2005年 アメリカの労働事情

2005年1月21日 講演録

エリー・ラルソン
客室乗務員・通信労組(AFA-CWA・会長補佐)

ランディー・ベリエル
小売・卸売・百貨店労組(RWDSU・副会長)

 

(エリー・ラルソン)

 JILAF、そして連合の皆さん、この大変すばらしい貴重なプログラムを通して日本の労働運動を学ぶ機会をいただきまして、ありがとうございました。また、あわせて、新しい友人をつくる機会にもなりました。このように国際的に一緒に仕事をしてこそ、初めて将来の組合のグローバルな問題の解決の可能性があります。
 私は、AFL-CIOを代表して、参加させていただきました。私の出身は客室乗務員・通信労組でありまして、少し組織の紹介をしたいと思います。そうすることによって、私どもの考え方、そして将来に対する展望をどう持っているかということをわかっていただきたいと思います。
 AFAはおそらく、世界でもほんとうの意味でのグローバルな労働組合だと思います。組合員の数は5万人、そして26の航空会社が加盟しております。職場も、生活の場も、世界の8カ国にあります。これは、アメリカ以外に8カ国ということであります。そういうわけで、大変ユニークな課題を抱えております。組合員の課題は、いろいろな国に住んでいるばかりでなく、文化も、使う言語も、そして考え方、労働組合に対する考えも違う、労働組合に対する期待も違うということから、ユニークな課題があります。
 2004年1月に、私どもはアメリカ通信労組と統合いたしました。労働組合運動の将来は、ますます統合が進んでいくであろうと思います。力を強化し、そして競争力を強化するために必要なことであろうと考えております。CWAは、80万の組合員を有しておりまして、8つのセクターのさまざまな人をカバーしております。レポーター、通信、それから印刷、また公務の人たちといったように、多岐にわたるセクターをカバーしておりますので、そういう意味でさまざまな課題を抱えております。
 私どもはAFL-CIOの組合員でありまして、AFL-CIOの組合員数は1,300万であります。大変な数と思うかもしれませんが、しかし組織率はアメリカではどんどん落ちております。現在では、民間の労働者の組織率はわずか8%であります。これに官公部門に働く労働者、公務員を加えましても、組織率はわずか13%でありまして、その率もどんどん落ちているところであります。これが、労働組合運動としての課題の1つであります。どうすれば組合を今後の世代にとって身近なものにしていくことができるか、そして、国の中でも力のある組織として育っていくことができるのかという課題を抱えております。

AFL-CIOの3つの活動領域

 現在、AFL-CIOの理念は、労働組合には三角形のミッションがあるというものです。三角形の辺は何かといいますと、団体交渉、政治活動、そして組織化、この3つであります。いずれも、同じように労働組合としての影響力を持たなければなりません。ところが、後ほどお話しいたしますけども、現在はAFL-CIOの中でも意見が分かれております。この考え方をさらに推し進めるべきなのか、それとも労働組合としては将来に向けてまた別な考え方を持つべきかという意見で分かれております。

