2012年 イエメンの労働事情

2013年1月25日 講演録

イエメン労働組合総連盟(GFWTUY)
ナビール ハーシム アブドゥルカーリム アルシャーミ(Mr. Nabeel Hashem Abdulkarim AL-SHAMI)

イエメン法務省労働組合委員長

 

1.労働情勢(全般)

 イエメンの労働者の状況は、この2年間に起きた変化の中で一段と悪化している。経済は崩壊し、失業者は増加した。その結果、政府は一部の組織を利用して労働組合を弱体化させ、政治的な対立に巻き込もうとしている。また、多くの工場や企業が倒産して、労働者は賃金が未払いのまま大量に解雇されるという事態も起きている。経営者は、国家機構の空白に乗じて、労働者の権利を侵害しており、労働組合もこうした状況の影響を受けている。物価は上昇し、労働者の購買力は低下している。電気や水などのサービスも受けられないという状況に置かれている労働者に対し、イエメン労働組合総連盟(GFWTUY)は、労働者の必要とする生活費の一部を負担するなどの対策を講じている。こうした危機的状況の中で、プラスの側面があるとすれば、以前は労働組合の結成が禁止されていた官公庁などの部門にも労働組合が結成されるという動きが出ていることである。

2.労働組合が現在直面している課題

 労働組合が現在直面している課題は多い。第一に、労働者の購買力の低下が挙げられる。また、賃金にかかわる法律も適用されていないという問題もある。第二としては、不当な解雇や集団的な解雇が、給料も未払いで何の補償もされないことである。第三には、健康保険に関する法律の制定にあたって、政府が独断専行して行なった結果、国民の要望を満たしていない内容になっていることである。第四には、労働関係の法律の制定にあたって、労働組合が参加できない現状があること。第五には、行政機構の改革において、国益にかなうものになっていないこと。第六は、組合費を給料から天引きすることができず、そのために労働組合の活動が十分に展開できないことである。第七として、激変するイエメン社会の中で、国民対話やさまざまな対話会議は設置されているものの、その場に労働組合の代表が参加していないため、対話の結果にもマイナスの影響が出てくる可能性があることである。

3.その課題解決に向け、どのように取り組もうとしているのか

 こうした課題の解決に向けてGFWTUYは、政府に働きかけを行なっていかなければならない。諸政党や諸組織との協議に積極的に参加し、労働者の生活向上のため、労働組合の役割を強化する必要がある。また、各方面に働きかけ、労働者を不当労働行為から保護するための法律を制定する必要がある。さらに、労働者が真面目に働くことで、投資を呼び込むような労働環境を整えていかなければならないことを、労働組合や組合員に理解させるために、啓発活動を行なう必要もある。そして、民主主義や改革の重要性について広報していくことも必要である。

4.ナショナルセンターと政府との関係

 最低賃金の引き上げあるいは賃金に関する戦略の実施を巡って、GFWTUYは政府と対立した。2010年にGFWTUYがゼネラルストライキを宣言した際、政府はこれを受けて、GFWTUYを賃金高等委員会、最高委員会に参加させるとともに、要求の一部を受け入れた。
 最近の動きとしては、政府と対等の立場に立つ労働組合に対し、政府は労働組合あるいはGFWTUYを審議会や委員会等のメンバーから排除するといった試みを行なった。しかし、その後も労働者は労働組合の重要性を認識するようになり、多くの政府関連機関の中で労働組合の存在は拡大している。

5.多国籍企業の進出状況について、また、多国籍企業における労使紛争について

 多くの多国籍企業がイエメンに進出している中では、労働者を守るべく、これらの権利の侵害と闘っている。

6.民主化運動の情勢について

 中東・アフリカ北部地域の国々には、真の民主主義が欠如しており、さまざまな面で不安定な要素を含んでいる。各国の指導者は、それを理由に独裁体制を敷き、自分たちの影響力や国家財産などを、自らの地位を延命させるあるいは世襲させるためだけに利用し、国民の願いを顧みることはなかった。民主化運動は、中東・アフリカ北部地域の国々に伝播している。その際に大きな役割を果たしたのが、さまざまな媒体や通信手段、インターネットであった。

7.民主化運動の課題について

 民主化の課題としては、旧体制の残存勢力による反革命といった動きがある。それを防ぐため、軍事行政の機構・組織を、国民の要請に沿う形で改革していかなければならない。また治安情勢が悪化する中で、国内では不法、非合法な通商行為が広がっている。さらに、民主化が起きている国の多くでは、部族主義の文化や武器が蔓延するという現実もあり、これによって観光業が振るわず、国家の収入にも影響する事態が起きている。
 こうした状況にあるイエメンで、GFWTUYがなすべきことは、革命や民主化運動の成果を守ること、そして労働者にかかわる法律の制定に参画をしていくことである。それに加え、政府あるいは部族の有力者などに武力の放棄を訴えていくこと、また労働者の権利・尊厳を守るような法律の制定を政府に働きかけていくことである。そして、われわれGFWTUYは、パレスチナにエルサレムを首都とする国家の建設をすることを訴えかけていく。