2004年 トルコの労働事情

2004年11月10日 講演録

トルコ労働組合連盟(TURK-IS)
オスマン シメン

防衛産業労働組合 委員長

エユップ アレムダール
生協・事務職一般労働組合 委員長

 

国内の状況

 トルコは近年、第2次大戦後初めてと言っていいほどの大きな変動期を迎えています。まず1999年及び2001年に起きました政治と経済の変動、特に経済的な大不況によって、トルコ経済は10%の縮小という大きな経済恐慌を体験しました。これは第2次世界大戦後、最も大きな経済的な落ち込みです。それにともなって失業及び貧困の問題が深刻化しました。
 政治的な面では2003年に行われた総選挙により、連立政権から一党政治に変わりました。この政党の政策が成功し、経済復興の道筋がつき、今年度はほぼ10%の経済成長が見込めるようになりました。喜ぶべき傾向ではあるのですが、しかしながら依然として失業率は高く、政府の公式な数字では10%、実質的には15%から20%が失業状態です。またトルコでは伝統的にインフレ率が非常に高かったのですが、今年になってインフレ率が9%に低下しました。
 次に国家予算についてですが、先日、来年度の国家予算が発表されました。ここにおきまして非常に驚くべき、歓迎すべき数字が示されました。トルコでは初めて教育費に充てられる予算が、防衛に充てられる予算を上回ることになったのです。教育の予算は8.29%、保健衛生の予算が3.05%、財政投資の予算が2.01%となりました。
 労働の分野においては2003年に労働法第452条が改正され、それによりトルコも今後パートタイム労働その他の柔軟な労働形態が支配的になっていくものと思われます。
 次に各種社会保障制度に関して述べます。失業保険はあるにはありますが、決して十分ではありません。失業給付をもらえる労働者の数も限られています。事故、労災に関する保障はありません。健康保険、退職金、年金に関する保障はありますが、教育に関してはありません。これらの不十分な部分を充実させるためにTURK-ISはこれから活動を続けることになると思います。
 トルコは最近になって新たな問題を抱えることになりました。東西冷戦終結後、旧ソビエトの影響下にあったルーマニアやブルガリアなどの国々から多くの人口の流入してきました。その数はほぼ100万に達すると見られており、ヨーロッパ側のトラキア地域にそれらの人々が定着しています。それらの人々は何の保障もなく安い賃金で労働しているような状況です。TURK-ISとしましては、それらの労働者たちを保護しなければいけないという問題意識を持っています。TURK-ISは、ブルガリア、リトアニア、ルーマニアといった国々の労働組合連盟と関係が深く、合同で会合を開催することがあります。

TURK-ISの活動

 TURK-ISを構成しているのは35の産業別組織で、そのうちの2つは北キプロスに属しています。組合員総数はほぼ100万人です。92の組合が我が国には存在しますが、労働組合組織率は10%に留まっています。
 TURK-ISは現在2つの大きな問題を抱えております。一つは労働法を改正し、社会保障関係労働組合が労働者の病院を経営できるようにすることです。これが実現しますと、トルコの国民と労働者は健康管理維持に関して大きなメリットを得ることができます。2つ目の問題は、EUと関連する事項です。政府はトルコのEU加盟を促進するために、労働者に対して地方での労働を強制しようとしています。トルコでは労働者の都市集中の傾向が強く、政府はこれを緩和して地方の発展を図るために労働者の地方での労働を強制する法律の制定を目論んでいます。これは決して悪いことではないのですが、TURKISはその直後に民営化の問題が起こるだろうと考え、反対の立場をとっております。
 退職金に関して少々問題が起きています。トルコにはクデミタゼミナート制というものがあり、退職する前に労働者は、1カ月分の給料×働いた年数に相当する一時金をもらうことができます。しかしながらここ数年、とりわけ2003年には数多くの企業が倒産したことにより、退職金が労働者に十分に支払われないという問題が起こりました。労働組合は、支払われなかった分ができるだけ支払われるように求める活動を展開しています。

防衛産業労働組合の活動

 最後に簡単に私が所属している防衛産業労働組合について触れます。私は防衛産業労働組合で委員長を務めています。430カ所の職場が労働組合に属しており、小さいものは10名、大規模なものは5,000人の労働者を抱えています。地方支部は20支部、専従者は50人、大会で選出される代議員は500人にのぼります。
 1999年にトルコのヤロワ地方で大地震が発生しました。防衛産業労働組合にはその地域に拠点を置く事業所も加盟しており、そこには約600名が所属しています。こういった被災地域の復興にも労働組合として尽力しています。
 同盟の本部は首都アンカラにあり、7人が常時詰めています。朝9時から10時の間には必ずその年の団体交渉の策を練るというような時間を設け、新聞を丹念に読んで情報を収集しています。我々の事務所は8部局からなっていますが、ほかの組合と著しく違っているのは、研究部門を設けていることだと思います。