ブッシュ政権の下での労働運動の課題

 その前に若干、皆様にとっての関心事に触れたいと思います。それは、新しいブッシュ政権のもとで組合はどのように存続するのかということです。ブッシュの組合嫌いは、公然のことです。ブッシュは、自分たちのやりたいことに対して私どもは破壊要素であると書いておりまして、アメリカで唯一団結して、ブッシュがやりたいことに反抗する組織だと考えております。
 現在、ブッシュ政権は、労働組合つぶしを組織的にやろうとしております。そして自由貿易の促進と組合活動の法制化の重要性を口実に、国民に対して、労働労組合は労働者に必要がないと強調して、組合つぶしをしようとしています。ブッシュ政権は、非常に巧妙な手を打っております。政権は、労働組合に影響を与えるような組織の人事権を持っております。それには2つあります。全国調停委員会と、全国労働関係局であります。全国調停委員会は航空業界に影響がありますし、また全国労働関係局は、アメリカで組織化されている交通以外の産業を管轄しております。
 ブッシュ大統領がこれまでやってきて、今後も行おうとしていることは、権力の中枢に反労働組合主義の者を指名することです。そのために、法律を口実に使う。組合にとって仕事をやりにくくしていってしまいます。おそらく、私どもは60年、70年前にさかのぼることになるかと思います。現在の闘いは、まさに60年、70年前、つまり組織化の活動です。労働者の代表を選ぶための自由な選挙をするためにも闘わなければならない。また、労働組合が組合員をよりよく代表する形で運営していくためにも、闘いを展開しなければなりません。
 ブッシュ政権が導入したいと考えているものがあります。法律ですけれども、それは、いわゆるベースボールスタイルの調停というものであります。ブッシュ政権が法制化を図っているのは、例えば、何らかの形の苦情があって、それが産業の今後の将来に影響があるような場合には、仲裁にかけることができます。そして、それぞれの当事者がそれを説明するわけです。通常の仲裁ですと、それぞれが立場を説明するわけですけれども、この種の仲裁ではどうなるかといいますと、一方の当事者が「このような結果が望ましい、」そして他方では「こういうことであって、結果はこうあるべきだ」ということを主張するわけです。そこにはギブ・アンド・テイクの交渉はありません。とにかく仲裁の側で裁定を出してしまいます。
 ブッシュは再選されたわけですから、自分のやりたいことをやっても構わないという自信を持っております。昨年はそれを阻止することに成功したんですけれども、今年はうまくいくかどうかわかりません。
 そのほかに大きな課題として我々にかかわってくるのは、医療、それから年金改革があります。いずれも、経営者、そして労働組合が力を合わせて改革を図ることができる可能性のある分野ではありますけども、果たしてそれができる機会があるかどうかわかりません。民間の医療のモデルをこのまま維持する、また年金、これまで非常に手厚かったわけで、それが続くかどうかということはわかりません。

団体交渉に関する取り組み

 つぎに団体交渉、そして代表制。これも、アメリカにおきましては攻撃を受けています。団体交渉は、特に危機に瀕ております。というのも、多くの産業がもはや、団体交渉を通じて、福利厚生の改善、あるいは賃金の向上、労働条件の改善を図ることが期待できなくなっているからであります。
 グローバル化の影響の1つ、またFTAの影響の1つとしては、本来でしたらば、労働者の生活が諸外国において向上し、そしてギャップをなくして発展途上国の生活水準を上げるはずだったのが、実際に起こったことはその逆でありました。アメリカの労働組合は、残念ながら、労働条件、賃金を上げるどころか、現状維持、あるいはむしろそれを切り下げざるを得ないような状況に直面しております。労働条件切り下げ競争を余儀なくされております。もちろん、これで一番の影響を受けるのは労働者であります。
 アウトソーシングの問題、それからまた移民の問題も、そうした負担をさらに複雑なものにしております。団体交渉、あるいは労働協約を通じてのみ、我々はこうしたアウトソーシングを制限することができるわけです。そして、その影響を、なるべく我々労働者たちに小さいものにしようとする。また、同時に、やはり企業が成長するという希望を持っています。
 我々が考えていること、我々の責任として、やはり労働者を代表することが重要なわけです。我々の組合員を代表する。そしてまた、我々の組合員になる可能性のある人たちを代表する。そして、世界中の労働者、いわゆるグローバルな、何をするべきかということをちゃんと理解することなしに――そしてまた我々は何としても、労働協約を交渉する際には、こういう影響が我々の世界中の組合員に対してどういう影響を与えるかを理解しなければいけないわけです。孤立主義で仕事をすることはできない時代になっているわけです。テーブルに着いた者だけが恩恵を得るような形で交渉をしてはいけないということです。国内、あるいは国際的な労働者の連携を考えなければいけない。それによって、労働者の権利を世界中で促進することを期さなければいけないのです。
 グローバルユニオンというものが、1つの解決策かもしれません。これが、今、労働者が直面している問題に対しての解決ではないか。力を合わせて闘うという姿勢が必要なのではないかと思います。

