2012年 イエメンの労働事情

2012年2月10日 講演録

イエメン労働組合総連盟(GFWTUY)
Mr. サーミー・ヤヒヤ・シュベイル

 

1.労働情勢(全般)

 イエメンの国民所得については正確な数字はない。実際の国民の収入の75%は武器の密輸、麻薬などの収入で公式の統計には出てこないからである。失業率は50%に上り、これが社会の安定を損なっている。
 現在、アルカイダ等のテロ組織が国内の面積の半分以上を支配しており、労働者の移動などにも非常に支障を来す状況になっている。
 労働法制の中には、十分に機能せず、条項の大部分が実施できないものが存在している。イエメンは「労働における基本的原則及び権利に関する宣言(ILO)」など30以上の国際条約を批准している。
 2006年には社会保障法が制定され、公共部門の労働者については、健康保険を除き89%以上が社会保障制度に加入している。民間部門では、その社会保障制度の恩恵を受ける労働者は5.5%に過ぎない。石油・ガス部門を除き、民間部門の企業においては労働組合が存在しない。イエメン経済は主に石油・ガス部門の収入、そして漁業や農業の収入に依存している。

2.労働組合が直面する課題

 イエメンではアラブ地域の他の諸国と同様、世界的な経済危機と同時に「アラブの春」の風が吹きわたっている。この2つの出来事が国内の経済状況の悪化と失業率の上昇に影響を及ぼしており、労働組合活動にもマイナスの影響を与えている。賃金、保険や社会保障など人道的・社会的広がりを持つ問題に関して、政府はその役割を果たしておらず、労働運動も交渉能力を発揮できていない。
 11月以降、イエメン国内においては非常に大きな変化が起きた。政治的変動の中で、さまざまな企業において、労働者の権利に関して平和的な変革を求める労働者たちが立ち上がる動きがあった。一部の労働者たちは、既存の労働組合の指導部に対して、体制、権力のもう一つの顔だとして反旗を翻した。そして、GFWTUY指導部の活動が組合員によって停止され、新たな指導部を選出するという動きが出てきた。
 現在の政治的な大変化のもとで、10日後の2012年2月21日には大統領選挙が行われる。また2月25日には、GFWTUY大会が開催され、新指導部が選出される。

3.課題解決に向けた取り組み

 国家構造の平和的な変革や汚職対策、経済回復の環境醸成、雇用機会の創出による失業の撲滅、労働環境および労働条件の改善といった要請に適応すべく、労働組合組織の再編に取り組んでいる。
 GFWTUYには政治的には様々な労働者が所属しているが、現在の政治的・経済的状況の中で労働者や労働の自由、労働の成果、組合員に不利益が及ぶことのないよう、組合活動においては団結と一体性を維持してきた。
 GFWTUYは健康保険に関する法律の制定に関与した。2010年にはストライキを経て、給与に関する法律の制定が実現された。

4.ナショナルセンターと政府との関係

 双方の関係は現行のイエメン国内法によって規定されている。政労使のパートナーシップの枠内において、国家開発に資する対話を旨とする関係であり、GFWTUYは賃金、失業、保険、社会保障、人材開発、職業訓練など労働及び労働者の問題に取り組む各種の専門委員会や、労働争議を解決する仲裁委員会などに参加する。また、労働組合はイエメン国内法や国際協定及びアラブ地域協定に基づいてストライキを行う権利を行使する。

5.多国籍企業の状況

 イエメンでは漁業、石油およびガスをはじめとする様々な経済分野において多国籍企業が活動している。現在の政治的危機は治安と経済に悪影響をもたらし、多国籍企業の活動が停止あるいは停滞し、社員の大半が帰国するといった事態を招いている。しかしイエメンの労働投資関連法は柔軟なものであり、労働者の基本的権利に適応するものである。賃金や労働環境の改善を求める労働者のストライキも度々行われ、要求が実現されることもしばしばある。とりわけ石油及びガス部門においては、そういう成果が上がっている。