2016年 トルコの労働事情

2016年7月1日 講演録

【トルコ労働組合連盟(TURK-IS)】

ヌライ スレ(Ms. Nuray Sul)

(トルコ金属労働組合連盟調査研修専門家兼青年委員会委員)

レミー デメト グンドゥズ(Ms. Resmiye Demet Gunduz)

(トルコ金属労働組合連盟調査研修専門家)

 

1. 労働情勢

(1) 経済・労働をめぐる状況
 トルコの人口は、7,874万人強で、全体の74%を15歳以上で占め、うち89%が雇用されている。従って、11%が失業状態にあるといえる。
 実質GDPは、2014年が3.0%、2015年が4.0%で、2016年の予測は4.0%となっている。
 インフレ率(物価上昇率)は、2014年8.85%、2015年7.67%、2016年の予測は6.5%となっている。
 法定労働時間は、「週45時間、一日11時間を超えてはならない」となっている。なお、鉱山労働者等地下坑道で働く労働者の場合は、「週37.5時間、一日7.5時間まで」となっている。
 最低賃金については、2016年までは年に2回示されていたが、2016年はその金額が月額手取りで1,000 トルコリラから1,300トルコリラへと一気に300トルコリラの大幅な引き上げとなった(参考:1トルコリラは現在の為替レートで0.35ドル換算、同じく1トルコリラは35.71円換算である)。なお、2016年度は改定の予定はない。

(2) 労働組合の概況
 トルコの労働者数は1,274万5千人、うち労働組合員数は計142万9千人、労働組合の組織率は11.2%である。
 トルコでは、産業別に労働組合が組織化されるということになっている。労働者数が多い産業は「商業、事務所、教育および芸術」部門であるが、労働組合の最も組織化されている(組合員数の多い)産業は「金属」、組織率の高い産業は「銀行、金融・保険業」である。
 トルコ労働組合連盟(TURK-IS)は1952年に設立されたナショナルセンターであるが、トルコのナショナルセンターの中では最も組合員数が多く、現在84万2千人の組合員を有している。

2. 労働組合の当面する重要課題

(1) 臨時雇用契約に関する法改正
 臨時雇用契約は2003年に法制化されていた。これは、企業内において又は同じ企業集団(ホールデングス)に属する他の職場において締結が可能なものであった。これが、2016年5月に法改正が行われ、特別雇用事務所という機関が新たに開設可能となり、この特別雇用事務所の仲介による一定期間の臨時雇用斡旋が広く行われることが可能となったのである。その働き方は、社会保障もなく、一定期間が終了したら、また失業状態となる不安定な働き方であり、私たちは法制化に反対する署名運動等を行ったが、政府に受け入れてもらえなかった。

(2) 下請け雇用の問題
 下請け雇用は、最近では民間セクターだけでなく、公的セクターにおいても実施されている。例えば、国立病院における清掃業は下請け業者に委託され、入札を介して雇用されることになる。1年間等特定の期間に限って入札を受けた下請け雇用者が労働組合加入や団体労働契約を締結することは不可能であり、賃金の引き上げや労働協約の締結が出来なくなるという問題がある。
 私たちの取り組みの中で、この下請け雇用の問題に関し、ある一定の権利について獲得することができ、また、公的セクターで下請けとして働いていた人たちの一部を公的機関の正規職員として雇用させることにも成功した。

(3) 退職金積立金の縮小化
 退職積立金とは、労働者が勤務した年の終わり毎に権利を獲得し、雇用者が積み立てておく賃金の一部である。労働者にとって13カ月目の賃金とも言われている。労働者が職を離れた場合には、雇用者はこの退職積立金を労働者に支払うというものである。
 最近、政府及び雇用者側よりこの退職積立金を縮小化する要請がなされている。
 我々は退職積立金縮小の法制化には強く反対している。

 以上、これらの課題への取り組みにあたって一番の問題は、関係する法律の成立にあたって、政府が労働者側の意見を聞き入れていないことにあると認識している。社会的対話のメカニズムが労働に関することに関しては利用されていないことが最大の問題である。