組織化への取り組み

 最後に、第3の、組織化についてもいろいろな困難が米国では存在しています。法的なもの、また文化的なものもあります。困難の原因は、単に産業や企業の行動様式、労働組合が欲しくない、労働組合が邪魔だという考え方から生まれていることもあります。現在、米国では、反労働組合的な気持ちが使用者に強いわけです。我々は大きな努力を重ねることによって、何とか労働組合を設立するように働きかけているのですが、反組合的なキャンペーンなど我々の組織化を阻害する、第三者の仲裁でも組合は非常に破壊的であると言うわけです。組合は、労働者の代表として働くのではなくて、単にお金が欲しいだけだという言い方をするわけです。ですから、組合の責任としては教育していかなければいけない、啓蒙していかなければいけない。そして、労働者に対して連帯がいかに意味があるのか、法的あるいは政治的な分野で役に立つものだ、あるいは団体交渉の場合にも連帯は非常にすばらしいと訴えていかなければいけないわけです。
 現在、AFL-CIOの中でも意見の相違があります。どうやって組合の組織率を高めていくのか、一番いい方法は何かということを考えているわけです。どうしたら効果的にできるのかと。非常に強力な組合のリーダーの中には、唯一我々の労働運動を進めるのは、組織化を通じてのみだと考えている人もいます。我々の資金、時間、あるいは努力を、立法の面で使うべきではない。また、団体交渉に今ほど力を入れるのではなくて、あらゆる資源を組織化に注ぐべきではないかと。そのグループの考えでは、唯一組合がみずから促進できる、あるいは労働者の利益を図れるのは、労働組合の密度を高めることだといっています。ですから、何百万の組合員を組織化する。そういう状況になれば、組合はやりたいことができるようになる、そして労働者の保護ができるようになるという考え方です。
 別の人たちは、今までと同じように、この3つの軸、政治的な行動、組織化、そして団体交渉で、非常に均衡のある、バランスのとれた形で仕事を進めるべきだということを言っている。
 どの民主主義もそうであるように、労働運動の中にもやはり選挙があるわけです。AFL-CIOの選挙も、あと1年で行われます。そして、どちらのグループもそれぞれのプラットホームを確保しようと努力しているわけです。これが、AFL-CIOが採択するプラットホーム、綱領になるわけです。我々としては、我々労働者を、団体交渉の席だけでは、あまり得ることができない。政府の干渉、介入も強い。あるいは、人々の反感、それから労働運動に対しての共感の欠如というものが国民の中にあるわけです。ということは、企業が破綻してしまう、例えばストライキその他の非常に強固な労働運動を通じて、こういうことを課すということは問題を生むということもわかるわけです。ですから、最善の将来へのチャンスを生むというのは、やはり立法活動です。議員に対してプレッシャーをかけることによって、法律を通過させる。これが将来、労働者の利益になるような形にするのが、最善の形ではないかと思います。

