から提案された内容に対して労働側が合意しなかったことで話が進まず、ILOからは11月1日までに改めて問題を解決する努力をするよう促された。
 この問題は、団体交渉において労働組合ではなく、従業員で構成するバーゲニング・ユニットでの交渉を強いられていることであり、バーゲニング・ユニットに参加している従業員が、余剰人員として解雇される可能性も懸念されている。
 2015年10月下旬に労働担当大臣が就任し、新労働大臣と意見交換を行う機会を得た。私からENIに関するさまざまな問題を提起した。大臣の姿勢はかなり前向きなものであった。大臣は、11月11日にILO本部を訪問する予定で、私の帰国後に、再度労働大臣と懇談することになっており、新しい展開を期待している。この懇談が、現在われわれが直面している問題を解消するひとつのきっかけになればと思っている。
 2015年11月下旬に、ILOはフィジーの労働大臣との会合を経て、フィジーに調査団を派遣するとこと確定した。フィジー政府は、ILO調査団を受け入れるとともに、政労使を一堂に集め、問題の解決を促し、2016年3月末までに問題解決につながる何らかの決定を行わなければならないこととなった。