2013年 フィジーの労働事情

2013年6月7日 講演録

フィジー労働組合連盟(FTUC)
セニメリア マラマ ヴキ
Ms. Senimelia Marama VUKI

女性青年部門担当書記

 

1.全般的な状況

 フィジー労働組合(FTUC)の加盟組合数は26組合、総加盟人員数は約3万人である。2006年に軍事政権が成立し、それ以来人権その他の労働組合権が大きく後退した。
 フィジーではほとんどの労働力が、衣料、小規模製造業、小売、漁業、その他のインフォーマルセクターで雇用されているが、雇用条件は良くない。フィジーには、全国的な最低賃金制度はない。労働関係の法制度についても、その施行状況はお粗末である。労働力の3分の1が女性である。
 フィジーでは、医療産業は1億ドルにもなる成長産業と言われているが、賃金調整評議会によると、医療産業における労働者1人当りの賃金は、成長産業と言えるものではなく、見習期間の労働者で1時間1ドル65セント、常勤労働者で1ドル96セントと言われる。
 この賃金調整評議会は労働省の下にあり、10の代表的な産業の代表者、つまり道路交通、印刷、卸売業、小売業、ホテル・ケータリング、衣料産業、製材・木材産業、漁業という10の異なる産業の代表者から構成されており、労働省に対して適切な賃金の調整を提案する役割を果たしている。
 この賃金調整評議会は三者構成で、経営者側、労働者側、1人か2人の中立系の機関からの代表者、および政府の代表者が加わっている。ただし、実際の賃金引き上げは、この賃金評議会の提案よりもずっと低くなるのが現状である。現実には、衣料関係の労働者は、いわゆる貧困ラインに満たない賃金しか得ていない。
 フィジーでは政治、経済的な状況から、ここ数年失業率が上がっている。2010年、2011年は7%だったが、現在は8.6%に上昇している。失業者には19~30歳の若い年齢層が多く、最も生産性が高い年代に失業が多い状況となっている。2012年の労働省の発表によると、高等教育を受けた9523人がまだ失業状態にあるという。これは、労働市場に十分な雇用がないということであり、新しく卒業する若者を吸収できるだけの雇用が創出されていないということである。雇用市場を広げ、小規模零細企業の開発を促して、教育を受けている若者の雇用を創出していく必要がある。
 政府は失業対策として、労働省の下に全国雇用センターという職業紹介所を立ち上げている。
 自営業を含め個人で小さな企業を立ち上げたいと希望する者を対象に、フィジーボランティアサービスセンターが設立されている。このボランティアサービスセンターは、強い意志を持って、公の場で何か奉仕をしたいと希望している者に対してもサービスを提供している。
 政府は、失業者を対象に外国に職業を紹介・斡旋する紹介所も設立した。そこでは能力と専門知識を有する者に海外の雇用、職業の紹介が行なわれている。ドバイ、イラク、中東各国、ニュージーランド、オーストラリア、アメリカからの需要に応える形で職業を紹介・斡旋している。
 フィジーの主要な労働関係法は、『雇用関係法(ERP:Employment Relations Promulgation))である。しかし政府は、『雇用関係法』を改定するような形で、さまざまな政令を発し、労働組合を弱体化しようとしてきた。例えば、フィジーの公共部門では、組合費の天引き制度が廃止された。政府は公共部門の労働組合を認めず、もはや公共部門の団体交渉は存在しない。

2.労働組合が直面する課題

 労働組合が直面している最も大きな課題は、政府によって反労働組合的な政令が次々と公布されていることである。これらの政令は、労働組合の権利を阻害し、ILO条約にも違反している。2つの政令を紹介する。
 一つが、一方的に公布された2011年政令第21号『改正労働関係法』である。この政令により、『雇用関係法(ERP)』に規定されている公務員の労働基本権がすべて剥奪された。
もうひとつの政令は、政令第35号『不可欠国営産業雇用法(Essential National Industry Employment Decree)』という名称の政令である。この政令によって、砂糖、航空、観光業など不可欠業務と見なされる産業における労働組合の活動が大きく制限された。これらの産業においてはすべてのストライキが禁止され、しかも、使用者側に財政的に不利になるいかなる行為も禁止された。職場を解雇されると、労働組合の役員という立場も剥奪される。使用者の合意がなければ、時間外労働、休日出勤、祝祭日出勤の手当ても支払われない。この政令により、現行の労働協約は60日間で失効し、それ以降は無効になる。使用者の意向に沿わなければ、企業と個々の労働者の雇用契約も成立・更新されない。この政令を遵守しない場合は有罪となり、5万ドルの罰金を科せられる。
 労働組合が抱えるもう一つの問題は、若者の組合員、特に女性の組合員の数が減っていることである。リーダー的な立場の女性の数も少なくなっている。政府は労働組合が政府のさまざまな決定に係ることを拒否しているので、女性の労働条件が改善される状況にはない。

3.労働組合は課題にどういう対策を講じているか

 反労働組合的な政令に対して労働組合はまったく手の打ちようがなく、また法廷で争うことも許されていない。政府を変えることしか方法はない。労働者のことを考えてくれる、新しく民主的に選ばれた政府だけが、基本的人権や労働組合の権利の尊重など、より良い統治を保証する。
 青年労働者を労働組合に引き付けるためにFTUCは、組織委員会を立ち上げて、青年委員会とともに活動を展開している。現在のような政治状況のため、労働組合は労働者に直接話しかけることは極めて困難な状況にある。FTUCは女性に対して組合加入を促進し、積極的に労働組合活動に参加してもらうために教育プログラムを実施している。

4.その他

 FTUCは、ITUCやILOから国際的にさまざまな支援を受けて、労働者の状況を改善する取り組みを行なってきた。連合を始め多くの労働組合からも、フィジーにおける人権の尊重、そして民主化に対して、国際的な支援を受けていることに感謝する。
 来年2014年には総選挙が予定されている。来年総選挙をやりたい、総選挙がやれると思っている。その総選挙に向けて、一般の国民に労働問題への支持を拡大するために、FTUCは政党を立ち上げた。
 現在、ジュネーブにおいてILO総会が開催されている。今回のILO総会ではフィジーの問題も条約勧告適用委員会で取り上げられることになっている。