労働運動の将来に向けた課題

 もう一言、個人的に、どういう労働運動のニーズが将来あるかということをお話ししたいと思います。AFL-CIOは、非常によい仕事をしてきていると思います。それによって、いわゆる、労働力で今まで伝統的でない人たちを引きつけている。米国、日本でもそうだと思いますけれども、非常に大きな、いわゆる非典型の労働者の数が増えているわけです。例えば、パートタイム労働者の数が増えている。それからまた、独立のコントラクター、フランチャイズ、あるいは一時的なテンポラリー労働者の数が増えているわけです。ですからやはり、こういう非典型の労働者と典型的な労働者、両方のために仕事をしなければいけないと考えているわけです。
 その他、労働運動が存続を期すためにやらなければいけないことは、若年労働者にアピールしていくことです。労働運動を若い労働者のニーズに沿うような形で発展させていくことです。今日もここで若い人たちがこのように参加しているのは、日本の労働運動の実績だと思います。若い人たちが新しいアイデアを持ってきてくれる、新しいエネルギーをもたらしてくれる。
 ですから皆さんの力で、新しい戦略が機能するようにする。みずからの組織の中で何ができるか、そして、コミュニティーを統合することによって、こういうアイデアを実現していく。そして、これを前に打ち出すことが、労働運動を将来再活性化する非常に大きな力になると考えております。
 やはり包括的でなければいけない。除外的、排除的ではいけないということです。組合運動の役割は、包含的でなければいけない。差別的ではいけないのです。例えば、性差別があってはいけない。あるいは宗教、人種、信条に関しても、差別してはいけないわけです。こういう相違はわきに置くことによって、その他の個人的に考えている信条・信念は差しおいて、労働者の益のために仕事をしなければいけないということです。
 女性はまだ、労働運動の中で代表する数が少ないことがわかっております。労働者の数全体の中から比べると、女性の代表は少ないわけです。やはり、何らかの形でこれを克服しなければいけない。我々の社会、文化の中で、女性がもっと大きな機会、そして能力を得ることによって、労働運動の中で積極的な役割を果たすようにしなければいけない。
 たくさん考える種を申し上げました。個人的な見解も申しましたし、私が代表している組織の見解もお話ししました。ご質問に対しては、後ほどお答えしていきたいと思います。私が申し上げたことを、ぜひ考慮していただきたいと思います。皆さん自身が、この国で、この仕事をするなかで考えていただきたいと思います。

(ランディー・ベリエル)

RWDSUの概要

 私は、協約の締結、組織化、そして中西部を中心に組合員へのサービスをする仕事をしております。また、支部のリーダーや一般組合員、会社の幹部と日々会っております。私どもの組織人員は10万人でありまして、カナダ、アメリカを網羅しております。支部は130で、米加合同の委員会、協議会を設けております。本部はニューヨークにあります。職業は幅広くカバーしておりまして、主に小売、食品加工、サービス、医療が中心となっております。RWDSUが抱える重要な課題は、組合員の利益の増進を図ることです。そして、組織化であります。
 アメリカの労使関係は多くの場合、対立的であります。労使協力ができる可能性もあり、また共通の利益も認識しているんですけども、ほとんどの場合は対立しております。ですから、RWDSUとしては、私どもの役目は、勤労者の代表者であって、組合の利益を守るために経営者と対抗することだと考えております。そして、組合員の賃金、労働条件改善をかち取り、生活の向上を図ることが、私どもの活動の中心であります。私どもは1つの運動、すなわち正義と公正を求める運動の一環だと考えております。また、人間らしさ、尊厳、尊重というものに果敢に取り組む運動の1つであります。経済的、社会的正義の推進を図るのですけれども、そのためには団結以外の方法はありません。
 労働組合の課題をリストアップしていったわけですけれども、私の組合が抱える最近の問題について説明します。

