2016年 アメリカの労働事情

2016年9月28 講演録

アメリカ労働総同盟・産別会議(AFL-CIO)
Ms.ジェニファー ブルック ドーニング

専門職従業員部 会長付・調査ディレクター

 非正規労働の厳密な定義はないが、不安定雇用ということでみると、全労働力の約34%、4,880万人を占め、うち最も多いのがパートタイム労働者で2,730万人で、他に派遣労働者、オンコール・ワーカー、契約社員、独立請負人等が挙げられるとしたうえで、低賃金の他に、付加給付が無いこと等の具体的問題点を非正規雇用の形態別に指摘した。そのうえで、労働組合の結成をめぐる課題や非正規労働政策、非正規労働者の保護に関する個別的な最近の進展状況について紹介した。
 

アメリカにおける非正規の定義

定義は統一されていないが、一例として以下に分類できる。

  • (1)派遣労働者(Temporary workers)
  • (2)契約社員(Contract company workers)
  • (3)日雇い労働者(Day laborers)
  • (4)オンコール・ワーカー(On-call workers)
  • (5)標準的パートタイム労働者(Standard part-time workers)
  • (6)自営・非法人の独立請負人(Self-employed, unincorporated/independent contractors)

 派遣労働者は、派遣会社に雇用されて、ある会社に派遣される。契約社員は契約会社に登録して、短期間派遣される。日雇い労働者は、1日ごとの契約の労働者。オンコールワーカーは、必要なときに呼び出されて仕事をする。また、標準的なパートタイム労働者がある。さらに、アメリカでは、週35時間未満の労働時間で、上の5つに含まれない人で、自営・非法人の独立請負人という区分があり、サービス、あるいは、製品を独立して提供している。

非正規労働力の数値化

 非正規労働力を数値化すると、米国の全労働力の約34%、4,880万人となる。

  • 〇形態別内訳:
    • ・派遣労働者 –        290万人(2016年5月現在)
    • ・契約社員 –         460万人(2015年)
    • ・オンコール・ワーカー –   390万人(2015年)
    • ・パートタイム労働者 –    2,730万人(2015年)
    • ・独立請負人 –         1,010万人(2016年)

時間当たり賃金の中央値比較

時間当たり賃金の中央値比較

 時間当たりの賃金で見ると、アメリカのすべての労働者の中で、派遣労働者の水準が低くなっている。派遣労働は、輸送・資材運搬、製造業の組み立てライン、事務補助、建設、あるいは資源採掘など、肉体労働等の職種が多い。

非正規労働者の抱える課題

 非正規労働者がそれぞれ抱える課題は、以下の通りである。

  • 〇派遣労働者
    • ・正社員より賃金が低い
    • ・社会保障の欠如
    • ・失業手当から除外される場合がある
    • ・危険な労働環境
    • ・雇用の保障がほとんどない
    • ・貧困生活の可能性が高い
  • 〇契約社員
    • ・低賃金
    • ・社会保障の欠如
  • 〇日雇い労働者
    • ・実際的な職場保護がほとんどない
    • ・賃金未払い
  • 〇オンコール・ワーカー
    • ・低賃金
    • ・社会保障の欠如
    • ・不安定な勤務日程
  • 〇パートタイム労働者
    • ・フルタイム労働者より初任給が低い
    • ・社会保障の欠如
    • ・不安定な勤務日程
    • ・失業手当からの除外
  • 〇独立請負人
    • ・失業保険および労災保険がない
    • ・団体交渉権がない

米国の職場における労働組合の結成

 ほとんどの民間セクターでは、組合を結成することはできるが、使用者側が抵抗する場合もある。

  • 〇民間部門の職場
    • ・ほとんどの雇用者に対して、組合をつくる権利は連邦法で保護されている。
    • ・労使関係が存在していなければならない。
    • ・使用者が組合を結成することに自ら同意しない限り、個々の職場は組合結成のため選挙を行わなければならない。
    • ・米国の使用者のほとんどは、組合組織化運動に抵抗している。
  • 〇公共部門の職場
    • ・連邦職員 –  組合をつくる権利がある。
    • ・州および地方職員 – ほとんどの職員は組合を作る権利を有しているが、組合権を制限する州が増えている。

非正規労働者に資する社会運動

 州や連邦、それぞれの地方レベルにおいて、社会的な動きがあり、最低賃金では、「ファイト・フォー・15ドル」と、1時間15ドルを求める闘いがある。

  • 〇最低賃金引き上げの提案
    • ・15ドルを求める闘い
  • 〇公正で予測可能な勤務日程を求める提案
    • ・小売労働者の権利章典
  • 〇有給病気休暇
  • 〇保育費
  • 〇家事労働者の権利章典

非正規労働政策

 以下のように、サプライチェーンにおけるすべての使用者側の責任を求めていくこと等が重要になっている。

  • 〇使用者の責任を重視
    • ・現行法の執行と必要に応じた規制の強化
    • ・非正規労働の創出や非正規労働への転換の抑止
    • ・フルタイム雇用の促進
  • 〇共同使用者責任(派遣先・派遣元企業や、親会社・下請会社の共同責任)の義務付け
    • ・直接的及び間接的使用者に、責任を負わせること
    • ・賃金未払いの差し押さえ
  • 〇不安定な労働者に対する権利と保護の拡大
    • ・団体交渉活動に対する保護の拡大
       WAGE法(Workplace Action for Growing the Economy Act)
    • ・レイオフに対する保護 –  失業保険
    • ・非正規労働から正規雇用への移行
  • 〇全労働者に団体交渉権を保証
    • ・ブラウニング・フェリス :団体交渉における共同使用者責任を認めたこと
    • ・ミラー&アンダーソン社 :派遣労働者と契約社員を、直接雇用者と同一の交渉に含めることを認める
  • 〇ビジネスの条件を公平にする
    • ・契約入札の安値競争の制限
    • ・良質な雇用を生み出した企業には恩恵を提供

非正規労働者の保護に関する最近の進展

 最近の成果をまとめると、以下の通りである。

  • ・ブラウニング・フェリスのケースに対する全国労働関係委員会の決定
  • ・ミラー&アンダーソン社のケースに対する全国労働関係委員会の決定
  • ・連邦の請負案件を規制し、介護労働者(直接雇用)への保護を拡大する大統領令にオバマ大統領が署名
  • ・地方および州議会において最低賃金引き上げと、パートタイム労働者の保護を獲得
  • ・臨時雇用労働者の調査に対する、連邦政府の資金提供