工場閉鎖の影響-ネスレの事例

 450人の労働者がニューヨークの田舎の工場で働いていました。フルトンニューヨークは、100年以上にわたりましてネスレの中核的なチョコレート工場でした。そこでは賃金でマイホームを買うことができたし、子供を大学に送り、また退職後の生活設計も可能だったんですけども、2003年の終わりには、ネスレの労働者、その家族、そして町全体が大混乱になりました。ネスレUSAがフルトンの工場閉鎖を発表したのです。
 フルトン工場の労働者が失業したのは勤勉でなかったからではありません。欠勤率は非常に低い。また、安全記録も最高でありますし、効率性も非常に高かった。しかし、もう一つの要素がありました。平均年齢が52歳だったのです。多くは退職年齢に近く、年金受給年齢も近かった。そして、年金は私どもがつい最近かち取ったものでありました。フルトン工場を閉鎖すれば、企業にとっては年金拠出負担が少なくなる、何百万か削減されるということでした。非常に良い労働協約があり、高い賃金、福利厚生も手厚い、また失業保険にもカバーされておりました。会社は、もっと安い労働者を使ったほうが、利益が上がることを認識したわけであります。したがって、会社の欲によって労働者は職を失ったわけであります。
 ネスレは世界最大の食品会社でありまして、フルトン工場閉鎖のちょうど1年前、年間の売り上げは470億ドルありました。2000年だけで、ネスレの株価は20%上昇しております。株式市場が不確実性の高いところであるにもかかわらず、ネスレの株はかたい投資だとされました。企業の存続がかかっていた問題ではありません。フルトン工場は不採算ではなかったのです。業績もいい、収益も多い。だけど、それでは飽き足らなかった。もっと欲しい、しかも早く手に入れたかったのです。
 よくある話です。売り上げを新しい製品によって伸ばすのではなくて、卑劣なやり方を選びました。技能労働者にかわって機械を入れて、一部の工場は閉鎖されました。全く撤退したところもありました。そして2000年には、ネスレでは38の工場が閉鎖されました。撤退するところもありましたけれども、猛スピードで他の業界にも参入しておりました。2000年に工場閉鎖を発表してから、その翌年、ネスレは110億ドルでラルストン・ピュリナというペットフードの会社を2001年1月に買収しております。なぜかといいますと、これは利益が高いからであります。人間が食べる食品の売り上げの伸びは経済と同じぐらいしか伸びませんけども、ペットフードはその2倍で伸びておりました。
 ネスレが考えなかったことが1つありました。それは、その決定が労働者、家族、そして地域社会に与える影響です。工場が閉鎖されれば、労働者は賃金と福利厚生を失うわけです。そして、病院は保険に未加入の患者が増えますし、また税収も減ります。ほかにもコストがあります。住宅がなくなる、家庭内暴力も増え、家族の分裂といったものが挙げられます。
 企業は工場を閉鎖しました。企業の広報担当は、これは避けられなかった、どうしてもしようがなかったんだ、市場がそういうふうなゆえにそうなったんだという説明をいたします。ほんとうの場合もありますけども、ネスレの場合、フルトン工場の閉鎖は、単なる飽くなき利益の追求にありました。
 特定の産業はグローバル化のプレッシャーに対して免疫があると考えていた時代もありました。アメリカの製造工場が閉鎖され、海外に拠点が移ったとき、それでも産業、例えば食品加工はそんなことないんだと考えておりましたけれども、そうではありませんでした。RWDSUの組織化する産業すべてに言えることでありました。コスト削減、そして競争力をつけて利益を上げるために、海外に生産拠点、会社を移しました。収益しか考えていないのです。アメリカの経営者の多くは、大規模な多国籍企業でありまして、地方、そして社会や従業員のことは考えておりません。協約改定の交渉は難しく、また工場閉鎖もよくあります。経営者、企業がもっと小さく、地元に根ざしている時代もありました。そして、労働者、またコミュニティーにも関心を持っておりました。しかし、グローバル化がそれをすべて変えてしまいました。
 多くの経営者は、資源をたくさん持っております。会社の一部を犠牲にし、そしてほかの背筋が凍るようなメッセージを送ることができます。これを承諾しなければ退職ですよ、首だというようなメッセージを送ることができます。この闘いをもっと広く、地域、社会のプレッシャーができるまで拡大しなければなりません。
 組合は、会社のイメージにダメージを与えるというようなやり方もしなければなりません。整理・統合がどんどんグローバル化によって進んでおります。世界中の労働者が同じような問題を抱えております。

移民労働者をめぐる課題

 もう一つの課題は、移民労働者を守るという課題であります。アメリカは移民の国と言われてまいりました。そして、ほとんどのアメリカ人は、原住民は別としまして、諸外国から自主的、あるいは自主的ではなく奴隷という形で入ってきたわけであります。歴史を通して、移民がアメリカをつくってきたわけであります。また、文化もつくってきたわけであります。アメリカの労働力の約15%が、外国生まれであります。そして、多くはサービス産業に従事しています。そして、移民の労働条件は低く、最もきつい危険な低賃金の労働についております。アメリカの移民労働者は、災害、疾病、また致死率、労災が多いのです。というのは、危険できつい仕事をやっているからです。どういう権利があるのか、どういう法律で守られているかも知らない。安全衛生の訓練も受けておりません。また、言葉の障害、そして文化の障害があって、自分を守ることができませんし、発言することもできません。会社は、移民労働者は使い捨て、搾取できると考えております。
 移民労働者の致死率が高い、特にヒスパニック、そしてラテン系は非常に多い。92年に初めてこのデータをとるようになったんですけれども、ヒスパニック労働者の死亡は何と65%増えております。92年は508名の死亡が、2002年は840名に増えております。外国生まれのヒスパニック労働者はもっと悪く、2倍が死んでおります。92年では労災で死んだのは275名、そして2002年は577名となっております。さらに、何千という労働者が報復を受けております。安全性の問題、あるいは労災を報告したということで首を切られております。内部告発者、また報告後の規定が十分にありません。ですから、法的権利を実行することもできません。また、不法労働者もいるわけであります。
 多くの産業で、RWDSUが組織化しているところでは、低賃金が見られます。できるだけ多く搾取できる労働者を採用しておりまして、利益を上げています。不法労働者がいる。そして、こういう人たちは低賃金で働いています。会社は、こういう人たちには法的な保護がなく、必死だということを知っています。移民労働者を組織化することは難しい。文化の問題、言語の問題があります。しかし一番大きいのは、恐怖であります。移民労働者は、仕事を失いたくない、また本国に送還されるかもしれないと、組合と口もききたくない。
 現在さらに問題があります。実際に米国政府の支援をもって、移民を使うことができるわけです。実際に、未熟練の外国労働者を一定の期間使ってもいいというのが米国法であります。一、二年、この鳥肉加工工場で仕事ができるわけです。そして、ビザをこの雇用者は持っている。そして、いつでも雇用者の任意で国に帰すことができる。そうしますと、雇用者を幸せにする、気分をよくするために、あらゆる努力を労働者はするわけです。そして、これらの中で組合の力を維持する、そして、非組合の工場にするという点について努力をして、それを阻止するのは非常に難しいわけです。

ウォルマートをめぐる課題

 小売業に関しては、最大の問題はウォルマートです。米国だけで3,000の店舗を持っています。ウォルマートは最大の企業であり、米国において最大の雇用者でもあります。140万の労働者の仕事によって、ウォルマートの昨年の利益は90億米ドル以上でありました。今、ウォルマートの創設者、サム・ウォルトンの資産は1,020億を超えていると推定されております。こういう利益、成功は、労働者のよりよい生活につながっていません。また、彼らの住んでいるコミュニティーの利益にもなっていない。
 ウォルマートの給与は、ほかの企業よりも低い。そして、附帯給付も非常に貧しいわけです。政府の支援がなければ、食、住、あるいは医療というものがカバーできない。納税者は、ウォルマートの低賃金の労働者を間接的に助けているわけです。世界中でこういうやり方、あるいは米国中でこういうやり方が進んでいく。そして、そこで買い物をしたり仕事をすれば、皆さんの賃金もいずれは影響を受けるわけです。ウォルマートは、底辺に対しての競争を、医療とか賃金について行う。これがアメリカの基本的な価値を揺るがす形で、基本的な民主的な権利を抑圧してしまうわけです。低い給与、不適切なヘルスケア、24時間働かせることにより、実際にそこで足りないものは政府の支援に頼るということです。例えばヘルスケアがそうであります。
 また、自然の賃金上昇をウォルマートはとめております。例えば、98年から2002年の間、ウォルマートの株価は20%以上上がりましたけれども、レジ係の賃金は、全国平均の上昇に比べて40%程度低かったわけです。また、ほかの雇用者も同じようにするという圧力をかけているわけです。特に仕入れ先に圧力をかけ、毎年価格を下げるように言う。例えば医療とか玩具、その他食品の仕入れ先は、労働者に圧力をかけて賃金を引き下げています。それが、ほかの国にも伝わっていくわけです。
 ホンジュラスのメーカーによりますと、中国には負けてしまう。たくさんつくっているのに、利益は低くなっていると言います。ウォルマートの拡大によって、ウォルマートのように競争力があるようにしなければいけないということが波及しております。スーパーマーケットその他は、自分のところの給与は高すぎる、ウォルマートに比べるとはるかにいいんだということで、減らそうとするわけです。
 例えば、カリフォルニアにおける最近のストライキは、ウォルマートの影響であります。セーフウェイ、クローガー、アルバートソンズが、過去5年間で91%のシェアを持っていて、南カリフォルニアグローサリー市場の61%をコントロールしてきました。もっと利益を高めたいと言ったわけです。6万の組合員が5カ月ストライキを組みました。それによって、みずからの契約を守ろうとしたわけです。
 なぜストライキが起きたか。これはウォルマートが市場に入ってきたからです。会社によりますと、競争するためにコストを下げなければいけないと。ウォルマートの競争の圧力は、どちらかというと南カリフォルニア市場においてはマイナーなものです。特に、ストライキが起きたときはそうでありました。プレゼンスはなかったわけです。
 それでも、ウォルマートはアメリカを変えている。いわゆる安定した中流社会から非常に極端な、底辺の人たちが苦しみ、富裕層はさらに豊かになるということです。

社会保障をめぐる課題

 社会保障は、政府のプログラムとして、高齢者に対して基本的な年金を提供しておりましたけれども、大統領はこれを変えて、ウォールストリートの投資家のほうにこういうお金を与えてしまったわけです。270万の雇用が失われました。そして貧困レベルが上がり、また世帯の所得が下がりました。平均の労働者、それからCEOの間の賃金ギャップが非常に広がったわけです。80年におきましては、CEOの給与は平均的な労働者の42倍でありました。しかし2001年になりますと、CEOの給与は、平均的なその会社の労働者の411倍になりました。貧富の差が米国では拡大している。貧困者の数が増え、中流階級が減っているわけです。
 我々のヘルスケアも破綻しているのに、政治的な意志がないわけです。米国は、実際にヘルスケアを与えるシステムがなく、個人が払わなければいけない。健康保険は使用者が負担していたわけですけれども、ヘルスケアのコストが上がると、このコストを労働者に転嫁させたいということで、組合は非常に複雑な交渉を迫られます。賃上げ、そして多くの附帯給付をかち取るのはより難しくなっているわけです。
 4,500万のアメリカ人は、ほとんど附帯給付がない状況にあります。みずから医療費を払わなければいけない。このコストは非常に高いわけです。
 医療の問題は非常に複雑になっております。保険のない家族は、実際、食事をとるかあるいはヘルスケアの保護をとるかという選択をしなければいけない。学校の制服を買うか、あるいは健康診断をするかというような選択です。言ってみれば、人生の中で、経済的な保障の欠如が深刻な問題になっているわけです。
 ブッシュ大統領は、どちらかというと富裕層の減税に関心を持っております。それによって保険業界の意見ばかり聞くわけです。というのは、この業界は大統領の非常に大きな財源であります。非常に大きな利益を稼いで政治家に資金を提供する。一方で、政府は先進国の中で最も不均衡なヘルスケアを提供する。これは非常にまずい。
 アメリカの労働運動は、非常に難しい状況にあります。さらに難しくなるかもしれません。しかし、我々は今後、過去の実績をもって、これからの課題に立ち向かえると思います。アメリカの組合の強さは、積極性であります。米国の労働者は組合が必要であり、組合のほうは助けを出そうとしているわけです。我々としては、もっと組織化をしなければいけない。そして、必ず成功すると信じております。